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記憶  作者: 半月
69/120

69・カザネコロと四体の人形 (番外編)

ある国・・・・・・。


その国は聖地、快楽の都市といわれ、もてはやされた。


その国には美しい音色を奏で、踊りを舞う、美しい人形が四体いた。


その人形はその国の妖精と呼ばれ、人々の心を癒し続けた。


もともとその国は荒れ果てた国で、飢えたものたちで埋め尽くされた地獄への通路とされていて、そこに快楽の都市が出来るなど、誰一人として思ってはいなかっただろう。

骸が転がり、飢えた死人たちの死臭が渦巻いていた。

人々は彼らを人だとは思わなかった。

なぜならそこは、“罪を犯した獣たちの住みか。”つまり、地獄道としていたのだから。

もともとその地は荒地と乾燥地帯であり、食べ物も、飲み物も確保できないような広々とした土地だった。

そこへ旅人は訪れた。

この旅人は、この世界では神とされている。

なぜならその人こそがその快楽の都市を作り上げた本人だからだ。

“彼”が守り続けた聖なる土地。

大ホール石柱には、刻まれていた言葉。

“神は地獄行きの獣たちを人とあがめ、消えていく命をその目に写された。神はそれらのために一滴の涙を流し、聖地を作り上げると、召された。神の器は人間だったために、もろく、神が聖地で暮らすことはなかったが、神はこの世界のコントローラーをどこかに残し、その行方は知れぬままである。だが、神は永久不滅である。”っと―――・・・・・。

