96・仲間の存在
「ルルスちゃん、前の世界で私に言ったよね。簡単になんか変われないって。当然だよ?私だって簡単じゃなかった。目に見えるほどみんなとは違っていく恐怖・・・・・・化け物並に発達した危機察知能力の速さ、それに後ろの目と暗やみの目、なんで私ばっかりって思ったよ。どうしてこんな能力がいきなりつくようになったんだろうって思ったよ。仲間さえ私のこと心のどこかで化け物だと思ってるんじゃないか、邪魔だと思ってるんじゃないかって誰も信じられなかったよ。」
「でも・・・・・・」
現にあなたは変わったじゃないですか。
そういいかけてメイアに阻まれた。
「そう、変わったよ。」
ルルスが驚いていると今度はルルスの頭にメイアの考えが流れ込んできた。
〔でも、変わることってそう簡単にできることじゃないんだよ。〕
え?
「驚いちゃうよね。もう私たち、言葉なんていらないんだよ。でもね?私たちは人間なんだよ。だから言葉が必要で仲間が必要で私も仲間がいたから変われた。そして歩いてこれた。これって独りじゃ無理だと思わない?」
「思いますけど・・・・・・。」
「今私たちが向かおうとしてる未来は怖いよね。」
「はい・・・・・・。」
「でもその未来ってわたしたち二人しかいないでしょ?だからね、私思ったんだ。変えられるなら、この手を離さずにいようって。私達が望む、平和な世界になるなら四人でみんなと一緒にいようって。たとえ、一緒にいることで傷つけることになるかもしれなくても、私達を必要としてくれる人がいるから。ね?ミョンハク君。」
「え?」
ルルスが驚き、扉を開けたミョンハクもまた驚いていた。
「なん・・・・・・で?」
「えへ。何ででしょう?」
メイアは笑った。
ミョンハクはあまりにも遅いメイアとルルスを呼びにきたのだ。
「いつからそこにいましたか!?」
慌てるルルスをよそにメイアが簡単に答えた。
「私達が向かおうとしてる未来は怖いよね。からだよ。」
「おい!何で分かったんだよ!その・・・・・・俺がそこにいたこと。」
「秘密!朝ご飯食べにいこ!ね?」
ルルスの手を握り、メイアがにこりと笑った。
ミョンハクの質問には答えなかった。
些細な音で気づいてしまうこと、そんな自分は他人とは異なってることに、ちゃんと気づいていたから・・・・・・。
「そう・・・・・・ですね。」
ルルスも微かに笑うと朝食を済ませ、また次の世界に旅立つことが決まった。
「待ってくれ!」
「カルナさん?まだゆっくりしてても・・・・・・。」
「違うんだ、夢で次の行き先を伝えてほしいって、次は・・・・・・タイターナだって。急いでるんだって言ってたんだ!だから・・・・・・どうか救ってくれ・・・・・・あたしと同じ容姿のやつを・・・・・・これ、気休めにしかならないだろうけど・・・・・・お守りだ・・・・・・持っていってくれ。この国では旅先でもお守りを持つ人達を守り、良いことが訪れますようにって。」
そのお守りは小さい一枚の羽のような形をしていて、薄い水色のガラスのようなのに丈夫で透明で光にかざすとどこに光が屈折するのかわからないのにダイヤモンドのようにキラキラと光っていた。
「キレイ・・・・・・本当にいいの?私たちなんかに渡しちゃっても。」
メイアがポーっとして聞いた。
「ああ。」
「ありがとうございます。きっとこのお守りが私達を導いてくれるでしょうね。」
ルルスがカルナに向かってにこりと笑った。
「だといいけど・・・・・・もう、いっちゃうんだろ?」
「はい、お世話になりました。」
ルルスが答えるとカルナは寂しそうに笑った。
そして四人は次の世界に飛んだ。
いた人達が一瞬にして消えたガランとした部屋で一人、ただ立っていた。
「嵐が・・・・・・去っていったかのようだな。」
すると店のなかに数人が駆け込んできた。
「カルナ!お前が連れてた客は!?あいつらなら行方不明者のことわかるんじゃないか!?」
「もういないよ。」
カルナは振り返らずに答えた。
「え?」
「やつらは行方不明者のことを知らなかったし、もう、旅立っちまったのさ・・・・・・。」
カルナはそう行って店と部屋とをつなぐ廊下の天井を眺めた。