45・毒山
世界をかえる力と世界を背負う運命。
この二つが交差するとき、時空は異世界へと異次元へと変貌を遂げる。
悲しき運命より世界を背負う運命は本当は四人ではないこと。
違うまた異世界からのコントローラ。
めぐりめぐる小さな国という歴史。
もし、自分が自分であることを否定されたらどうするか。
気付くはずなき小さき勇者達。
はばたくのは羽か否か、失うのは世界か否か、掴み取るのは夢か否か、力になるのは自分か否か。
すべての選択肢、日常茶飯事にあたりまえのように過ぎていく時間に、誰も疑問をもたない。
時を変える力に加わるもう一つの力。
時を止める能力。
お婆さんは何かを語っていた。
ずっと長いこと。
お婆さんが寝たあとに色々話し合った。
でも四人の気持ちはぐちゃぐちゃなままで、一人は月の方向へ、一人は崩れ去った山の方向へ、二人はその場に腰を下ろしたまま。
行き交う葛藤、気付かぬ思い、気付かれぬ傷。
何もかもがすれ違いへと転じていく。
一方、月の方向へむかったミョンハクはいよいよ嫌な予感を感じていた。
セタがきてからすべてが狂いだした。
三人の時はうそ偽りの笑顔などなかったはずなのに。
今は二人とも偽りの笑顔をかわしている。
偽りなんて守りたくねーよ。
真実じゃなきゃ、守りたくねーよ。なのになぜ守りたいその笑顔を見せてくれない?
嫌な予感がするんだ。
セタとはじめてあったときと同じ感じ。
俺だって男が増えるなら大歓迎だったさ。
でも、あいつじゃダメなんだ。
なのになんであいつなんだよ。
何であいつが仲間なんだ?
嫌な予感。
それは氷の刄より鋭く、冷たく、はかないもの。
俺の居場所がなくなるのではないかということ。
セタが入ったということは、それまでの三人の関係ではいられなくなる。予感・・・・・・。
カサッ。
物音がして、振り替える。
ジャリッ。
「・・・・・・メイア?」
「す、すごいね。これでわかるんだ?」
暗やみから影がのびる。
自分より一回りも二回りも小さい影が。
「あー。まぁな。仲間の足音は聞き分けられる・・・・・・ようになった。それよりおまえ、何でここが?」
「マイクロチップだよ。」
「は?」
「前の世界で埋め込んだマイクロチップ。端末同士で探させたんだ。」
「ここは異世界だろ!使えねぇんじゃねぇの?」
「うん。確かにね。検索情報はでないし、地図もでない。だけど、端末同士なら方角と距離を教えてくれるよ。」
へぇ。と思い、適当にルルスの端末を探すと、確かに方角と距離だけはわかった。
「んで?おまえは何しにここにきた?」
「う、うん。あのねっ。私、最近すごく嫌な子なの。」
はぁ?いきなり何言いだすんだこいつ。
「それでね。セタ君と、ルルスちゃんって仲いいでしょ?」
セタ、セタ、セタ。またセタ。もういい加減にしてくれよ。
おまえまでセタを連呼するな。
「そーだな。」
「それなの。私が嫌な子の理由。」
「はぁ?さっぱり意味分かんねー。」
「あ、あのね。ルルスちゃんとミョンハク君って実際に話さなくても考えてること分かり会ってるでしょ?」
いきなり出た自分の名前に驚く。
「んなことねーよ。」
「あ、あるもんっ。」
俺の隣に座ったメイアは膝を抱えたかと思うと、膝に顎をのっけた。
「あー。まぁ、ある血筋だからな。考え方は似てるのかもな。客観的に物事を見、分析、推理をして考える。」
「私は・・・・・・そんなことはできない。だからね。羨ましいの。ルルスちゃんが・・・・・・内側から仲良くなれる信頼し会っているようなルルスちゃんが羨ましい。私は常に言葉を探して、発していないと人の考えなんて分からないのに・・・・・・それにね。最近モヤモヤするの。」
嫌な予感がする。
「何が?」
口が勝手に動いた。
やめろ。これ以上ききたくない。
「あのね。セタ君と、ルルスちゃんが一緒にいるとね・・・・・・お似合いだなぁって思うと私、すごく嫌な子になっちゃうんだ。ルルスちゃんは何も悪いことしてないのに八つ当たりしちゃうなんて最低だよね・・・・・・この気持ちってなんなのかなぁ。」
なんなのかなぁなんて俺に聞くなよ。
つまりおまえは・・・・・・おまえは無自覚だけど。
セタが。
ヤローが好きなんだろ?それを俺の口から言えってのか?酷だな。
「それは嫌な子なんじゃなくて嫉妬だろ?」
「嫉妬?何で?」
「何でって・・・・・・んなの、奴が好きだからだろ?」
「好・・・・・・き?」
「嫉妬でも八つ当りでもなんでもしとけ!な?気にするこったぁねぇよ。」
するとメイアは俺の顔にそっと振れ、小さくつぶやいた。
「・・・・・・うそ。」
「は?」
