32・夢、現実
「なにぃ?」
ぱたぱたっと軽い足音をたてメイアは走りだす。
「ミョンハクと話し合っていたんですけど・・・・・・今日私たちは町に行ったはずですよね?」
その瞬間、メイアの脳裏に思い出したくないものがよぎった。
「・・・・・・戦争・・・・・・子供。戦死・・・・・・カード・・・・・・モモンガ・・・・・・?人は争うために生きているんだっけ?」
「カードを手に入れましたよね?」
「う、うん。そのはずだね。」
「おいっ。」
いきなり後ろから声がした。
「ひゃぁっ!」
「この世界、おかしくないか?」
「今、話しているところです。」
「・・・・・・ルルスちゃんは、ミョンハク君、嫌い?」
「なぜですか?」
メイアには「今話しているところです。」というのが妙に冷たく感じられたのだ。
「ルルスちゃんは、セイ家、嫌いでしょう?」
「ええ。嫌いです。でも、セイ家にだっていい人はいますよ。ですから、ミョンハクは、例外です。・・・・・・いい仲間だと思ってますよ。」
にこりと笑った。女でさえ見惚れるようなやさしい笑顔で。
「ミョンハク君は?」
「笑ってろ。ただ、それだけで俺はいい。」
ぽんっと二人の頭に頭にミョンハクの手がのる。
わしゃわしゃっとメイアの髪の毛をかき回すが、ルルスには笑っただけだった。
「あーっ!もぅぐしゃぐしゃあっ。」
必死になってメイアは髪の毛をセットしていた。
「あれ?もともとじゃなかったけ?」
「違いますぅっ!もう!ミョンハク君の馬鹿っ!」
軽くムスッとした顔でメイアはそっぽを向いた。
「やっと・・・・・・心開いてくれましたね。」
「あ?」
「ミョンハク・・・・・・今までメイアちゃんにしか心を開いてなかったんですよ。」
「んなことねーよ。仲間だろ?」
「たぶん、あなたの中で仲間意識が強くて特別だったのはメイアちゃんだけなんですよ。」
「なんのこと?」
わけのわからないメイアは尋ねてみる。
「絆ってやつですよ。」
にっと笑ってルルスが答える。
「と、特別とか、そんなんじゃねーよ!ただの旅仲間だろ!」
「何今更あわてちゃってるんですか。以外に可愛いんですね。ミョンハクって。」
黒い髪をなびかせてメイアのもとへむかったルルスの後ろ姿を見ながらつぶやく。
「なにげ黒いなあいつ・・・・・・人で遊ぶなよ。」
自分の赤毛をくしゃっとつかんでいた。
「仲がいいのね。」
「おぁっ!ラーナさん。」
いきなり後ろにあらわれた魔女に驚く。
「いつか、その仲の良さが災いを呼ぶ。それに、今の状態で変わらないままではいられない。・・・・・・私たちのように。」
その言葉に疑問を感じたミョンハクは尋ねる。
「わたしたち?」
すると、ラーナは顔をそらす。
「なんでもない。ルウペ。」
「はい。ラーナ様。」
「あなたの魔法がとける方法あったの。」
「・・・・・・どのような方法ですか?」
「簡単なことだったのよ。あなたが強くもとに戻りたいとその魔法陣の上で願えばそれでよかったの。」
「・・・・・・本当ですか?」
「次の戦争がおわって、この世界に平和が訪れたら祈りなさい。一心に。二つの星が重なる日に。年に一度、あるかないかだそうだから、ちゃんと準備しておけ。」
丁寧なのか、荒々しいのかわからない口調でラーナはルウペに冷たく言い放つ。
「そうですね・・・・・・これ以上、ご迷惑おかけできませんよね。」
「ややこしい話ししてんなぁ。」
何がどうなってるかわからないミョンハクはぼそっとつぶやいた。
ラーナはまた、一人になるため、他の部屋へむかった。
今は。誰とも接したくなかったのだ。
「・・・・・・じゃあ、これ以上にどうしろと言うのよ?私がルウペが好きって言って何がかわるの?魔法使いと一般人なんてうまくいくはずないのに。なのに・・・・・・もうやめてよ。やめて。他の国のお姫さまでも妃にして幸せに暮らせばいいの!私なんか。忘れればいい。」
机に突っ伏して両腕に顔を埋めた。
ルウペはルウペで落ち込んだまま。
ついに戦争でこの町は負けた。
科学発展のための力の源がなくなったからだった。
ちなみに三人は何故異世界へいけないのか、まださっぱりわかっていない。
