60・変化
メイアはうずくまっていた。
ミョンハクはメイアを想像すると魔法でメイアの居場所が実現され、メイアを探しだした。
「メイア・・・・・・。」
「ミョンハク君・・・・・・。」
小さな擦れ声が行き交いする。
「外の世界で何を見たんだ?」
「砂漠・・・・・・。」
「は?だって町があったじゃないか。」
「あれはきっとルルスちゃんの魔力が主になってる幻覚だよ。」
「え?」
「外は・・・・・・砂漠だった。」
そう言って再び膝に顔を埋めてしまったメイア。
ミョンハクはのばしかけた手を引っ込めた。
「ねぇ、私の考えってそんなにおかしい・・・・・・?」
「は?」
「何かを取り戻すために犠牲が出るのは当たり前なことはわかってるよ。でもそれをできるだけ出さないようにするのはおかしいことなの?そんなに・・・・・・間違ってる?」
ミョンハクは静かに頭を振った。
正直、かける言葉も見つからなくて、メイアの発言に少し戸惑っていた。
自分達が・・・・・・メイアをここまで追い詰めたのだろうか・・・・・・。
なら何があってて何が間違ってるんだ?
それが当たり前と決め付けて、メイアを強制してただけなのだろうか。
わからない。
きっと正しいとか常識なんてないのだ。
「メイア・・・・・・。」
メイアに近づいたとたんにメイアはミョンハクのむなぐらをつかんだ。
「は!?」
一瞬何されたのか分からずにいると、ゆっくりとメイアの頭がそこにうずまった。
「・・・・・・いの・・・・・・。」
「は?」
「ないの・・・・・・この町の人たちを助けてあげる方法がない・・・・・・っ!」
メイアが静かに泣きだした。
普段いつもあんなに大騒ぎしながら泣くような奴が・・・・・・声を噛み締めて、震えに耐えようとしている。
ミョンハクは少しため息をついてからメイアの頭に手を乗っけた。
もっと震えて寒いのだろうかと思うほどに・・・・・・。
支えてあげられれば一番いいんだろうが・・・・・・俺じゃダメだな・・・・・・。
いつも延ばしたてを引っ込める自分を前にするといやになる。
なぜ俺がこいつの応援をしなきゃならない?
こいつがセタを好きだろうがなんだろうが関係ないのに。
なのになんだ・・・・・・この重苦しい気持ちは・・・・・・。
メイアはいろいろなことを思い出していた。
いつだって一人なんじゃないかと恐怖心を抱きながら仲間でいたこと。
いつだってわがままだったこと。
泣いて泣いて、そのたびに慰められたり、宥められたりしたこと。
そして最近少しずつ気付いた、自分の直感が人並みはずれていること。
そして最近思う、実は自分はあの三人の足を引っ張っているだけなんじゃないかって。
自分のことでいっぱいになって押しつぶされそうになってる自分が嫌。
だからこそ他のことに集中しようとしてるのに何もできなくて仲間の足を引っ張っているだけなんじゃないかって思うともっといやになる。
それに、生命って、生まれてきた命って大切なんでしょう?
ルルスちゃんやミョンハク君が必死になって守ろうとしている故郷のように。
ならここにある命は大切じゃないとでも言うの?
ここにいる人たちを救いたいと思うことは間違ってるの?
そんな生易しい感情は捨てろってこと?
どうしてみんなそんな平然としていられるの?どうして!?
分かんないよ・・・・・・分かんないよっ!何でそんな冷静でいられるの?
確かに都合上、ものを奪うような形になる。
奪えば犠牲が出ることくらい私にもわかってるよ。
わかってるけど・・・・・・それをできるだけ少なくしようという考えはおかしい?
ミョンハク君は首を振った。
だけど今の私をどう思ってるだろう。
気が触れてるとかわがまますぎるとか思ってるのかな・・・・・・。
すると、メイアはミョンハクから離れた。
まだ、その頬に涙を流しながら・・・・・・。
「メイ・・・・・・ア・・・・・・?」
「大丈夫。もう大丈夫だから。ありがとう。」
「嘘だな。」
「嘘じゃない。」
「ならおまえは泣きやむよ!つらいから・・・・・・わからないから泣くんだ!」
「違う・・・・・・違うっ!もう本当になんでもない!」
「メイア?」
そう言ってミョンハクののばした手をメイアは振り払った。
しばらくの沈黙が流れる。
メイアは自ら誤る気にはなれなくて、ミョンハクは何で自分がこれほどまでにメイアに拒絶されなくてはならなかったのかが分からずにいた。
その長い沈黙を破ったのはミョンハクだった。
「あぁ・・・・・・そうかよ。つまりお前はセタがよかったんだよな・・・・・・?」
セタの名を口にしたとたん怒りがこみあげてきた。
何してるんだ俺・・・・・・。
「ちがっ・・・・・・。」
「違くねぇじゃん。なぁ!お前はほんっとわがままだよな!犠牲だって住める惑星があれば生命は生まれるんだよ!なのに・・・・・・モモンガのときもそうだ。モモンガ、モモンガ!モモンガ!!結局悪役はいつも俺かよ!じゃあセタに守ってもらえばいい。てめぇのヒーロー様に守ってもらえよ!」
そうしてお互いに口を利かなくなった。
違う・・・・・・こんなことを言いたかったわけじゃない。
メイアにさらに追い打ちをかけたかったわけじゃない!