「最近みんなそう。うその笑い浮かべてる。私は・・・・・・私の居場所を失ってしまいそで怖かった。今でも怖いよ。ミョンハク君が何を今思ってるのかなんて私はルルスちゃんじゃないから分からない。いつも、一方的な見方しかできないけど。ミョンハク君だって弱いところはあるでしょ?言ってほしいよ。隠さないでほしいよ。隠し事で笑顔を濁らせないで?私が二人のそばに。ううん。今はみんなのそばにいたいと思ったのは偽りなきその笑顔を守りたいと思ったからなんだよ?」
笑顔を守りたい・・・・・・そばにいたい・・・・・・そうだ。
あの時はただ、自分が必要とされてて、そこに自分の居場所があると信じてたんだ。
でも。
「そんなこと、言われてもなぁ・・・・・・。」
「じゃあいいよ。お邪魔しました。」
むくれた表情で立ち上がろうとするメイアを俺は止めた。
「・・・・・・悪い。しばらくこのままでいてくれないか?」
「え?」
メイアは座りなおす。
「そうだね。何も言わなくてもそばに誰かいてくれるだけで安心って時もあるもんね。私が何度もミョンハク君に助けられたように。」
誰か・・・・・・か。
代わりなんているのかな。
いたらいいよな。
何かっこわるいとこ見せてるんだろ、俺。
ホント、かっこわりぃな・・・・・・。
「強がらなくていいよ。」
メイアはそうつぶやいてから鼻歌を歌いだした。
闇にとけるメロディー。
俺はずっと隣でそのメロディーを何度も聞いた。
ただ、それだけ。
それだけでもいいと思えるほど弱くなったただの人間だった。
情けないほどちっぽけな――…‥。
一方セタの方は・・・・・・。
なぜ自分が嫌われるのか分からなかった。
なぜか俺はミョンハクに嫌われるんだろうか。
あいつに何かしたのだろうか。
わからない。
でも、知れば知ろうとする程深みにはまってすれ違って、どんどん仲などなくなっていく。
「セタ・・・・・・そこで何をしているのですか?」
「ルルス・・・・・・か?」
「私がメイアちゃんにみえましたか?」
「いや・・・・・・。」
「考え事・・・・・・ですか。」
「まぁ。」
「お隣に座ってもいいですか?」
「っつても、山の崩れたあとだからな。気を付けろよ。」
そこは、岩肌がむき出しになっていて一歩間違えば肌をあっちこっち切り傷ができてしまう。
「はい。」
・・・・・・何もない空。
明日の今頃、きっと俺たちはここにはもういない。
急速に芽生えだした若葉が足元をくすぐる。
「毒山・・・・・・か。」
「え?」
「あ。や、俺たちの力って毒だったんだなぁって。」
「そうですね。でもここはクリアしましたし、今日はゆっくり休みましょう?」
「そうだな。あー、そういえばおまえ、メイアといたんじゃないのか?」
「えっとですね、メイアちゃんはミョンハクに聞きたいことがあると言っていらっしゃったので・・・・・・。」
「そうか。」
そうして時間は静かに過ぎていく。
さっきとは違い、落ち着いた気持ちでいつのまにか寝入っていた。
朝、ミョンハクとメイア、ルルスとセタの二組は、ゆっくりと目をあける。
適当に身仕度をはじめ、小さなあくびをもらした。
ルルスはかすかな不安と新たな気持ちに感付いて、複雑になり、メイアはミョンハクの別な一面を見て、うれしく思ったし、新たな気持ちを知る。
小さな心ゆれが、大きな波紋を作る。
些細なことがすべてを狂わせていく。
まだ眠っているお婆さんを起こすわけにもいかず、静かに四人は旅立った。
「・・・・・・やっぱりこの世界の住人ではなかったんだねぇ。」
小さくもらしたお婆さんの声は空高く消えた四人のもとへは届かず、空にぽつんと残された。
作「えー今回は紹介するゲストさんはいませんね・・・・・・。なので、今回とても悲しい役を演じてくれたミョンハク君にきていただきました〜!!」
ミ「またかよ?しかもなんだよ悲しい役って!お前がそうしたんだろうか!」
作「西洋の一般的な特徴の短期ですね。まあ落ち着いてくださいよ。そんな短期じゃやっていけませんよ?」
ミ「お前がそうさせてるんだろうが!!」
作「にゃはは。」
ミ「笑ってんじゃねぇよ。」
作「好きなんでしょ?」
ミ「は?」
作「とぼけちゃって。まあでも、メイアはしばらくあなたを見ませんよ。」
ミ「・・・・・・分かってる。あいつは奴がすきなんだから。」
作「あら。そう?しかし、この記憶、今以上の泥沼がまってると思うと不思議ね。今はただの旅物語で、何もないまま進展して無事ハッピーエンドで終わりそうなのに。」
ミ「ハッピーエンドォ?」
作「だってこのまま行ったら別にバットエンドじゃなさそうでしょ?」
ミ「ふーん。」
作「っとまぁ、怪しい言葉が飛び交ってますので今日はここでおしまいにします。次回はなんと!?見てのお楽しみ☆」
というわけで終わりました。
ここも読者様からの質問などがあればうるおうのでしょうが、そんな生意気なことは言ってはいけませんね!!さぁ気を取り直して、読んでいただいてありがとうございます!
今の私にはアクセス数だけが頼りです・・・・・・。
本当にありがとうございました。