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記憶  作者: 半月
63/120

63・醜い姿

また・・・・・・まただ。

手やからだが震えてきた。

寒いんじゃない。

恐怖だ。

このまま一人になってしまうのではないと、闇に近づけば近づくほど恐くなる。

恐い・・・・・・人はみな一人というのに、独りになるのが恐い。

コ ワ イ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。

何となく外に出て、ふらふらと出口に出た。

月がのぞいていた。

暗やみがあった。

ほっとしたけど恐かった。

うずくまっていたら転寝うたたねしていて、夢を見た。

「ふざけるな!お前は敵だ!」

「近寄るな!」

「敵!敵!敵!」

「おまえなんか信じられない!」

はっとした。

敵・・・・・・か・・・・・・。

ぼんやりと朝焼けが近づいてきていた。

暗い地下道をかえっていく。

部屋に行くと、セタとミョンハクが起きていた。

『どこに行ってた!?』

同時に聞かれ、すこし驚くメイア。

「どこって散歩だよ。出口を見つけたの。それだけ。」

「ほぉ?出口なぁ。でもできたらグループ行動を乱さないでほしいな。」

セタが嫌味っぽく言う。

グループ・・・・・・そうだ・・・・・・今はまだ独りじゃない。

「そうだね。以後気を付けるよ。」

「何でそんなふうに笑う?おまえ、またなんか溜め込んでんじゃねぇだろうな。」

ミョンハクがあぐらに頬杖をついてメイアに聞いた。

メイアはここの仲間全員から見離され、敵と呼ばれた夢を見たこともそうだったが、一人で抱え込んだ恐怖に・・・・・・再び襲ってきた恐怖に押しつぶされそうになっていた。

・・・・・・でも、そんなことは言えない。

これは私一人の問題なんだから。

「何でもないよ。大丈夫だから。」

いつも何故かいち早く私の異変に気付くミョンハク君と、別に慰めたつもりはないのに少しの言葉で安心できるセタ君。

ルルスちゃんは私を見抜いているかもしれないけど、心配はかけないようにしなくちゃね。

「・・・・・・おまえ、今ルルスと同じ顔した。」

セタがつぶやく。

「え?」

「ルルスはいつも寂しそうな顔をする。おまえまで同じ顔なんかするな。」

あぁ。

そうだった。

セタ君はルルスちゃんと仲良いんだよね。

「うん。わかった意識してみる。」

寂しいのも、誰かが恐がっているのも、一瞬で見抜けるのは、みんな同じ思いをしているから――…‥。

「んっ。」

「あ、ルルスちゃん、おはよう。今日は遅かったね。」

「お早ようございます。そういうメイアちゃんは日に日に朝が早くなっているようですが、ちゃんと睡眠はとらなくてはなりませんよ。」

むくりとまだ寝呆けが残る顔で起き上がった。

「そうだね。そーだよね。」

だんだん闇にも慣れてくるだろう。

そうやって、恐怖にも立ち向かえるだろう。

そう思いながら出発した。

出口に着いた頃にはすっかり日はあがり、大きなホールのような場所に出た。

そしてその奥にある、大きな扉。

開けると、音楽が聞こえた。

楽器のような・・・・・・ハープのような音がする。

メイアが耳を澄ませた。

セタとミョンハクはわけが分からずに驚いていた。

ルルスは辺りを見渡していた。

「・・・・・・違う。これ、楽器じゃない。歌だよ。」

メイアが一言そういった瞬間に音はすべて消えた。

「はぁ?」

カサカサと音がする。

「みんな・・・・・・あぶないよ。」

直感で危険を察知し、天空へ舞い上がったメイア。

グサッ!

宙返りの着地後も、後ずさる。

その後を槍のようなものがささっていく。

そしてその刄は全員に向けられた。

ルルスは縦で防御、セタは結界で壁を作って四人を囲った。

攻撃の音が鳴り止まない。

少し止んだかと思うと、声が聞こえた。

それはひどくしゃがれた男性の声。

「立ち去れ・・・・・・迷い子達よ・・・・・・ここは踏み入れてはならぬ地。その地をその汚れた足で踏み荒らそうとするならば子供でも容赦はせぬ。」

「ま、待ってください!私たちは捜し物を探しにここにきたんです!もしかしてご存じないですか?カードっぽいものなんですけど・・・・・・。」

ルルスが説得にあたる。

「知らぬ。何よりここはもう数百年前から誰一人としていないからな。」

「あなたは人間ではないのですか?」

「私は人間だよ。そして子の子達も人間の心を持つ子達だ・・・・・・。」

話が噛み合わなくなっている。

ルルスはさっき言われたことを整理してみた。

ここ数百年ずっと人は住んでいませんね。

えぇ、見れば分かります。

私は人だよとおっしゃいましたが、その数百年ずっと生きている・・・・・・?

どう考えたって人間の寿命というものを超えているはずです。

なのに人間で・・・・・・“この子達”・・・・・・?

一人ではなく複数ある存在がそこには実在していて、その中の一人は確実に人間だといいますね。

それに、カードのことを知らないということは別の形で存在しているということですよね。

カードを使えば長年生き延びることも可能です!でもでも・・・・・・カードで永久の命になったなら老いる必要はなくなってしまうはずですよね・・・・・・なのに何故こんなにもしゃがれているのでしょうか?

妙な顔つきになったルルスの横でセタはカードのことを考えていた。

メイアはさっき、聞こえてきた音を歌だといった。

たけど、あんな声人間が出せるだろうか?

老人(と推測される)はカードなど知らないと言った。ならばその楽器がカードなんじゃないのか?

メイアは一呼吸おいてからセタに言った。

「私をここからだしてもらえる?セタ君。」

「でも、危ないぞ?」

「だけどここでじっとしてても何も始まらないでしょ?」

「・・・・・・わかった。壁をとこう。」

「あ、私一人でいいよ。あそこの二人、考えてるみたいだから。」

「だが!」

「大丈夫だよ。姿を見てくるだけ。」

そうしてにこりと笑うと壁を擦り抜けていった。

「ほぅ。一人でくるか。お前はかなりの利口者かよほどのバカか。どっちだろうな?」

「お話があります。姿をお見せください。」

武器を構える音がする。

「構えないで。今私は武器を持ってはいません。」

「まぁ、いいだろう。話を聞いたらすぐ立ち去るんだな。」

「ええ・・・・・・お話を聞いて、私たちの捜し物と関係がなければ即帰らせていただきます。」

「・・・・・・ハッハッハッハ!関係などないにきまっている。どうやらおまえは大バカ者とみた。まぁいいだろう。そのまま動く出ないぞ。」

ゆっくりと老人が姿を見せた。

「・・・・・・っ。」

その姿を見てメイアは何も言えなくなってしまった。

「もうずいぶん長い間目が見えなくてね。」

顔から首、おそらく体にかけて左半分以上焼けただれた肌。

残された目は両目とも別々の方向を向き、右目は飛び出るようにギョロついていた。


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