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記憶  作者: 半月
37/120

37・仲間割れ

新しい仲間、セタがきてから三人の関係は急激にギクシャクしはじめた。

つまりそれは、自分達の故郷の絶望を意味しているのだ。

このまま仲間割れするようであれば三人の故郷は失われる。

誰でも仲良くなれてしまうという羨ましさからくる嫉妬心。

直感力にすぐれ、自分だけが足を引っ張っているのではないかという、焦りや不安。

どう接したらいいのか、自分の考えをうまく伝えられない、もどかしさやすれ違い。

そのすべてが入り交じる。

心のすべてが交ざりあい、入り組み、すれ違う。

トゥルハスについた後もあまりしゃべらずに歩き回る。

カードの欠けらをまた見つけるが、白と赤というまったく別の色のカードだった。

メイアとミョンハクは徐々に孤立していく。

話したいのにプライドが邪魔をし、葛藤するメイア。

話したくても何を言えばいいのかわからないミョンハク。

自分の気持ちがまだちゃんと見えていなく、うやむやな気持ちのままのルルス。

なにもかもが知らずに成長していく感情。

そんな四人を気遣ってか、モカはとっておきの場所へつれていってくれると言った。

それは、国。

古き建築物が数多く存在し、女王。ヘルテマ・モテーラの言葉が数多く残される首都。

ラ・フェレナ。

トゥルハスの隣の国で、当時はトゥルハスはラ・フェレナの支配下にあった。

当時、ラ・フェレナの市民の大反乱が起こり、市民制度が見なおされ、現在国王はいない。

そんなフェレナからトゥルハスは急激な貿易盛ん国へと変貌をとげ、独立。

現在、トゥルハスは流行発進地となったが、フェレナは、流行とは無縁のような国へとかわり、古代建築物は当時と同じ姿のままその場に残されている。

「到着しました。」

そこに広がっていたのは首都、タワー。行き交う人々、そして草原。

「わぁっ。」

ルルスが感動の息をもらす。

モカは草原へ飛び出しくるりと一回転をとげる。

「実はね。ヘルテマ・モテーラはとても好きな人物の一人なんです。」

「へぇ。そうなんですか。」

「ヘルテマは最終的に死刑判決を下され、怒り狂った市民たちによってギロチンにかけられて死んでしまいますが・・・・・・彼女は濡れ衣で殺されてしまったのですよ。彼女は反乱軍に火をつけるための油として利用されてしまうのです。でも・・・・・・彼女は本当は聡明な御方だったのですよ。」

「そうですか。」

「彼女は何を思い、市民にこの広場を貸し出し、何を思い、この広場で夜、舞踏会で踊ったのでしょうね。・・・・・・悲劇のヒロインと名を馳せた、ヘルテマ・モテーラ女王・・・・・・。」

タタタ・・・・・・っと広場を走りだすモカ。

そこには普段の顔があった。

仕事ではないごくありふれているはずの15歳の少女の素顔。

それでもギクシャクした関係は治らない。

「こんなのヤダ・・・・・・。」

かすかに洩らしたメイアの声が三人の耳に届き、三人はふりかえる。

「せっかくモカさんがきれいなところ教えてくれたんだよ?ギクシャクしたまんまなんてやだよ。楽しくないよ。なんで?私はいけない子?どうしてそうやって遠ざかってくの?」

「メイア・・・・・・ちゃん。」

あなたが羨ましいんですよ。

その一言が言いだせないルルス。

言葉が見つからないミョンハク。

何が起こっているかよく分からないセタ。

「もぅ・・・・・・ぃぃ。」

走りだしたメイア。

「メイアッ!」

追い掛けたのはミョンハクで、セタも追い掛けようとしたがルルスの言葉に引き止められる。

「何で・・・・・・メイアちゃんばっかりああなんでしょうね。」

「は?」

「私は・・・・・・メイアちゃんが羨ましいんですよ。ミョンハクもセタ、あなたの心も。何より私の心までメイアちゃんがもっていってしまう。今、あなたもミョンハクもメイアちゃんを追い掛けようとしたでしょう?どうしていいかわからなくて残されるのはいつも私なんです。たとえその残された場所で私が泣いたとしても、みんなメイアちゃんの方へ行ってしまって、私は一人なんです。このまま孤立していくのかと思うと恐い。だからあなたに一生懸命話し掛けて一生懸命笑ってました。利用してごめんなさい・・・・・・今のはただの独り言ですからどうぞ行ってください。」

