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記憶  作者: 半月
36/120

36・長旅

バスを降りるとき、モカは四人に向かってささやいた。

「皆さんはあと一時間後には戻ってきてくださいね。」

町でグミやガムなどを数個売り払い、そのお金で衣服を隠すマントなどを買った。

そしてバスに戻ると雑用が待っていた。

「お帰りなさい。早かったですね。次の目的地はトゥルハスとミナカ。どちらを最初にしますか?」

「トゥルハスとミナカでしたらどちらのほうがより近いのでしょうか?」

「ミナカ・・・・・・ですかね。一度ミナカを終着駅にして、さらに最終着駅をトゥルハスにしましょうか。また一週間くらいかかりますが、車内のお掃除はお願いしますね。」

満面の笑みでモカは微笑む。

『ハイ・・・・・・。』

ありえないことに四人の声がそろった。

しっかり車内は掃除され、水が補給されると、バスはミナカへ。

ミナカと言うと、いろいろな客が乗ってくる。

商売客、観光客、貿易など、仕事もろもろの客が乗ってくるようになる。

四人は一箇所に集まると、周りの話しに聞き耳を立てていた。

「ミナカに行くにあたり、あなたはミナカと何を交渉するのですか?」

「そうですね。僕のところは貿易といったところでしょうか・・・・・・あなたは?」

「あぁ、私はミナカの力の源を探しに・・・・・・だからトゥルハスにも行こうかと思っていますよ。」

「では、スパイですな!!」

男の人たちは声をあわせ、笑う。

ルルスがこそっと話しをする。

「どうやらミナカとトゥルハスは本当に貿易盛んでその力にあやかりたいとする国や人は多いようですね。」

「あぁ、たしかにな。」

セタが同意する。

また数日をバスの上ですごし、やっとミナカについた。

客たちの一番最後に四人はミナカに降り立つ。

一番初めはミョンハク。次がルルス。その次がセタ。そして最後がメイア。

地に降り立ったとたんにメイアはバランスを崩し、よろけた。

「あっ!」

うそ!このままじゃセタ君に倒れかかっちゃうよ!!セタ君怖いのに・・・・・・いやだ!!ぎゅっと目をつぶった瞬間。

「メイア!!」

ミョンハクの声とともにガシッとメイアは体を捕まえられ、支えられていた。

メイアは恐る恐る目をあける。

「え・・・・・・。」

そこにはメイアの想像を絶する世界があった。

そこにあったのは・・・・・・。

メイアを支えるセタと、心配そうなルルス。

そして、手を伸ばしかけて後ろを向いてしまったミョンハクの姿だった。

「大丈夫か?」

セタに心配され、さらに驚くメイア。

「え。あ、うん。ありがとう・・・・・・。」

体勢を立て直す。

「酔ったのか?」

「あ。ううん。」

「変な顔してんな。何考えてる。」

「え。ちょっと失礼じゃないっ!?でも、まさかこんなにやさしいとは思わなかった。」

「って、おまえも失礼だな!」

するとお互いに顔をあわせ、笑いだした。

すっかり打ち解けた頃、少し微妙な気持ちでいたのがまた二人。

じっと見ていたルルスは・・・・・・。

メイアちゃんは誰にでもすぐ親しんでしまうのですね。

羨ましいです。

私はオーラが見えなければセタさんとは仲良くなれなかったのに。

ミョンハクとも今一番仲がよろしいのはメイアちゃんでした。

私、変です。

メイアちゃんのこと大好きなのに何故こんなもやもやするのでしょう。

何故、こんな気持ちになるのでしょう?

