61・何もない
メイアはさっそく教えた。
集中して外に行くことを考えながら結界に触れ、その薄いやわらかな幕を突き破るようにして進むのだと。
そして四人は外へ出て想像を絶する景色を見た。
そこは砂漠だった。
草木一本ない。
それどころか水素と呼べるものすらない世界を・・・・・・。
「雲も、湖も風も・・・・・・私たち以外の音もないんですね。」
「こんな環境では人間は生きてはいけない。」
セタが小さくつぶやく。
「でも次に進むにはどうしようもない犠牲が出される・・・・・・だから、メイアちゃんは・・・・・・。」
その先は誰も何も言わなかった。
「まるで灼熱地獄だここにはいられない。あそこに帰ろう。作戦ならまたたてればいい。」
セタが提案する。
「何言ってるの?セタ君はあの結界を外して。」
「メイア?」
セタが首を傾げる。
「何を言ってるんですか!メイアちゃん!犠牲を出すのを一番嫌がったのはあなたでしょう?」
「結界がとけたところで人々がいきなり死ぬわけでもないでしょう。ただ思い通りにいかなくなるだけだよ。生活が。」
「うん・・・・・・まぁ、そこまでいうなら結界をとくけど。」
セタはさっそく結界の外側にまた別の結界をはると、四枚のカードがセタの手に滑り落ちる。
「四方固め・・・・・・四隅に一枚ずつのカードで形成された結界・・・・・・か。」
とたんに魔法はあふれだし、どこがカードが眠る場所かが一目でわかった。
「あったね。」
メイアがつぶやいてカードにむかってあるいていく。
そこにはルルスのカードが三枚あるだけだった。
「メイアちゃん!まってください!メイアちゃん!」
そうしてカードはルルスへ渡り、メイアはつぶやいた。
「惑星があればいくらでも命は形成されるんだっけ?得るものがあれば犠牲が出るのも当然ってルルスちゃんが言ったんじゃない。」
記憶が滑り込むルルスの耳にかすかに聞こえたのはメイアの声だった。
「犠牲・・・・・・が出るの・・・・・・は仕方ないこと・・・・・・だと確か・・・・・・に私は言いま・・・・・・した・・・・・・けど・・・・・・。」
けど、メイアちゃんに残虐になれといった覚えはありません。そう言おうとして意識がもたなかった。
意識は記憶へと注がれ、視点が定まらない中、記憶だけはものすごいスピードで駆け巡っていく。
命の危険にさらされる場所で長居はしていられなかったのですぐに別の異世界へと旅立つことになった。
ルルスが視点が定まっていない間の出来事だった。
驚きました・・・・・・ファンタジーだったかはなぞですが、“記憶”というまったく同じ名前の小説が存在しました・・・・・・。