寂しそうに笑うルルス。

「おまえ・・・・・・メイアのこと・・・・・・。」

「好きですよ。だからこそ羨ましくなってしまう。ほら。早く行かないとメイアちゃんを見失ってしまいますよ。」

「・・・・・・行かねぇよ。」

速答した答えはルルスの予想に反するものだった。

「え?」

「あいつにはミョンハクが行ったんだろ?」

その言葉がうれしくてルルスは初めて人前で涙を流した。

「お、おい。泣くなよ。」

「すみませ・・・・・・。」

止めようとしてもとまってはくれない涙。

人前で泣いたことなかったのに・・・・・・涙が止まりません。

ずっと一人でいることになれて、自分が我慢すればいいんだって思っていましたからいつかは泣くことさえ忘れていたというのに・・・・・・。

うれしかったんです。

初めて自分が認められた気がして・・・・・・とても。

だからね。

セタが行かないって言ってくれたとき、私は馬鹿みたいに意地を張ってたんだなって思いました。

ただ、自分が認められたそう思ったら。

今度は涙がとまらなくなってしまいました。

今まで泣けなかった・・・・・・強がっていた分の涙なのでしょうか。

小さい頃から一人家の隙間でこっそりと泣いてきた。

だからね?誰も私が泣いてるなんて気付かなかったんです。

セタ・・・・・・ありがとう・・・・・・本当の私を見つけてくれて。

「知ってるか?」

泣き止まないルルスの隣でセタはメイアのことを話しだした。

「あいつ、メイアもおまえを羨ましがってたんだぞ?」

ルルスは顔を上げ、え?という顔をする。

「あーぁー。目なんか強くこすりすぎて赤くなってんじゃん。」

「お恥ずかしいです・・・・・・人前で泣いたことなんてなかったのに・・・・・・。」

「あれだな。なんかおまえとミョンハクは暗黙の了解があっるのに自分はコミュニケーションをとらなきゃ考えは分からなくて、そんな自分の考えばっか言ってみんなの足引っ張ったのか、って。」

「そんなことがあったんですか・・・・・・。」

一方やっとメイアに追い付いたミョンハクはメイアの愚痴をきいていた。

みんな孤立したくないと思って擦れ違ってくことに気付いてはいない。

「一人はヤダよ・・・・・・。」

「一人じゃねえよ!おまえは・・・・・・一人じゃねえ!」

いきなりメイアはミョンハクのむなぐらをつかんだのかと思うとワァワァ泣きだした。

「私はいけなかったの?考えがみんなとあまりにも違うから!?なんであんなふうにギクシャクした感じになっちゃうの!?わかってる。ホントはわかってるよ!自分の考えがみんなとは違いすぎることも!自分の考えが甘いことも!でもっ!それでも話さなきゃ分かんないんだもん!二人みたいに見えない何かでなんかつながってないんだもん!自分一人が勘違いをして自分一人だけ騒いで!でも、そうしなきゃ二人の考え分からないんだもん!」

泣きながらすべてをミョンハクの胸でぶちまける。

ミョンハクの手がためらいがちにメイアの頭のうえにのる。

「落ち着けよ。俺だって分かんねぇよ。誰が何考えてるかなんて。わかればそいつに気の聞いたことの一つや二つ言えるんだろうけどさ・・・・・・。」

「私はっ。ミョンハク君とルルスちゃんの関係がずっと羨ましかった。考えが通じあってて、後ろからみるとお似合いだなって。でも、そうやって私は私だけ孤立していっちゃうのかなって考えると恐くて不安でやりきれなくなるっ。失いたくない。でも。やりきれない!」

「落ち着けって。そりゃサントラー家とセイ家は平和を結ぶために同じ条約を結んだからな。考え方とかは多少は似てるかもしれないけど・・・・・・おまえは一人じゃないし孤立することもねぇよ。俺がいるだろ。な?」

「・・・・・・え?」

ゆっくりメイアが顔を上げるとミョンハクは真っ赤になって顔を背けた。

なんか俺今、さらっと恥ずかしいこといったぁぁ!?