しかし、“彼”の死後、聖なる土地は完璧なる終わりを遂げた。

柱の文字の形跡も、石柱自信が粉々になり、文字など跡形もなく消え去ってしまった。

その聖地は一度は“神”と呼ばれる人間の手で作り出され、栄えたものの、その栄えはピークに達すると、聖地は保てなくなった。

人間の総人口の数と聖地が作り出す食料や水などの量は反比例し、聖地は荒れに荒れた。

それは、コントローラの存在がいてもなお、食い止められなかった神の“誤算”とされている。

みなはお気づきかもしれないが、そのコントローラーこそ四体の人形であり、異世界を旅している“あの”四人の旅人たちのカードである。

カザネコロはそんな聖地が崩れ去ったずっと後に生まれた子供だった。

カザネコロはかわいい男の子としてこの世に誕生したが、成長するにつれて目も当てられぬほど無惨な姿になっていった。

何の病気かは分からない。

それどころか病気なのかさえ分からない。

元気に何事もなくすくすくと育っていく我が子の体にはだんだんとカビややけどの跡のようなものが繁殖するように広がり、見かねた両親は子を捨てた。

・・・・・・というよりは、子供とともに一家心中を図った。

つまり、生きようとする子供の命を捨てたのだ。

一番初めにカザネコロは首を閉められ、両親の目の前で死んだ。




はずだった。


カザネコロは両親がこの世を去った瞬間に目覚めた。

が、今までのカザネコロではなかった。

妙な記憶を持ち合わせた妙な力を持つ少年になっていた。


彼は、


“神”の記憶を


持ち合わせていた。


カザネコロの頭の中に繰り返される何か。

ラノ・・・・・・アル・・・・・・テノ・・・・・・ハス。

それが何のことなのかはカザネコロには分からない。

分かるのは、記憶が、“聖地へ向かえ”と指令を出していることだけだった。

長い長い道のり・・・・・・。

その間にも白い目で見られ、追い払われた。

ぼろぼろになりながら着いたのは、カザネコロ自身、知るはずもない大きな建物の中。

「・・・・・・快楽の都市・・・・・・?」

知るはずもない場所にいるのに知っているかのように入り口を通り、ぼろぼろになった壁を見上げる。

「・・・・・・あ〜あ・・・・・・こりゃひどい。」

大ホールの扉を開けると、歌がぴたりと止んだ。

「・・・・・・人間だ・・・・・・。」

人形が狂ったように目を見開く。

「・・・・・・快楽の都市へようこそ。ここはしばらく子供も迷い込んではいませんよ。」

カザネコロは見た瞬間に思った。

これがあの、ラノ、アル、テノ、ハスの正体なのだと。

「ラノ・・・・・・?」

柱の一番近くにいた隅のほうの小柄な女の子に向かって話しかける。

「君がアル、君がテノ、最後にハスだね?」

ピンク色の髪の毛のラノ。

オレンジ色の髪の毛のアル。

紫色の髪の毛のテノ。

水色の髪の毛のハス。

「どうして・・・・・・コードネームを知っているのデスカ?」

目がおかしくなっている。

人間に“捨てられた”という気持ちが強いのだろう。

「僕のコードネームは神だよ。」

『か・・・・・・み・・・・・・?』

みんな目を見開く。

「そんなばかな・・・・・・神は死んだ。」

「そうだね。僕は生まれ変わりなのかもしれない。」

「しばらく様子見しましょう。」

そうして絆は日に日につながっていった。

でもある日、一人の子供が迷い込んできた。

一人の姿を見るなり、うむを言わさずにたたきつけた。

そのたたきつけられた一人は・・・・・・アルだった。

アルは・・・・・・錆びれて少し子供が見るには怖い姿をしていた。

オレンジ色の髪の毛、瞳から血が流れているかのように見える錆、なのにぱっちりと見開かれた目。

「やめて・・・・・・やめてください。」

次の瞬間、


ブシュッ。


アルは子供を殺していた。

それ以来、快楽の都市はいつのまにか妖怪が住みつく妖怪の館とされてしまった。

アルが血を滴らせ、カザネコロの前に現れて戦闘態勢にはいった。

「やっぱり・・・・・・人間は信じられません・・・・・・。」

叩きのめされた顔はすこしへこんでいる。

「アル。まって、後もうすこし様子見してみよう。今の段階じゃ、神かどうかも分からないんだ。」

テノがアルをなだめる。

そして翌日、大人たちの奇襲が始まった。

妖怪を追い出せというのだ。

四人はやはり叩きのめされた。

そしてやはり人間は自分の都合にあわなくなるとコロっと態度を変えるのだと判断した。

四人は荒れ狂い、周りの人間を殺していった。

そしてカザネコロの前に立ちはだかり、カザネコロは悲しそうに笑った。

「生み出すべきじゃ・・・・・・なかったのかもしれない。」

それは、旅人の言葉だった。

「本当は、ここにいた罪人たちを見殺しには出来なかっただけなんだ。昔のやり方は残酷すぎる。そう思ったけど。君たちは死ねないんだもんな。人に裏切られることが多いよな。」