そして・・・・・・呪いが解ける日。
「ルウペはここの中心にのって。」
「はい。ラーナ様。」
「あなたたち三人は近づかないで。ルウペは祈るのよ。心から。」
魔法陣が光りだした。
「・・・・・・時は満ちた!」
ルウペは目を閉じた。
シーン・・・・・・。
「・・・・・・何故だ。何故変わらない。」
「女・・・・・・の、ままですね。」
「何故だっ!おまえっ!願わなかっただろう!心から願わなかっただろう!?」
泣きそうなような激怒してるような不思議な表情で、声色で。
ラーナはルウペをまくしたてた。
「ラーナさんっ!ラーナさんだって気付いてるはずでしょう!?ルウペさんが好きだって。ルウペさんはラーナさんが好きなんだよ!離れるってわかってて、心から願えるわけないじゃん!いいかげん素直になりなよ!」
すると、ラーナはガクリとしゃがみこんだ。
「そうさ・・・・・・私はっ・・・・・・ルウペが好きだ・・・・・・けど、それを言ってどうなる?私は獣なんだ。ルウペだってここを出ていけば私を忘れる。・・・・・・そんな奴を好きになったって、報われるわけがないだろう?魔法使いじゃないルウペはここにはいられない。」
ゆらりと姿が黒い塊に変わっていく。
ぽたたっと涙が床に落ちる。
「ルウペは普通の人間と恋をして、私を忘れるのが・・・・・・一番なんだ。その人の幸せを願うなら・・・・・・。」
「そんなの違うっ!」
すっとメイアの前に手が伸びる。
「ルウペ・・・・・・さん?」
そこには男の姿に戻ったルウペがいた。
「私は・・・・・・あなたのそばにいたい。けど。あなたは違うのですか?」
真っ赤な顔で話すルウペに黒い塊になったラーナ。
〔私は獣なのに?〕
「私だって中性です。」
ルウペがラーナに触れる。
そして、何を思ったか、黒い塊にルウペはキスをした。
〔あっ・・・・・・。〕
塊は淡い光へと変身する。
だんだんと人型になり・・・・・・ラーナがあらわれた。
ラーナは泣いていた。
「魔法がっ!」
メイアが驚いていると、ラーナ自身も驚いた。
そして、そこには一枚の白いカードが落ちてきた。
「へ?」
またそれとは別に驚くメイアをよそにカードは記憶としてメイアのなかに入り込んだのに、メイアは何も思い出さなかった。
「魔法が・・・・・・とけた。」
「これなら対等でしょう?ラーナ。私はずっとあなたをラーナと呼びたかった。それは、平和の証。あなたと、望む姿になれたとき。」
「・・・・・・何で?魔法が使えなくなった。そんな私・・・・・・あなたの呪いがとけない。一緒にいたって意味ないじゃない。」
「え!?二人の魔法って偶然溶けたの!?」
理由にならないことばを並べつぶやくラーナに驚くメイア。
「意味はあります。今はこうしていられる。それに・・・・・・私たちは対等の立場にきたのですよ。ラーナ。」
「ルウペ・・・・・・。」
「ずっと傍にいさせてくれますね?ラーナ。」
「・・・・・・はい。」
ラーナの返事とともに魔法陣が光を放ち、光はルウペを包んだ。あまりの光に目をつぶる四人。
「っう・・・・・・。」
目をあけると、そこにはルルスのカードと、ルウペが立っていた。
「何が・・・・・・起きたの?」
カードはルルスの中へ入り、ルルスはただ、唖然としていただけだった。
「なぜ・・・・・・記憶が戻らないのでしょう?」
「それ、私も思った・・・・・・。」
ぱたぱたっとモモンガが宙を舞う。
「あっ。」
「モモンガ・・・・・・この子のおかげで溶けるはずのなかった魔法も、戦争もおわった。平和の象徴ね。」
すると、ミョンハクが弓を構えはじめた。
「何してるの!?」
「こいつだ!こいつが原因ですべてがおかしい方向へ進んだんだ!」
モモンガに矛先を向け、矢を絞る。
「なんでっ。」
メイアはミョンハクの腕をガッチリとつかむ。
「こいつは俺たちの行く場所節目節目にきた!それに・・・・・・この前そいつに触ったとき・・・・・・そいつは生きてはいなかった。心臓がなかったんだ!」
メイアの腕をミョンハクは簡単に払い除けた。
「やめてぇえっ!!」
バシュッ!
