117・分かれ道
二人から離れるとミョンハクは口を開いた。
「メイア?」
「はっ!ごめんなさい!つい!」
メイアはあわててミョンハクの手を離す。
その手に骨折したあとはもうない。
「どうしたんだよ?」
「ルルスちゃん達が・・・・・・凄く・・・・・・きれいに見えたから。」
雨で濡れた髪の毛は光り、痛みを分かち合う統べを知る奥深くの美しさ。
「あーゆーのを神々しいっていうのかな・・・・・・。」
メイアはかすかに笑うように目を細めた。
「何言ってんだバーカ。」
「またバカゆったなあ!?」
「バカはバカだろ。」
ミョンハクはふっと目を細めてルルス達を眺めると笑った。
やがてセタは落ち着き、四人はもてなされ、四人が離れる日がきていた。
メイアとルルスの体内に声が響く。
〔酷なことを言うようかもしれませんが、あなた達二人の帰る特定の場所・・・・・・あなた達は故郷と呼んでいましたね。あなた達の故郷はどこにもありません。でも、それは同時にどこでもはじめからやり直せるという事です。セタやミョンハク・・・・・・でしたね、彼らのように掟にしばられることもありません。彼らは自らの故郷に帰らなければなりませんが、あなた達はどうしますか?ここ、エデネ=ティクオに残りますか?それとも亜賺喃に行きますか?〕
それぞれに行く場所を二人は決めた。
そして別れがやってくる。
さまざな人が駆け付けてくれた。
「お前達ともさよならだな。」
「そうですね。」
ルルスが頷く。
「寂しいな。」
メイアがしゅん・・・・・・とする。
「まあ、生きてるんだし、いいんじゃねえか?」
「そうだけど・・・・・・。」
そういってメイアはルルスに抱きついた。
「さよならんてやっぱり・・・寂しいよっ!」
「そうですね。でも、仕方のないこと。これが私達が選んだ道ですから。」
ルルスがメイアの肩に顔を突けると微笑んでから瞳を閉じた。
「そろそろ時間だな。」
本が光りはじめたのでミョンハクがつぶやいた。
「ルルス!」
「はい。」
「俺・・・・・・その。・・・・・・おまえの事・・・・・・好きだったよ!」
真っ赤になったセタを見てルルスも顔を赤く染め、まわりでは歓声があがった。
「私もです。セタ・・・・・・ですから、さよなら。」
「さよなら。よかったね。ルルスちゃん。」
「え?え?」
「なんだそりゃあ!」
セタは驚き、ミョンハクは叫んでミョンハクとメイアは消えた。
周りの人たちは歓声をあげ、さらに盛大に騒ぎ立てた。
「おまえ・・・・・・どうして。」
「私はライランから来たガルディッアーノさんの分身ですから。帰る場所はありません。ですから辛かったのですが、お二人よりセタを選んだのです。」
そして亜賺喃についたミョンハクはまだわけがわからずにいた。
「なんで、ルルス。」
「落ち着いて、ミョンハク君。」
そして光との会話をミョンハクに話した。
「ふーん。それで。で?お前はよかったのかよ。」
「何が?」
「セタと・・・・・・本当は残りたかったんじゃないのか?」
「ううん。私はこっちがいいって。例え・・・・・・ミョンハク君がルルスちゃんを好きでも・・・・・・私・・・・・・わ・・・・・・たし、は・・・・・・。」
メイアが何か言い掛けて誰かにミョンハクが呼び止められた。
「おお!ミョンハクじゃないか!」
「長老?」
「なんだ。長老の顔も忘れるとは薄情者め!でもそうか。こちらもいろいろあったが、お前が帰ってきたって事は世界は無事守られたのだな!おや?そちらのお嬢さんは?」
「何言ってるんですか?メイアですよ。この国にいた。」
「メイア?聞き覚えないな。」
まだ何か言いたげなミョンハクを止めてメイアは前に出た。
「“はじめまして”長老、あなたの噂は彼から聞いていてよく知っています。そんなセイ家のご長老にお目にかかれて光栄です。私は“玖波已”という国から来ました。“メイア”と言います。」
いつになく丁寧に言っておじぎをすると二人はすぐに祝われた。