25・獣
そこはペットやアイテムが戦うための相方になるという不思議な世界だった。
何故そんなものが必要だったかは・・・・・・。
ビィィィイイイッ!!
大音量で警報が響く。
『みなさん。気を付けてください。東西区、北東方面に獣があらわれました。近隣のかたは非難することをおすすめします。くりかえします・・・・・・』
「なにぼーっとしてるんですか?急がないとじきこっちにも獣が来ますよ。」
「あの。獣って?」
メイアが尋ねる。
「何言ってるんですか?」
ドガガガガッ!
地面が揺れ、建物が次々と壊れていく。
人々は当然のように防備態勢に入り、子供だけがある一定の方向へと次々に走り去っていく。
「ちっもう来たか。」
とたんにすぐそばにいた犬が水のような狼へとかわった。
透明のようで透明ではない狼・・・・・・さっきの犬の面影は欠けらさえ残ってはいない。
腕時計が弓に代わったり、いきなり異世界から飛んできた三人には分からないことだらけだった。
メイアただ一人が頭にたくさんのハテナマークを浮かべる中で、ルルスとミョンハクは冷静に物事を推理していた。
ルルスは、万が一を考えバリアを張っていた。
まず、この町には獣がいますね。
それはどうやら人に危害を加える。
ならば私達も例外ではなく被害者になる可能性が高いです。
もし、例外だったとしても備えあれば憂いなし。バリアならここの辺りにいる十数人くらい守れます。
この世界は獣がでる世界ですが、この様子からして獣が出てきたのは最近。または、急激発生して最近人を襲うようになったかのどちらかですね。
そんな中、剣を構えたミョンハクは・・・・・・。
獣は人が倒せる生物らしいが、どうやら強さは疎ららしい。
一人一人のもつ、経験値や慣れ、強さでそれがわかる。
子供たちが隠れているところからあまりにも大人が離れているということは、生物の知能はあまりよくない。
人を襲うまではいいが、見えた人間しか襲わないのだろう。
だから子供は隠れ、大人はこのようにして集まり、集団で敵にむかう。
けっ。そんなのどうでもいいや。強い奴は俺が倒すまで!
メイアはただひとりボケッとするだけだった。
ただ、周りの人の緊張感や防備にあわせてメイアもアイテムを剣にかえ、剣をにぎっていた。
そして、そんな三人をよそに総攻撃が始まろうとした瞬間。
「やめろっ!」
大きな怒鳴り声が響いて目に見えないスピードで結界がはられたかと思うと、獣と呼ばれた黒くうごめく物体は苦しそうに奇声を発し、光となって消えていった。
「くそっ。また外れかよっ。」
そう嘆く一人の青年に周りの人はぽかんとしていた。
それは、ルルス、メイア、ミョンハクも例外ではなかった。
「あんた、ハンターか?」
「ハンター?ここではそう呼ぶのか?前にいたところでは疫病神や魔法使いと呼ばれたが・・・・・・。」
「魔法!?」
いち早く反応したメイアが、素っ頓狂な声をあげる。
それはやはり、新・予言が頭のどこかに残っていたからだ。
『新たな仲間。』
「あ、ああ。だが、俺はただの旅人で、魔法なんか知らない。」
「ねっ!仲間になろう!?私達も旅人。」
「断る。俺は異次元も旅をしている。おまえ達のようなのんきな旅などしている暇はない。」
その言葉をきいて、メイアとルルスは、同じことを思った。
あら。誰かさんにそっくりな物言い・・・・・・。
そして、その誰かさんのミョンハクは、むっとしていた。
なんなんだ!あの態度は!大体俺たちだって異次元の旅で、暇なんかねぇっつうの!
「話は早いですわね。私達も異次元を旅する旅人。ある大事なものを探すために異世界を飛び回っています。」
「何っ!俺も捜し物をしている。だが、おまえたちとは・・・・・・。」
「何を探してるっ!」
旅人の声をさえぎりミョンハクのとても機嫌が悪い声が入る。
あまりのことに旅人もかなりムスッとする。
「おまえ達とは違うものだ。おまえ達に言う義務はない。」
「同じ物を探していたらどうする。まさか。それを利用しようなんて考えてるわけじゃないよな・・・・・・。」
「何故俺がそんなことしなければならない。わかった。いいだろう。教えてやるよ!俺の探してるものはカードだ。どちらかというとお札だけどな・・・・・・。」
「カードぉ!?おい!ルルス!メイア!こいつより先に見つけるぞっ!」
また人の言葉をさえぎる。
「何!?おまえ達もカードを探しているのかっ!?ならばなおさら一緒に旅など断るっ!おまえたちは敵だっ!」
「お取り込み中悪いけど・・・・・・なに。あんたらハンターなのかハンターじゃないのかどっち。」
「もう。ミョンハク君もいきなり喧嘩腰じゃダメだよ。ね?あなたも一緒に探そう?」
「断るったら断る!」
「あ、私達はあなた達の言うハンターではないと思いますよ?ハンターのお話をお聞かせ願えますか?」
ゆっくりとした口調でルルスが言うとさっきまでピリピリしていた空気が少しだけ和らいだ。
「あぁ。そうだな。ハンターは異国の者が多く、ハンターになるための厳しい審査を受けたものだけがハンターとしての衣裳と役割を与えられる。ハンター試験を受けても、ハンターになれないものは数多く、昔は獣もそんなにいなかったからハンターもそんなにいなかったんだ。だが、ここ最近は獣が大繁殖をおこし、ついには人を頻繁に襲うようになった。獣で最上級クラスのものは、ハンター三人から五人は必要なんだが・・・・・・なんせ大繁殖したからハンターの数が足りなくてここ数十年、この町でハンターは見てないよ。ちなみに噂では最上級の獣は子供の姿に身を宿した化け物という噂だ。」
「なにぃ!俺が戦うのはガキなのか!」
するとミョンハクがやはり敵対心全面丸出しで言った。
「なっ!おまえまだ行ってなかったかよ!」
「ミョンハク。何故そのようにムキになるのです?それでは仲間もできないでしょう?」
「安心しろよもう行くから。」
「あっちょっ!名前は!?」
「知らない奴に名前を教えるのかおまえは。」
足早に去ってしまった旅人。
「むぅう!仲間かもしれなかったのにさっ。」
「でも変ですわね。私達の記憶なんて集めてどうするのでしょう?大体、あの方には魔力がありません。」
「確かに。魔力がないのにあんな必死になって私達のカード探すのってどう考えてもおかしいよね。」
メイアが腕組をする。
「それにしても分かんないんだよなぁ。もう親がいたのかさえなぞだし、記憶はないし。」
「そうですね。前世も現世も見えませんし。来世なら私達の生まれ変わりが見れるんですけど・・・・・・どうやら前世と現世は深い関わりがあるみたいですね。」
「記憶はまばらに帰ってくるしな。」
「あ。町の人いなくなっちゃった・・・・・・ってことは・・・・・・野宿ぅー!?」
メイアが叫んだ。
「お金も食料も売りに出せるものも持ってはいませんしね。」
うなずきながら話すルルス。
「なおさら早くカード見つけて早く新しい世界にいこうぜ。」
軽く流してからミョンハクが走りだす。
山のなかに入り、獣は強くなればなるほど知能が高くなり、好んでこちら側にやってくるものもいた。