7・杯
杯が長老たちの手に渡されていく。
盛大の欠片もないくらい静まり返ったこの村に・・・・・・。
立てるはずのない舞台に立ったのはまだ17歳の子供たち。
誓いが始まった。
「今夜は災いを払うべきことを中心としてシャルス家にも杯をとっていただく。よって我がセイ家、サントラー家、シャルス家の三家につき、執り行う。」
セイ家のご長老の話をサントラー家のご長老が話を次ぐ。
「今夜、この月がこの村の、そして我らの天辺に上るころ、我らの手の中で杯が目を覚ますであろう。」
次はメイアのお爺さん。
生粋の家系ではないシャルス家には長老など立派なものはない。
だからこそ、当然の成り行きだったのだ。
母方にしか祖父は残ってはいなかったのだから。
「今夜こそ言い伝えのとき。ここにいる、セイ家、セイ・ミョンハクと、サントラー家、ルルス・サントラーと、我がシャルス家、シャルス・メイアの三人によって災いがもたらされないことを願う。」
サントラー家の長老が三人の方向を向く。
「そなたたちが今着ている服は必ずそなたたちの力となり、助けてくれるであろう。どうか災いがあっても三人が英雄となり我らの世界を救ってくれることを祈ろう。」
ゆっくりと杯が長老たちの手によって持ち上げられ、その天辺に月が昇る。
つまり、この町の天辺に上がったのだ。
「ここに我らすべてのものの願いを乗せたものを英雄とする。」
「そして、その英雄たちが災いの元凶でないことを祈る。」
「英雄たちは言い伝えの災いから我らを救ってくれるだろう!!」
それを聴いた瞬間、ミョンハクはムッとする。
あんだけ災い呼ばわりしといて、遠ざけといて、結局は助けろだぁ?英雄だぁ?
何戯言抜かしてるんだ。
結局みんな自分じゃどうにもならないとわかると他人任せになるんだ。
そう思ったからだ。
『今こそ杯の目覚めし時!!』
三人の長の声が一つになった。
その瞬間、国ごとわっと活気付いた気がしたのと、月が赤くなったのをメイアもルルスもミョンハクも見逃しはしなかった。
「ルルスちゃん、今・・・・・・見た?月が・・・・・・。」
「赤くなりましたね。でも、何故誰も何も言わないのでしょうか?」
「見えたのかもしれないし、見えていないのかもしれない。でも、確実にいえるのは、全員あれを見たわけではないってことだな。」
そのときとたんにメイアは歩き出した。
向いている先は空。
左右にゆれながら歩いていくメイア。
視点はどこにも定まっていない。
「メイアちゃん?メイアちゃん!!」
「駄目だ!!今、あいつの意識はどこにもない!!」
走って追いかけるのに、宙を浮きながら歩いていくメイアに追いつかない。
「止めなければ!!」
ルルスが風の魔法を使ってメイアを止めようとするが、メイアはよけて通り過ぎていく。
フラフラとしたまま三人が行き着いた先は古代遺跡・・・・・・とまではいかないものの立ち入り禁止区域の部屋で、言い習わし・・・・・・つまり予言にも出てくる古い部屋だった。
そしてある床に彫られた大きな模様の上で立ち止まると何かつぶやき、メイアから光が飛び散り倒れこんだ。
さて……。このあとこの3人はどうなってしまうでしょう……?