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記憶  作者: 半月
73/120

73・未来と過去

呼ばれた・・・・・・気がする。

自分の名前が・・・。

ヨ バ レ タ ・ ・ ・ ・ ・ ・ キ ガ ス ル 。

その瞬間にメイアとルルスの意識が鮮明になる。

あの強敵をどうやって倒したのか、ルルスもメイアも途中から覚えていなかった。

覚えていなかったわりにはしったり何もない地にたっているのだから勝ったのだろうと思う。

「ルルス!メイア!何度呼んだら気付くんだよ!?」

二人して後ろを振り向く。

そこにはズタボロになったミョンハクと、だいぶボロボロのセタの姿。

ルルスはミョンハクの姿にびっくりして両手で口をおおいメイアは二人に歩み寄った。

「・・・・・・酷い傷・・・・・・これ、あいつらに?」

メイアがミョンハクの服を撫でる。

「ああ。」

ミョンハクが答える。

「セタ君、ミョンハク君をそこに横にしてくれる?」

「わかった。」

「ミョンハク君、服・・・・・・めくるからね?」

上向きに寝かされたミョンハクはその状態がつらく、うなずくことしかできなかった。

服の傷はすぐ癒える。

でも、着ている張本人の傷はなかなか癒えない。

それでも魔力の込められた物だから普通より直りは早いはずなのだが。

服をめくればさらに想像を絶する光景がそこにはあった。

「ひどいな・・・・・・こんなんで歩いてたのか・・・・・・こいつ。」

セタが死に至らないのを不思議そうに見ていた。

「相手もなかなかやり手だね・・・・・・急所は外してるのに、肺とあばらの損傷だけは大きい・・・・・・。」

「そんなことわかるのか?」

「うん・・・・・・今は・・・・・・何となくだけど・・・・・・そのうち鮮明にわかるようになるんじゃないかな。」

腕まくりをして、手をかざす。

長い時間、そのまま動かないような体勢が続いた。

ミョンハクが寝息をたてる頃、そろりとルルスが来た。

「取り乱してごめんなさい・・・・・・私もお手伝いいたしますね?メイアちゃんはお疲れになったでしょう?交代しましょう。」

「あ・・・・・・うん、よろしくね・・・・・・。」

特に疲れてはいなかった。

メイアは自分の体の傷を眺める。

治ってるよなぁ・・・・・・。

何で・・・・・・治ってるんだろう・・・・・・?

顔の傷も・・・・・・体の傷も・・・・・・ザンバラカットになってしまった髪の毛だけを残して治ってる・・・・・・。

服の汚れも取れた。

ミョンハク君の傷、すごく大きかった。

あの苦痛を耐えぬいたんだろうか。

血もたくさん出てた。

だから服の汚れはとれずにいた。

私みたいに治ってはいなかった。

私・・・・・・私・・・・・・やっぱり・・・・・・自分が怖い。

わからないうちに何かが覚醒されて・・・・・・何かが進んでいく。

「メイアちゃん?」

「なに?」

「顔色がよろしくないようですが。」

「そんなことよりミョンハク君は?」

「あ・・・・・・無事そうですよ?」

ミョンハクは寝息をたてていた。

「・・・・・・でも、皆無事で生きてて良かった・・・・・・。」

「えぇ・・・・・・本当に・・・・・・。」

私たちは仲間で・・・・・・四人が当たり前なんですよね・・・・・・?

ルルスがポツリと空を見上げながら思った。

それ以下の関係にもなってはいけないし、それ以上の関係にはなってはならない。

当然のように流れていく別世界、異次元の時間の中で繰り返される物語とどうしようもないたくさんの犠牲。

メイアちゃん・・・・・・犠牲は付き物です。

ですが、犠牲はどうしようもないと考えて冷血になることだけは避けていただきたいのです。

何故ならその時・・・・・・その存在は人間ではなく、獣に変わってしまうからです。

自分が獣になるのではないかと・・・・・・・怖いのです・・・・・・だから・・・・・・どうか変わらないで・・・・・・。

私も・・・・・・メイアちゃんも・・・・・・。

ルルスもまた、最近異変が起きている一人だった。

皆が寝付く頃、メイアは再び別の場所へ移動し、ルルスはどこからか聞こえる声に身を強ばらせていた。

〔セタを・・・・・・殺せ・・・・・・奴を・・・・・・殺すんだ・・・・・・!仲間をやれ・・・・・・やつは後におまえの敵となる・・・・・・奴を殺せ・・・・・・殺せ・・・・・・殺すんだ!〕

