68・小さな悲鳴
ミョンハクは起きてから部屋でただ一人、考え込んでいた。
あいつは恐怖がここ最近あるといったのにあの日、俺は何をした?
怒鳴ったよな?
怒って、ただ腹が立って、あいつの恐怖を軟らげる事なんか出来なかったよな。
うわぁ・・・・・・思い返しても最低だ・・・・・・俺。
すると、バタバタという足音が聞こえ、ミョンハクの個室の扉が勢い良く開かれる。
バァン!
「ミョンハク!起きてください!メイアちゃんがいらっしゃらないのです!」
「あ・・・・・・?そうかよ。あそこにいるだろ?」
「どこですか!?不貞腐れてないで教えて下さいよ!?」
渋々と道案内する。
俺はメイアにあったらなんて誤ればいい?
すると、メイアがいる場所にはセタがすでに来ていた。
「駄目だ、こいつ爆睡してるよ。」
「メイアちゃん?メイアちゃん?起きてください、朝ですよ?」
ルルスがメイアを揺さ振る。
「ん?」
メイアは薄目を開けると、ムクリと立ち上がり、歩きだした。
「メ、メイアちゃん?」
メイアは何事もないように柱を垂直に渡り、一番高いところまでくると停止した。
今、メイアの頭のなかではある一つの言葉が渦巻いていた。
―――ルルスに必要とされない。
ミョンハクにも怒られた。
みんなおまえなんかいらないと言っている。
おまえは兵器。
この世を無にするために生まれた兵器。
誰にも必要とされない、使い捨ての兵器なんだよ。
なら、いっそのこと、消えてしまえ。
キエテシマエ・・・・・・。
メイアに意識はない。
頭が勝手に危険信号を鳴らしている。
メイアの体は斜めに傾くと、落ちた。
「メイアちゃん!!」
ルルスは必死に落下場所の衝撃を和らげるために魔法を使い、ミョンハク、セタは何が起こったのかわからずに立ち尽くしていた。
一瞬時がとまったのかと思った。
メイアは落下途中に光に包まれた。
落下速度は途端に弱まり、空中に寝ているような格好になった。
“確かにあなたは自分の存在がわからなくなるときがあるでしょう。ですが、あなたは必要とされています。あなたは兵器なんかではありません。あなたたちこそ全世界、宇宙を救える勇者なのです。だから自ら必要ないなどという考えはやめて、今を生きてください。例えその存在が自分が思っていたものとは別物であっても――…‥。”
メイアはふわりとルルスの魔法の上に横たわると、無事に地面に着地した。
「メイアちゃん!!メイアちゃん!!」
ルルスが駆け寄る。
メイアは目をあけた。
「ん・・・・・・?ルルスちゃん?え、私、なんかした?」
「・・・・・・覚えていらっしゃらないのですか?」
「へ?」
「忘れてんならいいんじゃねぇの?」
セタが少しあきれ顔でいうそばでミョンハクが気まずそうに近づいてきた。
「あのさ、昨日は・・・・・・キレたりして、悪かったな。」
「昨日?何言ってんの?私、昨日ミョンハク君となんか話した?」
「覚えてないのか?何も?」
「メイアちゃん?昨日あったことは言えますか?」
「やだなあ、何言ってんの?昨日は変な影が私たちのカードを奪ってったんでしょ?」
「そのあとは?」
「特に何事もなかったよ。私、いつ寝たんだろうね。」
忘れているならワザワザ思い出させる必要もない・・・・・・三人はそう判断し、それ以上は何も突っ込まなかった。
そうして異世界へと旅立った。
次はこの世界のお話です。
お楽しみに。