90・意地悪
「何これ!?」
メイアは思わず声を上げた。
何故なら廊下のような薄暗い空間からいきなり木や草が生い茂るジャンルのような空間になっていたからだ。
メイアが慎重に一歩を踏み出す。
「気を付けろよ?ここも何があるかわからねえ。」
そういってミョンハクはメイアより前に出た。
「わ、わかってますう!私だって学習するんだから!」
「俺より前に行くなよ?」
そういってミョンハクはニッと笑った。
メイアはミョンハクに調子を狂わされ、困ったような怒ったような表情になりながら顔を真っ赤にして叫ぶように言った。
「今日のミョンハク君、いつもと違うね!いつもより・・・・・・なんか・・・・・・意地悪!」
その言葉をミョンハクは悲しく受けとめていた。
意地悪でいい。
自分の居場所が消えるくらいなら・・・・・・嫌われてるほうがマシだ。と。
しばらく歩いたが何も起こらない。
「なんも起こらないねえ。」
メイアが辺りを見渡しながら誰に言うでもなくつぶやいた。
「だからって油断するなよ。」
ミョンハクは相変わらずメイアの少し前を歩いていた。
「・・・・・・戻ってきています。」
ルルスが静かに言葉を発した。
「はあ?何でまた。」
ミョンハクが情けない声を出すと共にセタの片腕があがり、木を指差した。
「確かにな。あの木、見覚えがある。」
「道は切り開け・・・・・・と言うことでしょうか?」
ルルスは軽く握った手をあごに着けて首をすこし捻り、何かを呟き、手のひらに光を宿した。
その光は光の速さのように一瞬で飛び、木々に向かっていった。
木はメキメキっという音をたて、大きな傷跡を残したはずが、傷跡はすぐさま修復され、傷痕の痕跡さえも残さなかった。
「・・・・・・これは厄介ですね。先を見ようにも見れないし、この先は未知数です。何が起こるかわかりませんわ。」
「ルルス、お前・・・・・・今何した?」
ミョンハクが唖然としながらルルスに聞いた。
「風は自然と相性がいいのであまり刺激しないように風魔法を使って植物たちを切り裂いてみました。」
何か?とでも言いたげにルルスは首を再びかしげた。
「ふーん?まあいい、なら植物と相性の悪い炎でいくとするか。」
ミョンハクが袖を捲り上げた。
「でも植物は内に水を秘めています。炎ではあまりにも時間がかかってしまいますよ?」
「時間がかかるから下手に動かずに済むし、向こうも焼かれたら再生しずらいだろ?めんどくせえけど地道に頑張るしかねえよな。」
「うえ~。」
メイアがぐったりとし、仕方ないなという感じに方をすくめると植物に触れない程度に手を近付けた。
メイアも何かをつぶやくと植物は一瞬にして焦げた。
「え?」
その魔法を使った張本人であるメイア含め、四人が唖然と一瞬にして消えた植物を眺めた。
「何したんだよお前。」
ミョンハクがメイアをただただ見つめながらやっとの思いで疑問を口にした。
「わかん・・・・・・ない。」
メイアは自分の手を眺めていた。
「ただ・・・・・・光でも炎と同じ役割をはたすって・・・・・・それで私・・・・・・試してみようとしたら・・・・・・植物が・・・・・・一瞬にして・・・・・・。」
「わかった。メイア、もういい。邪魔なものは排除されたんだから。さあ、前に進もう。」
セタがしどろもどろに言葉を紡ぐメイアを落ち着けた。
「邪魔な・・・・・・もの。」
「そう。」
「排除・・・・・・されるべき?」
メイアの頭に再び恐怖が巡る。
得体の知れない恐怖が。
それを感じ取ったのかルルスはしゃがみこんで耳を塞いでいた。
「やめて・・・・・・メイアちゃん、もうやめてください!」
ルルスの体は震えていた。
二人の異常に気付いたセタは真っ先にメイアに駆け寄り、メイアをゆすった。
ミョンハクはルルスに手を差し伸べながらメイアの方をチラリと盗み見た。
「メイア!メイア!?」
はっとしたメイアはすこしきょとんとしてから辺りを見渡した。
「あ、あれ?私・・・・・・ごめんね。じゃあ行こうか?」
一歩メイアが踏み出すと周りはまたジャンルだがさっきより危険な香を漂わせていた。
「嫌な・・・・・・感じがする。」
「嫌な感じがします・・・・・・。」
メイアとルルスはまたしても同じタイミングで同じことを言った。
そんな中、メイアの肩が植物に振れ、メイアが振り替えると思わず声をあげ、しゃがみこんでしまった。
「ギャッ!」
「どうした!」
ミョンハクがすぐに駆け寄るが、メイアの近くにあったものを見るなり言葉を失い、立ち尽くしてしまった。
それはあとから来た二人も同じだった。
「なんなんだよ・・・・・・これ。」
作「コーナー“記憶”です!今回のゲストさんはミョンハク君です。」
ミ「何で俺だけ?」
作「まぁまぁいいじゃないですか。それでね、記憶がついに!90話いったんです!」
ミ「そうだな。」
作「……ねぇ、つらくないんですか?」
ミ「何が?」
作「メイアの反応。」
ミ「……なれた。いいんじゃね?あいつがアイツで俺の存在を忘れずにいてくれるなら。」
作「ミョンハク……あなた、変わったね。作者的にはこうなるはずじゃなかったんだけどな。全員。」
ミ「はぁ?」
作「やっぱり“セタ”は鍵だね。セタを構成させていくうちに少しずつみんなが成長してて、性格が少しずつ変わっていってて、ストーリーの方向は変わらないんだけど……きっと少しずつ作者の頭にあったものと変わっていくんだろうな……。」
ミ「何がいいてぇんだよ……?」
作「怒っちゃやーん。」
ミ「きもい。俺は帰る。」
作「あ、ちょ、ちょっと!!」
……情けない終わり方でしたが、ここまで読んでくださった皆様、記憶に興味を示してくださった皆様、ありがとうございました。