永遠に頭のなかで繰り返される言葉の数々に必死に対抗していた。

これらの現象が始まったのはごく最近のことである。繰り返される言葉に苦悩し、反発するルルス。

〔嫌・・・・・・嫌です!例えこの身に危機が迫っているのだとしても仲間だけは守りぬいてみせます!だいたいあなたはなんなんですか!何者なんですか!?私に命令しないでください!やめて!やめて!やめて!私の頭のなかで話さないでください!〕

頭を押さえ込む。

この声が聞こえなくなったときにどっと疲れが出るのか、最近は朝の目覚めが誰よりも遅い。

メイアはあからさまに誰よりも早く起きるようになり、ルルスは誰よりも遅く起きるようになっていた。

急激な変化が起こるのは何故か二人だけ。

そんな変化を気付きつつあるセタは、二人を気にしている。

今日はルルスがガサガサ動いていたので、目が覚めた。

うるせえな・・・・・・ミョンハクがメイアでも落ち付けに行ったのか?

・・・・・・違うな・・・・・・ミョンハクは寝ている・・・・・・ってことは向こう側だから・・・・・・ルルス・・・・・・か?

ルルスの方向へ歩いていく。

「ルルス・・・・・・大丈夫か?」

「あ・・・・・・あ・・・・・・セタ・・・・・・すみません、起こしてしまいましたか?」

そういいながら顔をそらしたルルスの顔は蒼白で・・・・・・血の気がない。

「お、おい!おまえ、気分でも悪いのか!?」

ルルスに近寄ろうとセタが歩み寄った瞬間。

「近寄らないで!!」

「え・・・・・・?」

拒絶の言葉に耳を疑うが、何度確認してもやはり拒絶の言葉以外にはならない。

「・・・・・・近寄らないでください・・・・・・お願いです・・・・・・今の私にこれ以上・・・・・・近寄らないでください・・・・・・。」

耳を押さえ付けながらセタに背を向け、しゃがみこむ。

「わかった。近寄ろうとはしない。でも教えてくれ・・・・・・どうしたんだ・・・・・・?」

どうして俺をそんなに拒絶するんだ?

ルルスは黙り込んでしまった。

言えない・・・・・・言えるわけないです・・・・・・だって私の脳内では誰かがあなたを・・・・・・誰でもなく、セタ、あなたを殺せとわめいているのですから・・・・・・。

「・・・・・・ごめんなさい。今は言えまん。」

再び拒絶の言葉に何か言う統べも無くしたセタ。

「・・・・・・今は・・・・・・一人にしていただけませんか・・・・・・?」

「・・・・・・わかった。」

ルルスは自分に背を向けたセタを引き止めようとして口が開くのと同時に手が伸びたが、手は一瞬にして拳がゆるく握られ、自分のところに戻り、口は音を発せずに閉じた。

本当は・・・・・・誰かといたい・・・・・・いてほしいんです。

だけど・・・・・・今傍にいてほしい人は私に背を向けた人で・・・・・・どうじに脳内で殺せと命じられた人です・・・・・・。

傍にいてほしい・・・・・・本当は私に気付いてくれてうれしい・・・・・・だけど・・・・・・殺せとわめく脳内がその感情をすべて打ち消す・・・・・・私は拒絶の言葉しか言えなくなるんです。

・・・・・・セタ・・・・・・あなたの身を守るために・・・・・・。

それに・・・・・・私には言えませんものね?

私は・・・・・・メイアちゃんみたいに素直にはなれませんもの・・・・・・分かり切っていた事ではないですか・・・・・・。

拒絶されたセタはどこかにむかってあるいていた。

わからなかった。

自分じゃなかったらあんなに拒絶されずにすんだのだろうか?