妙な音が鳴り響いて、矢は壁に突き刺さり、貫かれたそれ・・・・・・は、無傷のカードへと変わっていた。
メイアにとって愛着のあったモモンガ・・・・・・。
それは、記憶にすぎず・・・・・・。
ぽろぽろと涙を流すメイア。
「・・・・・・ひどいよ。ひどいよミョンハク君!」
「メイアちゃん・・・・・・これは仕方のないことだったのですよ。」
ルルスがメイアの肩に手を置こうとすると、メイアはルルスの手を払い除け、ルルスに向き直ると怒ったまま言った。
「ルルスちゃんまでミョンハク君の肩もつの!?心臓をもってなかったら弓で狙い殺してもいいって!?」
「メイアちゃん・・・・・・落ち着きましょうよ。」
「落ち着く?これが落ち着いていられますか!?ただのカードだったら、弓で貫いて壁にさしてもいいって!?どうして・・・・・・どうしてこんなっ。ひどいことができるのっ。」
すると、ミョンハクが大声を上げた。
「いいかげんにしろよっ!?」
びくっとメイアが反応して、顔を上げる。
「こいつがお前のなかに入らないと俺たちは次にすすめないんだよ!違う世界、違う次元を旅してるんだぞ!?この世界にいつまでもいることなんかできないんだ!わかるだろ!?」
「でも・・・・・・私は。」
「・・・・・・っ〜。悪かったと思ってる。でも。こうするしかなかったんだ。俺たちには時間がない。一秒でも早く町に戻らなければならないという使命があるはずだ・・・・・・。」
さっきとは正反対の落ち込んだような声になった。
ミョンハクは自分の前髪をつかむと、そっぽを向いてしまった。
「メイアちゃん・・・・・・メイアちゃんもおわかりでしょう?ただ、立ち止まることは許されないのですよ。」
メイアはただ、黙っていた。
作「はーいこんにちわー。前回強制終了されてしまったので懲りずにゲストさんラーナさんをよんできましたー。」
ラ「しつこいぞ。私は一回出たじゃないか。」
作「んなことよりー、ルウペと結ばれた今のご感想は?」
ラ「今までと変わらない。」
作「あっらー。素直じゃない。なんでこんな素直じゃないの作っちゃったんだろう・・・・・・。」
ラ「うるさい!」
作「でも、あなたのご希望どうり人間にも戻れて魔力も戦争もかんけいなくなったでしょ?」
ラ「それは・・・・・・嬉しい・・・・・・けど。」
作「そういえば三人の印象はどうでした?」
ラ「メイアとやらは好かないな。人のことにちょっかいをよくだすやつだ。・・・・・・けど。嫌いになれないからなおムカつくやつだよ・・・・・・。」
作「気づかなかったけど・・・・・・ものすんごいツンデレ・・・・・・。」
ラ「なんだと?」
作「いーえなんも。ルウペさんは大変だわ〜あはは。じゃお幸せに〜。今回はなんとなくここまでです。」
読んでいただきありがとうございました。