誰か俺を止めてくれ。
セタに対する不振やお前達がセタに対する態度などの不満をメイアに八つ当りしてどうなるんだ!
あぁ・・・・・・もう最低だ・・・・・・。
最悪だよ・・・・・・。
メイアはミョンハクからたくさんの拒絶の言葉を聞いて涙も流れてはいなかった。
もう、涙を流す気力さえなかった。
あぁ、やっぱり私は迷惑な存在だったんだなぁ・・・・・・。
それだけが頭を走馬灯のように何度も何度も駆け巡っては無心になる。
それを何度も何度も繰り返した。
その時にメイアの頭に一文字ずつインプットされていく言葉・・・・・・。
奪イ アウノダカラ 犠牲 ガ アッテ アタリマエ ソレナノニ イチイチ 助ケダソウ ト スル 私 ハ 大馬鹿者 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ナノダ 。
気付けばルルス達のところにいた。
気付けば何にもなかったようになっていた。
「メイアちゃん。大丈夫でしたか?すみません、先程は私が強く言いすぎましたね。でも、メイアちゃんを心配しているのです・・・・・・これでも・・・・・・。」
「ううん。私こそかってに取り乱して心配させてごめんね。もう大丈夫だから。」
気付けば笑っていた。
笑 ッ テ イ タ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
「ミョンハク君も、さっきはごめんね私が間違ってただけの話なのに大騒ぎして。」
ミョンハクは先程ずっとメイアがうわの空だったことも、時折フリーズしていたことも知っていた。
「演じてんじゃねぇよ。」
「え?」
また、口が勝手に話しだす。こんなこと言いたいんじゃねぇよ。
素直に誤れよ。
「今のお前気持ち悪い。自分を無理矢理操っているようにしか見えない。」
違う、「さっきはごめん。」それだけでいいんだ。
なのに、その一言が言えない。
「そう。じゃあ以後気を付けてみるね。」
何で笑ってんだよ?
俺にここまで言われて何で笑ってんだよ?
怒れよ。
いつもみたいに怒れ!
「メイアちゃん・・・・・・?」
「なぁに?ルルスちゃん。」
「あ、いえ、その。どうやって外にでるのかなぁっと・・・・・・思いまして・・・・・・。」
ルルスは手を口に付け、少し首を傾げた後、すぐに困ったように笑った。
無理矢理話を変えたことが誰にでも分かることだった。
メイアの様子が少しおかしいことはだいたいわかっている。
ただ、それを確認し、確信しなかっただけで――…‥。
作「?コーナーです。さて、今回は出す相手がいないので、今四人が行っている世界の住人さんに来ていただきました☆始めまして。」
住人(以下略:住)「はじめまして。ってゆうか、ここなんですか?」
作「いえ、気になさらないで。」
住「いやいや、気にしますよ。」
作「そんなことより、あなた方の住んでいる場所や歴史について教えてほしいんですけど。」
住「そんなこといきなり言われてもなぁ・・・・・・。気づけば仲間が増えてるんですよ。そうやってあそこは大きくなっていく。」
作「一番初めの人は?」
住「あぁ、これ、たまたま知ったんですけどね、もともとは行き倒れそうな人間に変な力が宿ったって言われてます。」
作「その方は!?」
住「知りませんよ。なんせ、死にたいとねがわないかぎり死にませんし、あそこに時の流れもくそもありませんからね。時間は存在しますけど。」
作「死にたいと願うって・・・・・・そんな人いるの?」
住「たまにいますよ。何のために生きてるのか分からない。この世界はつまらない。次の転生を望むっておかしい奴。」
作「なにそれ。」
住「何でも前世の記憶があるとかないとかで。」
作「はぁ、なるほど・・・・・・花は散るから美しいって奴だ。」
住「でも、死って実際なんですかね。死にたいとも思わないし、年もとらないんで、よくわかんないですけど。」
作「そんでメイアに知らないといった奴は多かったわけだ。」
住「まあそういうことです。」
作「じゃ、今回はここでおしまい。ありがとうございました。」
住「ありがとうございました。」
作「え〜、今回のゲストさんは住人さんでした。またのご愛読をお待ちしております。では、また会いましょう!!」
本当にお待ち申し上げます。
ありがとうございました。