35・長い時間
丸々一日が過ぎた頃、バスは人がいる場所でとまった。
それは一人の男性で、顔が良く見えないが若い。
その人が顔を上げると四人は一斉に声をあげた。
『あっ!!』
しかも、お互いを指差しながら。
「なぜお前たちが、いや、人違いか!?」
「んなわけあるか!お互いの面識なしに人のこと指差しながら驚くのか!?お前は!」
また旅人に対し、とてつもなく不機嫌な声を返す。
「ミョンハク!!いい加減になさい!そういえば、あなたにはまだ名前を聞いてはいませんでしたね。」
「断るっ!お前たちは敵だ!!」
「敵ではなかった・・・・・・としたら?」
顔を背ける旅人に対し、ルルスはにこりと微笑む。
「まずそっちから名乗れよ・・・・・・。」
かすかに敵対心がなくなる。
「私はルルス。彼女がメイアちゃん彼はミョンハクです。あなたは?」
少し間が開いた後、
「・・・・・・セタ。」
「そうですか。それではあなたの探していたものはこれでしょう?」
服のスカート部分からお札らしきものが取り出された。
今までどこにしまわれていたのかは謎である。
「な・・・・・・何故お前たちが持っている!?」
「探しているもの同士の波長が似ていただけですよ。私たちが探しているのもカードですし。」
セタはルルスからお札を受け取る。
「探しているものや、異世界、回っていく国の順番。共通点が増えましたね。それでも一緒に旅はしたくない・・・・・・と・・・・・・?」
「わかった・・・・・・そこまでいうならそいつを我慢すりゃいいんだろ。」
セタが指差したのはミョンハク。
「なっ!!」
今にも胸倉をつかみかかりそうな衝動を抑えてミョンハクは席に座りなおした。
「バスが発車しますのでご注意ください。また、お立ちのお客様は座席にお座りになるか、手すりにおつかまりください。」
モカの声が車内に響き、セタは席に着く。
席はメイアの後ろ。
「セタ君、私、メイア。よろしくね。」
にゅっと背もたれから顔を覗かせる。
「あぁ。」
あまりにそっけない態度に少しふてくされるメイア。
夜になって「砂嵐の関係上・・・・・・」という車内放送がはいり、バスが止まる。
そして昨夜通り眠りにつこうとすると。
車体に何かが当たり、バスが揺れた。
モカがあわててアナウンスを入れる。
「これから車内の電気をすべてストップさせていただきます皆様、動かぬようお願いいたしま。す。」
ブチッとすべての機械がストップした音がする。
ドォン!!
ガガガガガッ。
ところが車内は激しく揺れるばかり。
「大体いつもは気をつけるんですが、昨日は何もなかったので気が緩んでいました。ココ最近毎日のようにこうして暴走族が現れて奇襲されるんです。」
モカが四人のところに向かいながら話した。
ドォン!!
そしてひどい揺れがきて、モカはバランスを崩した。
「あっ!」
ドサッ!!
モカは床に倒れてはいなかった。
モカを支えていたのは・・・・・・座っていたはずのミョンハクだった。
「え?」
「大丈夫か?」
「あ、え?はい。」
予想もしなかったことにモカはポカンとしながら立っているモカをよそにミョンハクは座りなおした。
「あんたも動きまわらないほうがいい。危ないだろ?」
ニッとミョンハクが笑う。
「で、でも!お客さんの安全を!!」
第一に考え、確保しないと!といいかけたとたん、モカは座らされていた。
「俺たちより年下なんだし?無理しちゃ駄目でしょ。」
するとメイアが乗り出してきた。
「へぇ・・・・・・ミョンハク君ってそういう子が好みなのかぁ・・・・・・。」
「はぁ!?」
「年下って・・・・・・もうすぐ16ですっ。」
「うーんそれでも俺たちより一つ下。だから女の子は無理しちゃ駄目でしょ。」
「ミョンハク君なんかやさし〜。なんで私には女の子扱いしてくれないのかなぁ・・・・・・そりゃさ、ルルスちゃんとかみたいな女の子って感じではないかもしれないけどさ・・・・・・。」
いつの間にか奇襲は止み、モカが電源を入れたのか入れなかったのか。
そのまま五人で昼まで寝過ごしてしまった。
「んっ。」
一番初めに起きたのはルルス。
その次にモカその他三人はまだ目覚める様子がなく、二人はしばらく話し合った。
「そういえばこのバスはどのように動いていらっしゃるんですか?」
運転席らしきところには誰もいないのにバスだけは動いていた。
「あぁ、これは無人車で、上の線路から信号が送られて進むようになっているんです。ですが、現地のことはよくわからないでしょう?だから電源を落としたり、バスを止めたりする作業は私自身の肉眼で行うのです。」
「へぇ・・・・・・大変ですね。」
「あ!!あぁぁぁっ!寝過ごしたせいでお客様見逃したかも!!」
頭を抱え、ぶつぶつつぶやくモカをルルスが元気付ける。
「大丈夫ですよ。逃していたとしても、それだけ反省していらっしゃったらお客さんも許してくれるはずですよ。」
「うーんっ・・・・・・。」
