79・複雑
メイアは一睡もせずに朝をむかえ、ルルスは何事もなかったように爆睡していた。
「ルルスちゃん・・・・・・私、そんなに簡単に変わったように見える?」
そんなに恐怖を感じていないように見える?
傷心したメイアに突き刺さったままとれないルルスの言葉。
流れだす時。
光と闇の世界・・・・・・。
人間はね・・・・・・傷を感じずに生きることはできないんだよ。
だから私だって簡単なんかじゃなかった。
毎日おまえだけ変わって変人だと言われるようで辛かった。
でも、仲間が大事だったから。
感情を押さえ付けた。
変わろうと思った。
でも、変わってもそれは“私”ではないと否定された。
じゃあ私って何?
そう思ったら全身から力が抜けた。
私は何も変われていなかったことに気付いたの。
一方的な考えを押しつけてるだけだって・・・・・・。
ルルスちゃんは今、その状態にある。
だから守らなきゃ、だから変わらなきゃ。
そうしないと“私達”の未来は一本になってしまう。
“可能性”は消えてしまう。
私は“みんなで”笑い合っていたいんだよ。
私は“可能性”のその先を見てみたいんだよ。
でもそれは・・・・・・私のただのわがままにすぎないから・・・・・・ルルスちゃんには言わない。
言えない。
だってルルスちゃんが踏み出してくれないかぎり、私が夢見る未来は、そこにはない。
でもルルスちゃんは変わりたくないという。
変われないんじゃないよ。
ルルスちゃんが頑なに拒んでるだけで変わりたくないと思ってるのと同じだよ。
でも・・・・・・押しつけられないよね。
私だって恐かった変ること・・・・・・未来が怖いのにわざわざ自分から未来に近づこうとしてた。
いろんな人の言葉や思いやりが必要だった。
仲間さえ信用できなくなってもそれを乗り越えて私達は仲間だと言ってくれる仲間に出会えた。
だから私はここにいて、ルルスちゃんはいまに至って、こうしていられる。
押しつけちゃダメだ。
ルルスちゃんが心から変わろうと思えるまで。
心から・・・・・・?
心から・・・・・・。
セタ君!
何を思いついたかメイアはマントを羽織ると、駆け出そうとして止まった。
[不思議な生物よ。私達はそなたの仲間とやらとも話し手みたい。かまわぬか?]
そこにいたのは最初に出会った精霊ではなく、もう少し年が言った感じの鼠チックな精霊だった。
「わからない。あなたたちの声がもしかしたら聞こえない人がいるかもしれない。」
例えば・・・・・・そう。セタ君とか・・・・・・。
[話すこと自体は構わぬ・・・・・・と?]
「ええ。だから私も一緒にいく。だけど、ルルスちゃんはどうしよう。」
ちらりとまだ爆睡しているルルスをメイアは盗み見た。
うずくまって安心したかのように寝息をたてている。
昨日の冷や汗と苦痛の顔はどこにもない。
[あの娘を運べというのか?]
「そうじゃない。ただ、起こさないでどう運ぼうかなって思っただけだから。」
すると、ルルスの体が浮き上がった。
「ルルスちゃん!」
[さわぐでない。]
ルルスの下に大型の精霊がいた。
四つ足精霊の背中にルルスはのっていた。
「え・・・・・・地面から・・・・・・あらわれたの?」
[わかったら我々はどこに行けばよいか案内してくれぬか。]
ルルスを背負う精霊がメイアに話し掛ける。
「あ、うん。」
メイアは歩きだした。
洞穴につくと、そこにはまだ、セタとミョンハクが軽くいびきをかきながら寝ていた。
[なんだこやつらは・・・・・・?威嚇してるのか?]
「ち、違うよ・・・・・・寝息。」
[寝てるというのか?こんな音を出して。]
「そうだよ。」
多分、動物たちには寝ながら何かを脅しているという知識はないのだろう。
「ん・・・・・・むぅ。」
セタが半目を開くと、メイアの方向を見て、あくびをしてからカッと目を見開き、ミョンハクを起こした。
「起きろ!おい!ミョンハク!」
「あ・・・・・・何だよ?」
口が開いてすこし間抜け面だったミョンハクも四つ足の得体の知れない生命体を見ると目を見開いた。
「何じゃありゃあ!?」
[おい娘、奴らは何といっているのか教えてはくれぬか?]
「え?わからない?えっとね、あなたたちは何ていう種族なのかだって。それに私はメイアって名前があって・・・・・・あなたたちには名前はないの?」
[名前?]
「呼び名はないのね?」
ルルスを乗せてきた動物にありがとうとつぶやき、ルルスをおろしながら言った。
[名などいらぬ。我らは自由に生き、何かに縛られることは決してない。]
「メイア、何はなしてるんだ?」
ミョンハクがメイアに話し掛ける。
「わからないんだ?」
[通訳者はそなただな。]
そんななか、ルルスはまだ眠りについていた。
しばらく投稿なしですみませんでした。
とりあえずこれからまだまだ長い間が開くと思うんですけど・・・・・・やめるわけではないのでこれからも暖かい目で見守ってやってください。
それに着々と100話に近づいてきてると思うとそんなに続けられる小説が今までなかったので、やはり読者の皆様のおかげなのでしょうね・・・・・・本当にありがとうございます。
これからも未熟者ですが頑張っていきたいと思うので、どうぞよろしくお願いします。