誰か教えてくれないか・・・・・・。

さまよい歩くセタの前にメイアがぽつりと座っていた。

あまりにも寂しげな後ろ姿はザンバラカットがさらに痛々しい何かを物語り、月に照らされ、浮き上がっているように見えた。

メイアは頭を膝にくっつけたまま動かない。

その寂しげなはいけいは、自分の心境と孤独を物語るようでもうしばらく何もせずに見ていたい心境をかりたてていた。

が、メイアは少しも動かずにセタの名前を呼んだのでハッと我に返る。

「セタ君、そこで何してるの?」

「あ・・・・・・や、別に。」

「何のために・・・・・・自分って存在するんだろうね。」

唐突な質問を叩きつけられ、しばらく黙り込む。

「・・・・・・人と触れ合って生きていくためじゃないか?」

「じゃあさ、生きていく上で過去って・・・・・・記憶って大事なのかな。」

「まあ、それなりの知識としては大事だろうな。けど、過去に縛られる必要はねぇと思うよ。」

「じゃあ人は感情を失ったら生きていけないんだね。」

「まあ、生きていけないことはねぇだろうけど、なけりゃまるで機械だよな。」

「過去に縛られる必要はないって今言ったけど、未来に縛られたらどうするの?」

「ああ、まあ、そりゃ未来はわかんねぇからな。縛られないように今があるんじゃねぇの?」

「縛られるために今が存在するんだとしたら?」

メイアの頭には今日聞いた覚醒という言葉が渦巻いていた。

「何言ってんだよ?おまえどうしたんだ?」

「セタ君やミョンハク君、それにルルスちゃん・・・・・・はぎりぎりで。皆には無限の可能性と無限の未来があるかもしれない。それこそ国も世界も、次元さえ超えてしまっている私たちならどんな事が起こっても不思議じゃないと思うし、体もだんだんそれに慣れてくるようになる。それが当たり前で、それを当然としているからこそ今があって旅があって仲間がいる。それだけでもみんなはいろんな道をたどって無限の可能性を手にして未来に進むのに、私にはその先が見えない・・・・・・どの仲間とであっても、どんなことをしても、無限に広がってる世界はない・・・・・・目の前にいつもあるのは得体の知れない何か。その何かが私の体を支配して、制御しようとする。私はそれから逃れたくて頑張ってもがいても、出ることのできない未来を漂う。みんなみたいに無限に広がる可能性はいつも、一本の未来へ迎う懸け橋となってて・・・・・・未来のくせに今の私を縛り付けるの。」

「メイア・・・・・・?」

恐怖心は時に人を壊す。

もしかしたらメイアはもう希望が見えていないのかもしれない。

それに比べたら俺はまだ大丈夫だ・・・・・・そう思うと今までの悩みがいかにちっぽけで馬鹿馬鹿しかったかを思い知らされた。

少しだけ今までの気持ちが晴れた。

「メイア・・・・・・お前には俺たちがいる。俺たちが無限の可能性を手にして未来にいけるなら、メイアも未来は一つと思わないほうがいい。確かに未来は一つしかないのかもしれない。どんな無限の可能性を持っていたとしても、すぐにへし折られてしまう可能性が多いんだ。一つしかない未来でも、たどり着くまでにはいろんな道がある。投げ捨てたり簡単にそれしかないと思い込むな。」

メイアは少しだけ笑った。

「そうだね・・・・・・今を生きろっていいたいんでしょ?頑張ってみるよ。」

セタにはセタにしかない残された未来がある。

旅をおわらせるということは、次の試練が待ちわびていて、そんな未来を窮屈に思っている。

だけど・・・・・・だからこそ、メイアの気持ちは多少はわかるものの、すべてはわからずにいる。

それは当たり前で、そのものの重さなど見ただけではわからないのと同じだろう。


作「しばらく投稿しなくてすみませんでした。あまりにも質問とキャラに関する登場人物たちがいなくなってしまったので、?コーナーはまだやりますが、次回作紹介をキャラごとにやってもらおうと思ってます。今回のゲストさんはメイアちゃんです!」

メ「はぁ・・・・・・次回作のヒントみたいなのですか?」

作「まま、やってくださいよ。」

メ「そうですね、次回作では私とルルスちゃんが心身ともに弱っています。ミョンハク君やセタ君は旅を重ねるごとに私達を仲間だと思ってくれるのですが、私たちは・・・・・・?ということだそうです。」

作「もっと感情入れてください!!」

メ「無理です、さっきの予告でも言ったでしょう?私、疲れちゃって・・・・・・。」

偽りの自分ってどんなんでしょうね。

辛いだろうな・・・・・・なりきるまでに相当な時間かかりそうですし。

そんなこんなで、読んでくださった読者の皆様、ありがとうございました。

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