いきなりメイアが起き出し、モカの隣、窓際のミョンハクが起きる気配なし。
が、メイアの後ろ、セタにメイアの手があたり、セタはびっくりして起きた。
「あ、ごめん。」
まだ欠伸が残る間抜けな声でセタに誤る。
「・・・・・・別に。」
「意外・・・・・・絶対怒ると思った。」
「おいおい・・・・・・どんだけ俺は怒りっぽいんだよ?」
苦笑するセタ。
「笑った!」
「笑うよ!人間だからな!」
いちいち驚くメイアに少々つかれ気味のセタ。
それを見ながらクスクスと笑う少女が二人。
それでもなお眠り続ける青年一人。
するとメイアは何をたくらんだのかニヤッと笑った。
「ミョンハク君を起こしちゃえ!!」
そしてミョンハクの席の後ろ座席に立つと、ミョンハクの顔を両手で挟んだ瞬間。
「うお!?」
いきなりミョンハクが目覚め、ゴンッと鈍い音が車内に広がる。
『っ〜〜〜〜〜!!?』
二つ同時に聞こえたその声はミョンハクとメイアのものだった。
お互いに額を押さえ、とても痛がっている。
車内一瞬騒然。後、大爆笑。
超なみだ目になったメイアは額を窓ガラスにくっつけていた。
「仕事・・・・・・しなきゃ・・・・・・。」
まだ笑いが取れないモカは息を切らしながら席を立ち上がり、先頭へ向かった。
なんとなくメイアは立ち上がり、ミョンハクに呼び止められミョンハクの隣に座る。
「てめぇ!!何すんだ!こら!」
「うう・・・・・・ちょっと変わった起こし方で起こしてあげようと思ったのに、大失敗。まさかこっちも痛くなるなんて・・・・・・。」
「こら!こっちもってなんだ!“も”って!」
「なんでもないもん。」
「たぁっく。お前は落ち着きないな。」
「な。うるさぁい。」
「ほらほらぁ〜。すねないでちゅよ〜。メイアちゃん〜。」
「すねてないよ!」
そんな二人を目を少し細めて見つめているのがルルス。
「・・・・・・寂しそうだな。」
いきなりセタに話しかけられて驚くルルス。
「へ?あ。そうですか?」
「あいつらを見てるお前の目・・・・・・寂しそうだ。」
あいつらとは軽く喧嘩中のミョンハクとメイアのこと。
「まぁ。よく人をお観察になるのですね。でも、あなたこそ寂しかったでしょう?正義感が一番強くて、それでいて繊細で。」
「なっ、何故!」
ちゃんとしゃべれていないセタを見て、ルルスはクスリと笑う。
「何故・・・・・・分かったか。ですか?それは私が見るものの中にオーラという不思議な力があるからですよ。」
「オーラってあれか?人格を表す光のことか?」
「ええ。」
「俺のいたところにもオーラの見えるやつがいた。お前、霊感使いか?」
「いいえ。霊感・・・・・・というならこっちはまた違ったもの。魔法・・・・・・です。」
「霊感使いにはたくさんの種類がある。俺もそんな霊感使いの一人だが・・・・・・そうか・・・・・・お前たちは夢物語と思っていたが、魔法使いか・・・・・・。」
「夢物語・・・・・・ですか。」
「透明になったり、食べ物をいきなり出したりできるのか?」
あまりにおかしなことを聞いてくるのでルルスはクスクス笑いながら答えた。
「・・・・・・わ。笑うなよな。」
何故かその一言にルルスは懐かしさを覚えた。
今まで懐かしいと感じてきたのはメイアちゃんとミョンハクだけでしたのに・・・・・・。
なんだか・・・・・・セタさんがかわいく思えてしまいます。
あのミョンハクとにらみ合っていた方ですのに・・・・・・かわいいなんていったら失礼でしょうか?
でも、遠くには感じないんです。
「なんだよ・・・・・・じろじろ見るな。」
「いえ、ただかわいらしいな・・・・・・と思ってしまったものですから。」
「かわいいって嬉しくないぞ。」
「すみませんって・・・・・・。」
フフフッと笑い声をたてる。
「・・・・・・いなかったな。」
いきなりつぶやいたセタ。
「へ?」
「あ、いや、俺の国にはお前のような女はいなかった。」
「私はルルスですよ。セタ。」
みんなそれぞれの性格に触れてバスはついに町へと近づく。
そのたびに客足は増え、モカはくるくると歩き回り、もう四人と話している時間はなかった。
「あと五分ほどでバスが停車いたします。」
作「?コーナーですこんかいのゲストさんは以前モデルがいるとお話したモカさんです!」
モカ(以下略:モ)「初めまして・・・・・・。」
※モカさんは今回実物のほうではありません。
作「モカさんは外国が好きなんですよね?」
モ「はい。自分の国より外国に興味があります。」
作「好きな国は?」
モ「えぇ〜っと、いろいろありすぎて言い切れないです。」
作「だから案内人をしてるんですよね?」
モ「ええ、すっごいつかれるけど、好きなところにまわれたりして楽しいです。」
作「そういえば四人の感想はなんかない?」
モ「ミョンハク・・・・・・さん?あの人ってツンデレですね。」
作「あ・・・・・・そんなつもりなかったんだけどな・・・・・・そうなっちゃいましたか。」
なんとなく今回はココまで。