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記憶  作者: 半月
82/120

82・球体

その球体は丸いのに心臓のようで、球体からは淡いピンク紫のような光が発されている。

「なにこれ・・・・・・。」

すると、ルルスの体がビクリと動いたと思うと、ゆらりと体が揺れ、ルルスはメイア達の前に立った。

「これは・・・・・・この星すべての生命体の心臓。この心臓があるからこそ実態があっても長年動物や植物たちは生きることができた。その心臓をとろうというのか!?立ち去れ!立ち去るがよい!今すぐ消えろ!」

声、姿はルルスだが、言動はルルスではなく、何かに憑依されているとしか考えられなかった。

だが、ルルスの今すぐ消えろ!という一言にそこにあった“心臓”は黄色く強い光を発し、みな顔を覆ったが・・・・・・気付けば壁のような場所に跳ねとばされていた。

四方に飛び散った四人。

跳ねとばされた時に、ルルスは意識を失った。

「たぁ・・・・・・ルルスちゃん・・・・・・ルルスちゃん?」

あわてて反応がないルルスにメイアが駆け寄った。

呼吸をしていたため、メイアは安心した。

「こいつを攻撃すればいいのか?」

ミョンハクが後頭部を擦りながら起き上がった。

「・・・・・・っう。」

セタは背中を強く打ったらしかった。

「攻撃するしかなさそうだね。」

メイアがルルスを壁に寄り掛からせながら球体をにらんだ。

三人は構えた。

球体は動かないために三人の攻撃をもろにうけた。

そこには人一人入れそうな穴が開く。

メイアが穴に入っていくが、他は誰一人入れない。

どれだけ攻撃しても穴どころか傷一つつかなかった。

「メイア!」

外からの声も、中からの声も、どちらもお互いの耳には届かない。

「穴が!どうして私だけいれたの?」

[人聞きの悪い・・・・・・はいってきたのはそちらでしょう。]

「出せばいいじゃない!それにあなた・・・・・・守護神達と同じ声をしている。」

そう・・・・・・男でも女でもなければどちらでもあり、子供ではなく、しっかりしているのに高く、低い声。

メイアは一呼吸おいて言葉を続けた。

「あなたが守護神達に知恵を与えたという精霊なのね?」

[いかにも。]

「この世界はあなたが中心に成り立っているんだよね?」

[いかにも。]

「ならあなたは実態があるはず。なぜなら・・・・・・私達のカードだからだよ!」

[カードだかなんだか知らないけれど、ここには確かに命がある。そのすべての命をあなたなら持っていけるというの?]

「それが致し方ない犠牲なら・・・・・・ね。こうみえても私・・・・・・私達は何度か世界を壊しているから。」

メイアは構えた。

でも、外に出る方法がない。

相手に実態がないため、戦えない。

とりあえず、空気が今までと変わったということだけわかった。

「あなた、実態なしでどう戦うつもりなの?へたにここで暴れれば、この球体が壊れてしまうでしょ。」

メイアは手探りで壁を見つけた。

ここなら切れるかもしれないと思い、剣をさしてみるが、逆に剣が少しかけてしまった。

そして、その間に何か風のようなものでメイアの肌は少し切れた。

「ウソッ!なんとか逃げ切れたと思ったのに。」

ギリギリでメイアは直撃を逃れていた。

[ここは外からも中からも傷つきはしない。]

「どうしても・・・・・・姿を現さないのなら・・・・・・いい。こっちにも考えがある。あなたが実態のない光なら・・・・・・こっちも実態のない闇を使うだけ!」

一面に闇が広がる。

光は闇と出会うと物体に変わる。

例え何もなかったとしても靄にくらいなるだろう。

すると、光ははっきり姿を現した。

それは人間の格好や動物の格好、いろんな格好をし、ついには靄で納まった。

「光を囲え!」

影は光を囲い、どんどん縮んでいく。

あっけなく光は闇に囚われ、そして消えた。

その光景にぞくりと背筋に寒気が走る。

微かな光じゃ・・・・・・闇に対抗できないのかもしれない・・・・・・。

自分のことと重なったのだ。

新しい未来を望む可能性にかけているメイア。

誰かがもしかしたら自分達はこんなに弱いものなんだと私に教えたのかもしれない。

じゃなかったらあっけなくこんな簡単におわっただろうか・・・・・・?

闇魔法は使うたびに魔力が増しているのか、どんどん強力になっていく。

しかもそれは自分でも制御ができない。

闇魔法はあまり使わないようにしようとメイアは今を持って心に決めた。

ルルスはいきなり目を見開いて震えはじめた。

「ぃゃ・・・・・・怖・・・・・・い。勝てない・・・・・・私達が立ち向かおうとするものには・・・・・・勝てない。」

ルルスは再び目を閉じ、倒れた。

光を失った球体は一撃でいとも簡単に消え去り、球体の中から七枚のカードをもったメイアが出てきた。

うち、四枚はメイアのカードであり、三枚はミョンハクのカードだった。

メイアは目眩をおこし、フラッとして近くにいたセタにしがみついた。

「大丈夫か?」

「あ・・・・・・ぅ・・・・・・ごめん・・・・・・。」

視界がちゃんと定まらない。

少し目を閉じ落ち着いてから離れた。

今、自分のしたことにびっくりしてメイアは頬をかすかに赤くそめる。

「ご、ごめん!ちょっと目眩しちゃって!」

「いいから記憶。」

ん、と手をぶっきらぼうに延ばすミョンハク。

「あ、うん。」

メイアはミョンハクにカードを渡すと、自分の記憶を体内に取り入れた。

懐かしい記憶がよみがえった。

楽しそうにメイアは歌っていた。

『三つは二つ、二つは一つ、一つは三つ。

飛び去るもの飛び行くもの。

涙が伝う頬は真実を知らず、探しても得る事のできない記憶をさまよい続ける。

一番大切なものを失って人はどうやって生きていくの?

一番大切な何かを作り出して生きていくの?

でも、作り方はまだ不確かで、不真実で・・・・・・。

ああ、蒼い空飛び立つ君はどこへいくの?

ああ、私も風にのり飛び立つの。

三つは二つ、二つは一つ、一つは三つになる。

大切なもの取り戻すために今があると信じて。

今があると信じて・・・・・・。』

小さく淡く、何より美しいとは言えない歌が、妙に懐かしく、妙に寂しかった。

やはり記憶の中で“四人”は会っていたのではないか。

そんな考えが回りはじめる。

ルルスはミョンハクのいた場所にセタが埋め込まれていく。

これがミョンハクの恐れたことだった。

自分の存在は消えて、セタばかりの存在が大きくなる。

二人はあまりにも近くにミョンハクがいたため、懐かしいとも感じなかったのだろう。

そして記憶が戻ると、セタがルルスの様子を見ていた。

「セタ君・・・・・・ルルスちゃんの様子どう?」

メイアが駆け寄る。

「さっき・・・・・・おかしなことを口走ったっきり寝たままだ。」

「おかしいこと?」

メイアが首を傾げる。

「なんか・・・・・・自分達が立ち向かおうとするものには勝てないとかなんとか・・・・・・。」

そのまましばらくすると、一睡もしないまま異世界へ飛び立った。


おまけサブ台詞

「伝わるなら、変えに行く。全てを。」

「変えるために未来これからへ進め!」

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