一方後ろを向いたミョンハクはこぶしを握り締め、ただひたすらに黙っていた。

「お待たせしました。えーっと、どこから案内しましょうか?」

モカがバスからおりてくる。

「あ、そうですね。では一番最初に変化が起き始めたところからお願いできますか?」

「・・・・・・あ。の。何かありましたか?」

「いえ?」

「そう、ですか。」

モカが説明するのもうわの空で聞き逃していく。

「ここが歴史上貿易が盛んになった都市です。」

「へぇっ。じゃあ、あれなんだ。ここが始まりの地なんだ。」

メイアがモカと話しだす。

「そうですよ。」

「カードとか何か特徴はないの?」

「さぁ。歴史にはいきなり盛え始めた・・・・・・しかありませんから。よくわかりませんけど。」

「そっかぁっ。ざんねんっ。あ。あれ。なんだろう。」

メイアが何かを見つけたらしく、走りだした。

「あ。おいこら!危ないだろ!」

心配したセタがあとを追う。

三人はその場に気まずそうに残る。

メイアが見つけたものは紙切れ。

しかもカードくらいの大きさを半分にしたようなものだった。

メイアはそれをつかむ。

「危ないだろ?単独行動は。」

「セタ・・・・・・君。」

「お。ここきれいだな。町並みが。」

「本当だぁっ。」

「さ、もう行こうぜ。」

「ま。まだもう少しここにいたいな。」

「わがままだな。」

そう言ってセタが笑う。

「なんかね。楽しいの。セタ君ってこんな人間なんだーとか、変だけど。懐かしい感じ。たまにね。無償に寂しくなるの。ルルスちゃんやミョンハク君は見えない何かにつながってる感じで・・・・・・暗黙の了解があって。私はコミュニケーションとらなきゃわかりあえなくて、どんどんすれ違っちゃうんだ。だから。私だけこうやって孤立していくのかなって考えると、やっていけなくなる。」

ふっとそらしたメイアの顔はルルスと似ていてセタは変な奴らと思った。

お互いがお互いを羨ましがるなんて、一人旅をしてきたセタにはないことだったから。

「ようは・・・・・・馬鹿なんだな。」

「はぁっ!?何それぇっ!ひどいっ。・・・・・・私はね。セタ君とあえてうれしかった。見えない何かでつながってる中にいるのは、少し・・・・・・辛くて。でも、セタ君は迷惑だった?」

「別に。うるさいのはごめんだけど。こーゆーのもありかなって思ってる。」

風が吹いて、ことばが風にかき消されそうになりながらメイアの耳に届く。

「そう・・・・・・よかった。」

しばらく沈黙が続いたのち、セタが話しだす。

「そろそろ戻ろう。」

「そうだね。」

もときた一本道を走りぬけ、曲がり角につくとルルスとミョンハク、モカの姿があった。

「窓を開きましょう。朝がきて小鳥が鳴き、泉が輝けばただせせらぎにあわせて時が流れる。鳥が空を舞えば風や葉も踊りだし、風がみなをまいあげて、私の夢までも。時は流れ泉は輝く空は青く澄み渡り。碧の高原、走りだした。夢まで高く舞い上がれ。」

モカが口ずさんでいた歌。

どうやら異国の歌らしい。

「たっだいまぁっ。」

ぎゅっとルルスに抱きついたメイア。

「きゃあっ!も、メイアちゃんですか!?びっくりしちゃうじゃないですか!」

「えへへ〜。」

「楽しそうですね。何かいいことでもありましたか?」

「うんっ!見てみて!カード・・・・・・の切れ端なんだけど。ゲット!」

「そうですか。」

にこりとルルスは笑ったが、直感の鋭いメイアは何かを悟った。

「嘘・・・・・・。」

「なんですか?」

「なんでもないよ。」

メイアは守りたいと思った笑顔が今のは偽物だと思った。

何でそんな乾いた笑いをするの?

何で愛想笑いをするの?

もしかして、守りたいと願ってるのに私が壊していってるの?

でも・・・・・・知らないほうがいいことだってあるかもしれない。

優しさから来る嘘だってあるかもしれないもんね。

信じなきゃダメだよね。ミョンハク君みたいに自分の気持ち一方的に押しつけちゃダメだよね。

そう決めてメイアは押し黙ることに決めた。

モカとルルスは盛り上がり、そんな話をセタにふる。

そんなルルスを後ろから眺めていたメイア。

知らなかったな・・・・・・ルルスちゃんもあんなふうにはしゃぐんだ。

いつも冷静なのかと思ってた。

人を傷つけないようにいつもことばを選んで、あまり自分の考えは口にしないルルスちゃん・・・・・・そんな優しさや、そんな優しさから来る嘘が、逆に人をこんな風に傷つけるんだね。