「・・・・・・な、なんでもねぇよ。」

「・・・・・・ありがとう。ミョンハク君。私、悲観的になりすぎてたね。」

「そ、そうかよ。」

それでもメイアはしばらく離れない。

「お、おい。離せよ。」

「もう少しこのまま居ちゃダメ・・・・・・?」

メイアの肩はまだかすかに震えていた。

たぶん、まだ恐いのだ。

「しかたねぇなぁ・・・・・・今回だけだぞ。」

ふっとミョンハクは笑った。

自分より大きい存在が自分のそばにいてくれる。

そう思ったら悲しくなんかなくなったメイアだったが・・・・・・。

なんだろう。いやな予感がする。

得るとか失うとかそんなんじゃなくて、得体が知れなくてもっとただ・・・・・・純粋に恐い。

こんなにも傍にいるのに。全然近くに居ない気がする。

恐くなってミョンハクに抱きつく。

「ちょっ、おいこら!」

「行かないで!・・・・・・どこにも行かないで・・・・・・。」

目をただぎゅっと閉じてその存在は今自分の手のなかにあるのにどうしてこんな遠く感じるんだろう。

ふゎっとミョンハクに包まれたメイア。

それでも恐怖感は拭えない。

ミョンハク君の手や体温は暖かいのになんでだろう。

同時に冷たく感じるの。

「どこにも行かないって約束してくれる?」

「ああ。」

「絶対の絶対に?」

「ああ。」

「絶対そばにいてくれる?」

「ああ。」

なんでこんなに恐いんだろう。

ミョンハク君の言葉がかすかに信じられない。

恐怖が勝る。

「恐いか?」

ゆっくり頷く。

「大丈夫だから落ち着けよ。な?」

「うん・・・・・・。」

メイアが顔を上げた瞬間、後ろからわけの分からないものが襲い掛かってきた。

間一髪でミョンハクが切り裂いたそれは、水。

水が何かの形を帯びて、中には濡れていないカード。

半分のものがそれぞれ二枚。

カードを持ち合わせていた二人は記憶を取り戻す。

大切なものが欠けた記憶を・・・・・・。

「・・・・・・これでおそらく記憶は67。新たな仲間は何枚集めるのかなぞだな。」

「ちゃんと数えてたんだね・・・・・・。」

「まぁな。」

二人は四人に。四人は五人になり、最後の夜をすごす。

「もうっ。みんなばらばらだから焦ったし・・・・・・。にしてもその若さゆえか、美貌のカナリアと歌われたヘルテマ・モテーラ女王は最高で!それは同時に世界で最も悲劇的なヒロインともなるのですけどね。」

瞳を輝かせながらヘルテマやラ・フェレナ、またはラ・フェレナの支配下にあったトゥルハスやミナカの歴史を語るモカ。

モカの話に耳を傾けていると自然とみな眠りについてしまった。

朝がきて、四人はモカに別れを告げる。

「今までありがとうございました。」

「助かったよありがとう!」

「助かった。うん。」

「あぁ、また無茶すんなよ?」

「・・・・・・皆さん、もうどこかに旅立たれるんですか?バスではいけないんですか?」

「・・・・・・バスじゃ無理だよ・・・・・・。」

「・・・・・・そう・・・・・・ですか・・・・・・そうですよね。変なこといってごめんなさい。」

「がんばってくださいね。」

「はい。みなさんと離れると思うと少し名残惜しいですけど。」

にこりと笑ったモカ。

モカは前を見つめている。

ちゃんと・・・・・・。

昼にはモカには会えないのでもう朝の時点でお別れなのだ。

名残惜しさを感じる暇もなく時間はすぎ、四人は強制的にまた別の異世界にたびだった。


今回はミョンハク君=西洋魔法の歴史をここに書きたいと思います。

たぶんだびたびこれからも歴史が出てくる(予定)なので歴史が何度か出てきて困ることでしょう。

どこで歴史を書けばいいかと悩んでいましたが、ここに書かせていただきます。

時は昔。

一度体力型魔法と推理力型魔法とで集まったことがあった。

体力型は西に集まったため、西洋。

推理力型は東に集まったため東洋。

なんとも分かりやすい名前がつけられた。

そうして同じもの同士が集い会えばその魔法の特徴や文化、そうった個性というものが発展していった。

そうして西洋と東洋ははじめのうちは仲良くやっていたが、同じ国、町でも、魔法の文化が違えば考えも違ってくる。

そうしたことから些細な揉め事が多発するようになり、西洋が東洋に非難の言葉を浴びせたことから事態は悪化傾向にあった。

きっかけはただの言い争いでも、事態は深刻化。

ついに戦争のような真似事が始まるようになりついには長同士の争いに発展。

そんな中、西洋側は東洋側の長の血を引く、時期に長になるであろう息子の寝首をかいた。

そして長同士の争いは最上級と呼ばれる危険極まりない巨大なモンスター同士の争いとなる。

が、たくさんの犠牲者が出るなか、戦争は何も生み出しはしないと平和条約が結ばれることになった。

そうして出来たのが西東洋魔法であり、平和条約の印でも在る杯である。

杯はモンスターを再び呼び覚まさないために存在し、西洋の杯は西洋が呼び出したモンスターの牙から出来たものだという――・・・・・。

これは今はもう知られていない一般閲覧禁止書物の中の歴史・・・・・・。

・・・・・・ということで、はい。今回は長くてすみませんでした。次回はルルス=東洋側の歴史です。

向こうは『魔女事件』があるのでもっと長くなると思いますが、ここまで読んでくださった方に感謝いたします。

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