四体はカザネコロにじりじりと近づく。

「殺したければ、殺せばいいさ。僕にはもう帰る場所がないんだ・・・・・・ラノ、アル、テノ、ハス。君たちの居場所しか、僕にはもうない。だって、この様だろう?」

カザネコロは自分の顔に手を当てた。

何年かの月日は流れ、カザネコロは青年になっていたが、もう顔の半分は湿疹のようなものが覆っていた。

ハスは手を下ろした。

「僕にはわからない、どうして人間はあんなも自分勝手なのか。」

カザネコロが本当に何もする気はないことを四人はなんとなく感じ取って、武器を下ろす。

「僕にもわからないよ。一回死んだと思ったのにどうしてココにいるのか。」

カザネコロがつぶやく。

その後も何度か子供たちが来た。

何も言わせずに殴った。

人形も、カザネコロも。

『化け物だ!化け物だ!!』

そう騒ぎながら。

そうして子供たちは死んでいった。

化け物に感情があるとは思わないのだろう。

ここがかつて獣たちによる地獄道だったように。

痛いんだ。

罪を犯すことも、野ざらしにされることも。

でも、やらなきゃ殺される。

化け物になってもなお、生きたいと思うんだ。

僕が旅してたとき、死に掛けた記憶があるように。

だから僕はここに快楽の都市を作った。

不思議な力をもつカードを操って。

そしてその力を今度は誰かに利用されないように四人の中に入れた。

なのに・・・・・・やっぱり駄目なんだ。

ここが地獄への通り道じゃなくなったら今度は別のところで同じ土地が生まれるだけだった。

ここは本当は・・・・・・人が住むために作ったわけじゃない。

ここで死んでいった人のためのせめてものはなむけだった。

美しい音色も、植物も、水も、なくて苦しんだであろう人たちのために。

そしてこの部屋(くうかん)は、罪人たちにも家族がいただろうにその人たちが、来て葬儀か何かをするために作ったものだったのに・・・・・・。

気がつけば汚れてる。

水も、人形たちも、植物も、僕も。

壁はもうぼろぼろだし、僕らは化け物になってしまった。

人間の心を持ち合わせた人形は死ねないからもっと僕よりいろんな苦痛を味わってきたんだろうと思う。

でも、やっぱりここで人間を殺してるんじゃ、地獄道と変わらない。

なにかやり方を変えよう。

「みんなに聞いてほしいことがあるんだ。」

そうして、威嚇案は成立し、子供が無駄死にすることはなくなった。

もちろん大人も。

“あそこには化け物がいて、あそこから聞こえてくるきれいな音にほだされて迷い込むと、沢山のワナが仕掛けてあって、もしも化け物と目が合ったら生きて帰ってはこれないよ。”

噂だけを残して。

でも、あるとき軍隊みたいな奴らが来て、四人は戦わなければならなくなった。

カザネコロの目は半分見えなくなっていた。

「化け物がもう一人足りんぞ!」

ついにカザネコロは見つかった。

そして、鉄砲とかいう武器で狙われた。

他の人形たちはまだ戦っていた。

カザネコロは自分が死に掛けていることを場の雰囲気で悟った。

そして







バァンッ!!







打たれたのは・・・・・・




飛び出してきたテノだった。

「え・・・・・・?」

「カザ・・・・・・ネ・・・・・・コロ・・・・・・ごめん・・・・・・約束・・・・・・守れなくて・・・・・・。」


ドサッ。


テノの体が地面に横たわり、体から一枚のカードが出てくると、それは敵を一瞬でふっとばし、みんな生き残ったものもみんなどこかへ逃げ去っていった。


「・・・・・・テノ・・・・・・?うそだろ・・・・・・?」

みんなでいろんな話しをした。

今まで生きてきた長い歴史の話しや、嬉しかったこと、悲しかったこと。

『君たちは僕に壊させてくれるかい?』

嫌だったから。

苦しむ彼らを見たくなかったから。

『だから、僕と一緒に土に返ろう。そしてまた違う時代で、今度は友達として出会おう。』

その考えにみんな嬉しそうに聞いてくれた。

“また会えることを信じて。”


「テノォォォォオオオオ!!」

叫んでも帰ってこない。

泣いても帰ってこない。

テノの体内から出てきたカードは端から順々に光の粒へと変わってどこかに飛んでいく。

もう再び動くことはない。

分かってる。

けど、生き返るならもう一度・・・・・・。

カードに手を伸ばし、つかもうとした瞬間のにカードはすべて光となって、泡をつかむように消えていった。

しばらくの月日が経ち、カザネコロは石柱の前にいた。

「・・・・・・前まで、どうして“神”としての旅人を永久不滅にしたがるのか分からなかったけど・・・・・・。」

今なら分かる気がする。

だって、テノも永遠なんだ。

僕たちの中で生きているから。

テノとの記憶が僕の中にあり続ける限り、テノは存在するし、そこに生きている。

だから、永久不滅なんだ。

長い長い時間が駆け抜けていく。

迷い子達は涙を流して立ち去る中、四人は、“旅人”に出会う。

みんなどことなく人形に似ていた。

黒髪の男の子はどことなくテノに似ていて、懐かしかった。

そうか、テノ・・・・・・君はもう新しい仲間がいて、生まれ変わってたんだな。

少女の話を真に受けて、休もうとしたとき。

グサッ

何かが体を貫いた。

ポタポタポタ!!

何かが滴る音。

鉄くさい。

暖かい。

血だ。


そうだ、自分の血だ。


「きゃぁぁぁああ!!カザネコロ!!!」

どこかでラノの声が聞こえる。

そうか。

あの約束は果たせないのか・・・・・・。

ごめん。

みんな。


ごめん・・・・・・。


そうして、影によって脆くもコントローラーは失われ、四人の・・・・・・いや、五人の約束も打ち消された。

脆く、儚く。

コントローラーを失った土地は再びただの荒地へと戻り、カザネコロが守り続けた聖なる場所、大ホールは石柱も砕けた。

そして、快楽の都市はカザネコロとコントローラーの存在が消えたことで本来の役目は本当に失われ、再びその地に快楽の都市が建つことはなかった。

いやはや二日がかりになってしまいました。

下書きがないのは意外とつらいんですねぇ・・・・・・。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

ちなみに、影の正体は後々出てきますよ。

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