一緒に旅をするようになって私、ルルスちゃんのこと、わかった気になってた。

でもわかってなかったんだね。

ミョンハク君とかもそうなのかもしれない。

知った気になってるだけで・・・・・・ホントは何も・・・・・・。

「おい。」

「はぃいっ!」

いきなりミョンハクに後ろから声をかけられ、おどろく。

「なっ。驚いてんじゃねーよ。」

「あっ。ミョンハク君か・・・・・・驚いた。ほんと、びっくりした・・・・・・。」

「元気ねぇじゃん。」

「んなこと・・・・・・ないし。」

「くらい顔してんじゃねーよ。」

「し、してないもん。」

「嘘つけ。」

「んじゃ笑えよ馬鹿。」

「一日中笑ってるなんて変人じゃんっ!」

「あれ?違ったっけ?」

「違うもんっ!」

「いつも通りになったな。」

「え・・・・・・?」

「なんでもねぇよ。」

「なにそれぇ・・・・・・。」

ふっと笑ったミョンハクは今まで見たことがなくて、やっぱり胸がズキッとくるメイアだった。

やっぱり知ってるつもり・・・・・・だったんだ。と。

「何落ち込んでんだよ。」

「別にっ!」

元気よく顔を背けてみたがあまり効果はなかったようだ。

「嘘つけ。ま、いーや。一人にしろってんならはなれるよ。じゃーな。」

メイアはとっさにミョンハクの服の端をつかむ。

ぐいっとひっぱられたミョンハクは少しばかり不機嫌顔。

「なんだよ。」

「・・・・・・嘘・・・・・・だから、行かないで・・・・・・。」

俯きながらメイアは言い切った。

傍にいてほしかった。孤独が辛かった。

一人になるとついつい考えてしまう。

自分が生きている意味。守りたいものの優しさや傷。幼い頃からの疫病神と呼ばれたトラウマ。

古傷はまだまだ思い出せない部分が多いはずなのにあふれ帰ってくる。

「最初っからそう言え。馬鹿。」

黙ったままうつむいたメイアにミョンハクは苦笑をする。

「行くぞ。」

メイアがうなずき、ゆっくりと二人は歩きだす。

「・・・・・・何も・・・・・・きかないの?」

「別に。話したくないなら無理しなきゃいい。」

「・・・・・・ごめんね。」

「何が?」

「いつも、わがままで・・・・・・。」

「そんなんみんな承知のうえだろ?」

「自分が足を引っ張ってるんじゃないかって。思うの・・・・・・さっきルルスちゃんも嘘笑いしてた。きっと・・・・・・優しさからきた嘘・・・・・・。」

「あんなぁ。考えすぎだろ。」

「じゃあどうして私の嘘をミョンハク君は気付いたの?私だって一人でボーっとするときくらいあるよ。」

「・・・・・・さぁな。」

「なにそれぇ・・・・・・わかんないし・・・・・・。」

一分くらいの間が開く会話は内容が途切れる事無くゆっくりと続く。

一方ミョンハクはまわりの目線が気になっていた。メイアが袖を引っ張るため物珍しいとミナカの人たちはミョンハクとメイアを代わる代わる見るのだ。

「・・・・・・あのさ、袖引っ張んのやめてくんない?」

「私はどうすればいいの?」

するとミョンハクは自分の体を見渡し、手を見つめ、ため息を吐くと、手を差し出した。

「ほら。」

「ため息ついたぁあ・・・・・・。」

もう、この世のおわりだぁぁといいかねない口調で話すのでミョンハクはまたため息をつきそうになる。

「いいから!ほらっ!」

強引にメイアの手を取り、進んでいく。

このままでは案内人としてとても重要なモカたちを見失いかねないからだ。

ミョンハク本人はとくに強く引っ張るわけでもなくわりと普通のつもりだったのだが、メイアには少しばかり力が強かったらしく、今までが嘘のように前を向いて小走りのようについていった。

