31・魔法の価値
〔・・・・・・かもしれない。〕
「人のために役立つ魔法はないんでしょうか?」
〔それを利用する人間がいるから魔法は禁止になり、廃れていくんだ・・・・・・と私は思う。〕
「でも・・・・・・ラーナさん。あなたはルウペが好きでしょう?」
〔・・・・・・好き・・・・・・と言ってなんになる?ルウペはもとはただの人間だ。魔法がとければここにいた記憶を消す。私の存在も知られることがないように。〕
「わかっています。ラーナ様。」
「悲しすぎる魔法は悲しすぎる災いを呼ぶ・・・・・・誰かが言ってました。自分の幸せより他人の幸せを願うものはいずれ過ちを犯すと。」
誰だかはさっぱり覚えていない。でも・・・・・・“だから、自分が幸せになるために生きなさい。そうすればまわりは自然とあなたを愛するものであふれ帰り、あなたも愛するものの近くで生活していける”と、言われた覚えがあった。
〔何がわかる・・・・・・この醜い姿になった私の何が。〕
「・・・・・・人を愛する心を持ちながら、そうすることのできない悲しく、優しい魔女・・・・・・。」
ぴくりと物体が動き、ルウペも反応する。
〔とにかく、私はもう寝る。邪魔するな。いいか?ルウペも余計なことはしゃべらないこと。でないとおまえの口をふさぐぞ。〕
荒々しい言葉遣いに低い声。
「はい。おやすみなさい。ラーナ様。」
メイアはやっぱり泣きたくなった。
魔法はこんな風に誰かを傷つけたり、引き裂いたりしたりするためにあるんじゃない。
お互いを求めているのにそれを否定する姿。
自分の姿より気持ちのほうが大事だと知りつつも、自分の姿を受け入れられない二人。
「ルウペさん・・・・・・どうして人は概念にとらわれるんだろう・・・・・・。」
「そういう生き物だからだと思うけど。」
「・・・・・・おやすみなさい。」
「おやすみ。」
泣きそうな自分を押し殺して真っすぐ前を向いて顔を上げて歩いた。
自分を保つために。
ガタンッ
「おーっす。」
「遅かったですね。待ちくたびれて半分寝ていましたわ。」
にこやかな二人。
なぜか唐突に、そして無性に失いたくないと思った。
この中で誰一人かけることは許されないのだと。
「あはっ。ごめんね!」
「一度・・・・・・明日にでも都市に行ってみましょうか。」
「え?」
どうやらメイアが一人、ふらついていた間に二人は話し合っていたらしい。
「ミョンハクと話していたのですよ。ここだけ発展した都市であるとすると、まぁ、独占欲かもしれませんが・・・・・・発展しすぎというのはおかしいでしょう?つまり、私たちのカードが関係しているのではないかって。」
「そっか。・・・・・・あ。モモンガ?」
モモンガはメイアの顔面にくっついた。
「んがっ!何これ。窓開いてるの?」
「開いてますね。」
メイアがモモンガらしき動物をひっぺがすとそれはメイアに懐いた。
「メイア。」
「ん?何?ミョンハク君。」
「そいつ、やけに白くないか?」
確かにモモンガにしては白いかもしれないが・・・・・・この世界には銀髪もいるくらいだ、不思議ではないだろう。
「・・・・・・ん、ま、いーよ。可愛ければ。」
「・・・・・・あのなぁ。」
「とにかく寝よ寝よ!」
ぽんぽんとダブルベッドをメイアが叩く。
ルルスは素直にベッドにのった。
「・・・・・・俺はいい。」
「なんでぇ。寒いじゃん。」
「いいからいい。」
「なんでぇっ!?」
「だーっ!うっせぇな!」
「風引いたら困るのミョンハク君だけじゃないんだよっ!?」
頭の悪い喧嘩が始まる。
「どーでもいいだろ!」
「よくないっ!」
メイアがまた引こうとしないのでミョンハクは大きなため息をもらす。
「メイアちゃんって・・・・・・結構子供なんですね。」
「なんで?風邪引くと思ったら誰だって心配しない?」
「しないだろ。わかった。じゃあ、俺端な。」
「えぇ〜私、寝相悪いから端じゃないと無理ぃ・・・・・・。」
メイアがルルスを見る。
「私が・・・・・・ミョンハクの隣ですか?」
暗黙の了解・・・・・・まずまず二人がとなりは無理だ!
