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記憶  作者: 半月
21/120

21・光と闇

「いったぁ・・・・・・くない?」

強制的に異世界へと移された三人はいつものように体が斜めのまま新しい世界へと突入した。

「ここは・・・・・・?」

「なんだここは!?」

「幻想的だね。」

「綺麗ですわ。カラフルな球体がいくつも。」

驚くのも無理はなかった。

その世界は今までまったく経験したことがない新世界。

人間は一人もいない。

真っ白い部屋のような所にカラフルな球体がいくつも浮いているというような幻想的メルヘンな世界だったのだから。

とたんにぱっと光が消える。

と、同時に三人はそれぞれ一人になった。

メイアの方では・・・・・・。


女の子の小さなすすり泣きが聞こえる。

小さな女の子には見覚えがあった。

小さな女の子は、自分だった。

疫病神。

災いを呼ぶ者。

勇者。

悲しき言葉がこだまする。

「大丈夫だよ。」

私は疫病神なんかじゃないよ。

すると、少女はクスリと笑った。

「馬鹿だね。おねーさん。」

その少女はとたんに自分を丸写しにした状態になる。

等身大サイズの自分と同じ人物が自分の前にあらわれた。

「え。」

いきなり攻撃を仕掛けてきたので交わしたが、不意打ちだったので体にかすった。

「やらないとやられるだけだよ?あんたはまだ、自分の甘さに気付いてない。その甘さが命取りになるんだ。知ってるだろう?光があれば闇があるんだよ。闇を知らずに生きていくなんて人間にはできないんだ。裏切り、裏切られ、生きていくんだよ。あんたの今の状態じゃあさ?甘くなる一方だよ。戦うと決めれば傷つけるのが恐い。戦うと決めなければ死ぬのが恐い。守ると決めれば裏切られることが恐い。守ると決めなければ何もできない。そんなんでさぁ。今のあんた。いや。あたし。何ができんの?」

自分と同じ姿の奴が次々に毒々しい言葉を吐き出していく。

わかってる。

自分が弱いことくらい。

わかってる。

自分が強くないことくらい。

同じ意味の言葉でも使い方が違えば別物になることも・・・・・・わかってる。

つまり、これは私なのだ。

私はこれで、これは私。

同じ一つの人物のはずなんだ。

けど、それなら尚更わからない。

どうして?どうして自分と戦わなければならないの?

傷つけるのは嫌。

傷つけられるのはもっと嫌。

でも、何もしなきゃ次には進めない。

わかってる。

わかってるよ!そんなこと!

そのとき、攻撃が体に命中した。

体のなかに何かがめり込まれていく。

「ぐっ。ぅっ・・・・・・!」

遠くへと飛ばされ、体がよろめく。

「闇を受け入れる覚悟が今のあんたにはあるのか?人を殺すほどの覚悟が、仲間を殺せるほどの覚悟が、今のあんたにはあるか?強くなりたいと思う意志が本当にあるか?そのくせ、自分が本当に弱いと認める意志が今のあんたにはあるのか?」

しゃべりながら攻撃を交わせず弱っていくメイアをよそにゆらりと歩み寄ってくる闇。

「っ。ゲホゲホッ!」

肺の辺りを殴られたせいでうまく呼吸ができない。

しゃがみこむメイアを立ち、見下している闇のメイア。

「立てよ。戦えよ。やらなきゃ、やられるんだ。そんな意志もなしでここにきたのか?そんな中途半端な気持ちでここにいるのか?」

体中が痺れて動けなくなった。

痛い・・・・・・いたい・・・・・・イタイ・・・・・・。

恐い・・・・・・こわい・・・・・・コワイ・・・・・・。

そんな思いを読み取ったかのように闇の自分は話しだした。

「違う。あんたは戦える。あんたの今の肉体からだはあんたの気持ちを丸々映してるんだ。そしてあたしはあんたと反比例していく。つまり、あんたが強い意志をもてばあんたの肉体は強くなり、逆にあたしが弱くなっていく。でも、今のあんたはあたしに勝てない。だって、今のあんたには闇を受け入れる意志があるか?人や仲間を殺してでも生きたいという欲はあるのか?何かを押し殺してでも守りたいものがあるのか?」

守り・・・・・・たいもの。

苦しいながらに頭に浮かんだのは仲間。

ルルスちゃんやミョンハク君だった。

二人がいたから私は今までやってこれた。

そして、これからも二人と一緒にいたい。

笑っていたい。

あの仲間でいることができるなら、あの仲間で、笑っていることができるなら、どんなこともできそうな気がした。

あの二人は私を必要としてくれた。

こんなとこで死ぬわけにはいかないんだ!

弱い人間でもいい。

最初っから強い人間なんてどこにもいないんだ。

痛む体で立ち上がり、さっきまで恐怖でしかなかった闇と戦ってみようと思った。

仲間を殺す覚悟なんて今の私にはない。

それでもあの仲間で笑っていくためにはこんな場所で私は死んじゃいけないと思う。

そう思えた。

きっとあの二人がいなかったら、再び立ち上がる勇気さえなかったんだろうけど・・・・・・。

あの二人がいたから強くなれた。

あの二人が私に勇気と希望をくれたんだ。

だから、挫けずに歩いていける。

「やってやろうじゃん・・・・・・私は私の大切なものを守るために私と戦うよっ!」

必死だった。

ただ、自分は今ここで死ぬわけにはいかない。

それ一色だった。

また、あの仲間で笑いあっていくためには。

あの仲間を守り通そうと思った。

私とあの二人がそばで笑ってること・・・・・・。

それが・・・・・・私の幸せでもあるから。


西東洋魔法で、東洋も西洋も組み合わさった術を次々交わすのは、次にくる術が予想しづらく、正直楽ではなかった。

手当たり次第に魔法を使ってかわしたり、魔法で剣をだしたり。

それでも私は・・・・・・。

「はぁっ!」

私は私の闇を倒した・・・・・・。

闇の自分の胸の辺りを剣で貫いた。

「っ。ゲホッ。やれば・・・・・・できんじゃん。」

剣で胸の辺りを貫いた相手が死んだり、血が出ないのはやはり、闇であって実体がないからなのだろうか・・・・・・。

けど今は、そんなことどーでもいい。

「こんなとこで死んでいいような私じゃないからね。」

息は切れ切れだった。

決め台詞のようにかっこよく決められずにはいたが、とりあえず、勝ったのだ。

闇がすべてではないことをこの手で証明したのだ。

「いつだって、・・・・・・闇があるんだ。あんたはそれを。忘れてたよ・・・・・・。」

闇も闇で息は切れ切れだった。

でも、それだけ言うと、闇は私の中へと消えた。

「はいはい。」

わかってる。

闇はいつでもどこにでも姿をひそめてることくらい。

何度かうなずいてから剣を杖に立ち上がる。

そして、闇が消えると再び辺りは光に包まれ、幻想的な世界を繰り広げていた。

そこには闇の消えて、明るい世界だけがあった。

怖いですね・・・・・・光と闇と、当たり前のように存在しているのにどちらかを否定すると何もかもがなくなってしまう。

しかも自分と戦うのは嫌ですね・・・・・・。

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