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記憶  作者: 半月
116/120

116・最初で最後のぬくもり

その光景にルルスはなんとなく二人の幸せはここにあるのだと感じた。

前感じたとおりだった。

どんなにミョンハクは身分が近くても運命さだめが同じでも、どんなに私に優しくしてくれても、いつもメイアちゃんを気に掛ける・・・・・・だから、そんなミョンハクだったから好印象だったのでしょうね。

ふっとセタを見つめ、私には今ちゃんといるのだから。前を見なくてはいけませんね。

メイアちゃんのように素直になって・・・・・・。

ミョンハクはふっと笑った。

「おまえだって無茶したくせに人のことバカバカ言ってんじゃねぇよバーカ。」

「な。ぅ。本当に心配したんだからね!」

そして手を振り上げようとして激痛が走った。

あげた腕にはぶらさがり、あらぬ方向に曲がった腕が腫れあがった無残な姿であった。

「まあ、大変。なおさなくてはなりませんね。」

ルルスはそういうとメイアの腕に手を乗せて傷を治療しはじめた。

もちろん横目でセタを気にしながら。

今、セタが押されている。

転び、泥や擦り傷をつけ、跳ねとばされ、そのたびにルルスは立ち上がり叫びたくなる衝動をぐっとこらえて目をつぶった。

「大丈夫だよ。」

「え?」

目を開けるとメイアが微笑んだ。

「ハラハラするよね。だけどセタ君、ちゃんと反撃してるし、だんだんタイミングもつかめてきてるから、大丈夫。それにルルスちゃんがいるから。」

「そう・・・・・・ですね。負けるはずありませんよね。」

ルルスもほほえみ返したがメイアは複雑だった。

誰かが無茶している姿を見るのはつらい。

それも見守るしかできないときは尚更・・・・・・でもね、知ってるの。

セタ君、ルルスちゃんがいるとき一番強くなるって。

気付いちゃったの。だからこの決壊はルルスちゃんを守るためにある。

少しまだ胸が痛むからそのことは・・・・・・二人には教えてあげない!

でもね、私も気付いちゃったの。

ミョンハクといるときが一番落ち着くなって。

気付いたらいつも以上に心配してて・・・・・・・・・変なの。

セタ君の事が好きって言ったのが嘘みたいに私・・・・・・ミョンハク君の事・・・・・・。

きっと・・・・・・。

一方セタは・・・・・・。

止めの一発をお見舞いした。

〔グァアアアア!!〕

卑屈な声をあげるとその下から人が半分だけ出てきた。

〔ゼン・・・・・・ああ、あなたがフォンス・ゼンなのね?大きく成長して・・・・・・!私のせいであなたに悲しい運命を背負わせてしまった事・・・・・・ずっと誤りたかった。〕

「・・・・・・今度は俺の母親でも真似する気か?」

セタは銃をとらわれているような女の人に向ける。

〔撃って・・・・・・私はずっととらわれていました。こいつが消えないかぎり世界も不安定なままです。撃って私を解放して?そうすればあなたは自由です。むこうにいる黒髪のお嬢さん・・・・・・ちゃんと守るのですよ。〕

「本物・・・・・・?」

セタの手が震える。

〔早く撃って・・・・・・こいつは一時的に気絶しているだけです。さあ、早く!〕

「待ってください。母様、師匠は・・・・・・師匠の魂はどうなったのですか?」

〔あなたの口から母様など聞けるなんて・・・・・・思い残すことはありませんね。バサカの魂は安らかな天界へ旅立ちましたよ。結界が破られたと同時にね・・・・・・。〕

「よかった・・・・・・。」

〔こざかしい・・・・・・やめて!早く!早く撃って・・・・・・ええい邪魔だ!・・・・・・早くこいつを倒すのです!〕

ミアマーは黒いスライムのようなものに飲み込まれつつあった。

セタは再びどうしていいかわからなくなった。

「出来ません!あなたは俺の母様なのに!」

ミアマーは弱々しくほほ笑み、セタの武器をセタの手とともに握ると言った。

〔言ったでしょう?母様、それだけでもう未練はないと。〕

「でも!」

するとミアマーは自ら引き金を引いた。

バキュゥウウン!!

〔あなたは・・・・・・本当にバサカに似ています・・・・・・さすがは・・・・・・我が子・・・・・・〕

最後まで言わずにミアマーがこぼした涙も魂もすべて光のつぶになり天高く上っていく。

その瞬間に今までセタが集めていたお札が光るを放ち、文字が宙に飛び出すとお札の柄が変わっていく。

すべてが変わると国の四方にそれぞれ飛び散り、新たな、それも強力な結界がはられた。

バサカはこのために自分の生死をかけてお札に入れ替えを行いながらも霊を封じた。

いつかは封じるだけでは足りなくなることは目に見えていた。

だからセタに自分をこえさせてお札の力を発揮させるために異世界に飛び散らせたのだ。

これでもうこの国に、再びあの化け物のような霊が入って来るこはなくなった。

「そんな・・・・・・こんなのってあんまりだ・・・・・・母様・・・・・・!」

初めて知った母親の温もりは、ひやっと冷たくてそして何より初めてであり最後だった。

そらはだんだん晴れ渡り、結界が説かれ、ルルスが駆け寄った。

「セタ・・・・・・。」

「俺・・・・・・俺、なんで生まれたんだろう。」

セタは濡れた子犬のように小刻みに体を震わせていた。

「よく・・・・・・頑張りましたね。」

ルルスは雨で濡れたセタをそして雨で濡れた自分も隠すことなく抱き締めた。

「よく・・・・・・がんばりました・・・・・・。」

自分も見てることしかできないことがつらかった。

こうなることは先見でわかっていたのに。

その様子を見たメイアは黙ってミョンハクの手を取り、引いた。


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