「わかったろ。俺は床で寝るから。」
「だめっ。こっちで寝るの!」
「寝首はかかれたくありませんね。」
「安心しろよ。どっかの誰かさんみてぇなきたねーことはしねぇから。」
「あら、寝首をかいたことがあるのは歴史上そちらですけど?」
「だぁぁあっ!もうっ!二人はベッドのうえでも戦いそうだから、わかった!真ん中いく!でも、ふたりとも!蹴っ飛ばしたらごめんね?」
とりあえずそれで落ち着いた。
・・・・・・はずが、たった一人、二人が爆睡する中で寝られずにいた。
ふざっけんな。寝れるかっつーの!
「ぅ・・・・・・ん。」
ビクゥッ!
と、とりあえず離れよう。
「ぅぅ。」
バシッ。
こ、こいつ(メイア)・・・・・・マジで寝相わりぃ!
ミョンハクの体のうえにメイアの腕がきていた。
メイアはミョンハクを抱き枕にして背中に顔を埋めたまま爆睡。
「っ。ぉぃ。ぉぃ!メイアっ。放せっ!」
反応なし。
翌朝、
「くぅあぁぁぁあっ。よく寝た。あれ?ミョンハク君は眠れなかったの?」
「あ?あぁ。」
「まぁ、やはり少々無理がたたりましたか?」
「別にっ!」
「ダメだよ?ちゃんと寝なきゃ!」
誰のせいでこうなったとおもってる!?
「そーですねっ!」
「何怒ってるの?あ!わかった!昨日寝れなかったの。私のせい!?」
「まぁ。そーだけど。」
やっと気付いたか・・・・・・昨日俺に・・・・・・。
「やっぱり!私、寝相悪いから、蹴り飛ばしてベッドからミョンハク君を蹴り飛ばしちゃったんだね!?」
「がっ。」
そのほうがまだありがたかったよ・・・・・・このやろう。
「あ、あれ?でも、朝はベッドのうえにいたな。ルルスちゃんもまだボーっとしてるし。」
「朝弱いんですよ。」
落ち着け。我慢だ。我慢。ここで切れちゃいけない・・・・・・。
「あやぁ?変だなあ。」
「そういや、ルルス・・・・・・そのタトゥー・・・・・・なんなんだ?」
「ああ、この腕のやつですか?」
今まで服に隠れた部分が見えると、あまりにも毒々しい柄が姿を現した。
「わぁっ・・・・・・。」
紫の蝶からのびる、黒い何か・・・・・・タトゥーは、先端が丸みを帯びた雫のような形で手の甲よりうえ辺りでとまっている。
「これはね・・・・・・私が生まれもった醜いあざを隠すようにして魔除けのタトゥーが両腕に掘られたんですよ。」
「醜いあざ?」
「この蝶は・・・・・・もともとのあざで・・・・・・タトゥーが掘られた当時、薄く色づけされた程度だったのですが・・・・・・どうやら成長とともに濃くなったようですね。今あるかぎりの記憶では・・・・・・。」
「へぇ」
「かわったことがあるものだな。」
「えぇ。本当に。」
すると、唐突にメイアが口を開く。
「あれっ。今日町に行くんだよね?」
「もうでかけますか?」
「まぁ、そろそろ行ったほうがいいかもな。」
三人意見が同意した上で町へとでかけた。
曇った空、焼け焦げてすすだらけの町。
人間の髪の毛が焼けたような匂いに鉄臭い匂いが鼻に付く。
「ぅぇっ。」
渋い顔をしてメイアがよろめく。
「これが・・・・・・戦争。」
ルルスが手をおいた今やただの固まりは、少し触れただけなのにぼろぼろと崩れだす。
メイアがルルスの方向をむくと、ありえないものに気付き、息を呑む。
「ルルスちゃん・・・・・・それ・・・・・・人間?」
メイアが指差した方向をミョンハクとルルスが見る。
そこには・・・・・・子供やペットと思われる黒い形を残した何かがあった。
「何。これ・・・・・・。」
「戦死・・・・・・。」
「平和がいかにすごいことかと思いますね・・・・・・。」
あまりにも生々しく、無残なその亡骸は、戦争がなんの傷跡を残していくかを物語っていた。
「人間は・・・・・・戦わなければ生きていけないのでしょうか?」
「戦うために・・・・・・生きるなら。何のために人生ってあるのかな?」
「・・・・・・でも、俺たちは死ぬわけにはいかないんだ。生きているかぎり、戦い続けなきゃならない。まだ戦いがあるのに戦いを止めたときは・・・・・・それは・・・・・・死なんだ。」
「未来があったはずの命。戦争の残す傷跡。」
メイアの目から流れる一粒の涙。