身体ごと引っ張られているのだ。

メイアとミョンハクの身長差約10センチあまり。少々足の長さも違うから歩く歩幅もあわせにくかったのかもしれない。

「わっ。」

つまずきそうになるたび、足を踏みだす。そんなくりかえしだった。

「追い付いたな。」

そこはもうすでにバスの前。

「疲れた・・・・・・。」

へなっとメイアが折れると、ミョンハクはあわてて手を離し、バスに乗り込んだ。

メイアも乗り込むが、席はすでにミョンハクの隣しか空いてはいなかった。

となりに座る。

「さっきはありがとう・・・・・・。」

「別に。」

「ミョンハク君が私に気付いてくれるなんて思わなかった。」

「そっ。」

あまりにもそっけない態度でがんがん日差しが差し込む窓からまったく顔をそらさないミョンハクをのぞくと・・・・・・。

「ミョンハク君・・・・・・顔真っ赤。」

「うるせぇ。」

投げ遣りな言葉。

「もしかして?手を貸してくれてたときのこと思い出して照れてるとか!?」

「ねるっ。」

「あぅ。・・・・・・寝ちゃやだ・・・・・・。」

「わがまま。」

「承知のうえでしょう?」

「開き直るな。」

「開き直れないから寝てほしくないんだよ。」

「はぁ?」

「・・・・・・一人になると。いろいろ考えちゃうから・・・・・・。」

「・・・・・・へぇ。」

「でも、寝ていいよ?睡眠は大事だもんね!私が我慢すればそれでいいんだよねっ。」

「ばぁか。起きてるよ。我慢で怒ったのはおまえだろ?」

時はさかのぼり、光と闇の接戦のとき、つけた傷を放置させたことにより悪化。

それを怒ったのはメイアだった。

その時にルルスがうらやましいとも思った。

冷静でいられるルルスはいつもミョンハクと見えない何かでつながって見えて孤立したくない、失いたくない。よりいっそう強く願った。

「ありがとう・・・・・・照れ屋さん。」

そのままメイアは眠りについてしまったため、あとの記憶はなかった。

「んぁっ。」

メイアが目を覚ましたとき、ミョンハクは窓辺に肘を掛け、頬杖をついて寝ていた。

実は気が気じゃなかったミョンハクはいきなりメイアが起きたため、狸寝入りしたのだ。

「あれ。ミョンハク君もねちゃったんだ。」

メイアはずっとミョンハクの肩を枕にしていたのだが、本人はまだ寝呆けているため気付かない。

手掛けのところで頬杖をつき、寝ようとしたが、高さがあわないので腰や首が痛くなるので寝れない。

反対側でも試してみるが、頬杖では寝れない。

「あれ?私、どうやって寝てたんだろ。」

するとバスがいきなりまがったのでミョンハクの肩にメイアの頭が乗る。

するとミョンハクはいきなり目を覚ました。

「なんだっ!?」

モカの放送が流れ、バスは止まり、その拍子にメイアは元に戻る。

「すみません。連絡ミスがあったようです。」

「連絡ミス?」

「ここは普段あまりバスが通らない場所なのでレールではなく、無線によって操られます。無線も通じないような場所は主導に切り替えて私が運転するのですが・・・・・・。」

しばらくの間が開く。

みな、沈黙・・・・・・。

「ミスにより無線が途切れてしまったため、ただ今より私の主導運転と切り替えさせていただきます。」

はっきりとモカは言い切った。

「あ。ミョンハク君。」

「な、なんだ。」

「肩かしてくれてたんだね。ありがとう。でも、私よだれとか垂らしてなかった?大丈夫?」

「おまっ。あー。もー、いーや。おまえといると疲れる。」

「ひどっ。」

苦笑するメイア。

「・・・・・・一緒にいる。考えが違う。それだけで疲れるな。」

「・・・・・・そー・・・・・・だよね。ルルスちゃんやミョンハク君は、暗黙の了解みたいなのがあるけど、私はいつも考え押しつけてばっかりだもんね!」

「なっ。」

何言ってんだよ。と言いかけてとまった理由はメイアの顔に苦痛という文字がうかんで見えたから。

今までにない、見せたことのない顔。

ヘラヘラしていたメイアには似合わないくらい憎しみや嫉妬、色々なものが交ざりあい、泣きそうな顔。

「・・・・・・ごめんね。私なんかが仲間でっ。」

顔を背けたメイアに何を言ったらいいのかわからなくてのばした手を引っ込めるミョンハク。

「・・・・・・馬鹿。」

メイアが一言つぶやいた言葉。


え・・・・・・すみません。

しばらく?コーナーお休みさせていただきます。

一気にいろんなキャラが出てきすぎて、いろんなキャラの性格など細かい部分まで作成することが軽く不可能となりました。

すぐ?コーナー復活させますので少々お待ちください・・・・・・。

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