「泣いてる暇なんてないだろ?俺たちにだって時間がねーんだよ。明日の命は約束されてねぇ。いつ、こいつらみたいになるかなんてわかんねーんだよ。」
「ミョンハク・・・・・・。」
首を振り、ルルスが止める。
「わかってるよ・・・・・・明日だって約束されてない。絶対じゃない。だから今私たちは探してるんだよ。明日への権利をつかむために。強くなるために。」
キッとメイアは上を見つめ、自分を引き締めた。
「魔法は人を悲しませるためにあるんじゃない。人生は戦いや争いを生むためにあるんじゃない。それを証明するために生きていこうと思うよ。」
「強さ・・・・・・ですか。」
そして三人はどこともわからず歩きだした。
足が居場所を知っていた。
どこかの焼け野原を越えると、どこかのトンネルへと入り、地下へと入っていた。
真っ暗な道。
三人には恐怖感がなかった。
むしろ、とても怒っていた。
無残に扱われた命のこと。無駄な戦争をはじめた世界のこと。
どこかで警報がなっても突き進んだ。
くねくねと曲がり、何本にも別れ道が連なっていた。
行方をくらますのは簡単だった。
そうして行き付いた先は・・・・・・カードの並ぶ大きなところ。
“カードが5〜6枚”
それより少し、少ない。赤い光に包まれたのが2枚。ミョンハクのカードだ。
青いのが1枚。ルルスのカード。
白い光に包まれているのがメイアのカード。
1枚。
その時、ぱたぱたっ。
あの白いモモンガが飛んできた。
「え?」
とたんにカードは三人の体に入り込む。
世界は壊れなかったが、三人は気付けばいつのまにか魔女の館にいた。
「あ。起きた。」
「ルウペ・・・・・・さん?」
女バージョンってことはまだ昼だ。
「きみが最後。」
「どこ行ってたのよ。」
「ラーナさん?」
「・・・・・・変な予感がするの。次の戦争でこの国は負ける気がするわ。」
腕組みをし、眉間にしわを寄せたラーナ。
「つまり、戦争がおわると?」
「そうね。ルウペ・・・・・・あなたもここで身をひそめなくても平気になるわね。」
「ラーナ様。あなたは・・・・・・私が邪魔ですか?」
「そうね。邪魔だわ。」
そのままラーナは歩きだして部屋に閉じこもった。
「ラーナ様の馬鹿・・・・・・。」
「ルウペ・・・・・・さん?」
意味不明なことばにメイアはルウペの顔をのぞく。
「・・・・・・また、ラーナ様に怒られてしまうね。だけど、ラーナ様は隠しているおつもりなのだよ。」
かすかにほほえむルウペ。
「何を?」
「涙さ。あーなるといつも袖が濡れているんだ。隠したって見つかるのに。」
「・・・・・・ルウペさんは、本当にラーナさんが好きなんだね。」
「昼間は女だけどね。」
悲しみが見え隠れするルウペの笑顔。
ぱたたっ。
「モモンガ!何で!?」
「ああ、そのこ、ずっときみにくっついてたんだよ。」
「かわぃいぃっ!」
思わずモモンガに頬擦りをするメイア。
「メイアちゃーん。」
「ルルスちゃん!」
「お話がありますの。よろしいですか?」
作「はーい当然のように始まりました新?コーナー。今回のゲストさんはぁ〜?ラーナさんです!」
ラーナ(以下略:ラ)「何故呼ばれたのかが分からない・・・・・・。」
作「実はですねー、もう一人ゲストさんがいらっしゃるんですよ〜。どうぞ!サプライズ?ゲスト、ルウペさんです!」
ラ「な!?」
ルウペ(以下略:ル)「初めまして・・・・・・?」
作「いやぁ、どうですか?呪いをかけられお互いがお互いを分かり合い、理解しあっているのに何もできない状態は。」
ル「生き殺しですよね・・・・・・こんな設定にした神様を恨むというか・・・・・・作者を恨むというか・・・・・・。」
作「ギクッ!!・・・・・・いやいや、でも感動的でしょ?」
ラ「どうだかな・・・・・・とにかくあたしにとっては早く直さなきゃいけない患者みたいなものだし」
作「またまたぁ!」
ラ「人の話を聞こうか?」
ル「ラーナ様、そろそろ・・・・・・。」
ラ「そうねぇ。終わろうか。」
作「え、あ。あの?勝手に終わらせないでくださーい。」
・・・・・・強制終了されました。
またのお楽しみを・・・・・・。
Byズタボロ作者より。