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記憶  作者: 半月
112/120

112・敵

いきなりリクリアが壁をノックしながら入ってきた。

「俺たちはいつでも出発できます。」

セタが答えるとマココがいつも通りリクリアの足の影から出てきた。

「本当に大丈夫ですか?心配です~。私達がなんとかできればよかったんですけど、全く歯がたたなかったんです~。」

「大丈夫ですよ。」

セタが微笑むとマココも笑顔で頷く。

「リクリアは意地悪ですけど、皆さんのことちゃんと応援してるです!マココも応援してますですよ!」

「誰が意地悪だ。」

「意地悪ですよ~!マココの最後の一つのお菓子勝手に食べちゃったりマココのことチビチビ馬鹿にしたり、自分だって老け顔のくせにです!」

また口論が始まった。

冷めた目で見るとリクリアとマココは同時にゴホンと咳払いを一つするとマココはニパアっと笑い、リクリアは玄関まで四人を見送った。

「幸あらんことを微力ながらに祈らせていただきます。」

「いってらっしゃいです~!」

四人が長老の家から出発するとリクリアは扉をしめ、ため息をついた。

「リクリア。どうしたですか。」

マココはいつになく冷静に言葉を発した。

「いや、あいつらを見てるとただのガキに思えてきて・・・・・・いくらフォンス家の強い霊力があってもあんな子供にすべてを任せなきゃならないほど俺たちは無力なのかと思ったら・・・・・・。」

「でもフォンスは問題も多少起こしていますがそれ以上に実績がありますです。今回の事も任せるしかないのだからリクリアが気負うことないです。」

「そうだけど・・・・・・まだ子供だぜ!?しかもまだ・・・・・・たった17歳の・・・・・・。」

「子供でも大人でも関係ないのですよ。ただ、強い力を持つものは同時に大きな災いを呼びますです。あたし達が何をしようと適わないものは適わないのです。」

「んだよチビ!」

「チビじゃないです!いきなり何言うですか!この老け顔!」

いつものマココの口調に戻ると長老が出てきた。

「おや、英雄達は?」

「父上・・・・・・旅立ちましたよ。」

「皮肉じゃな・・・・・・ただの少年が世界の英雄で我らは見守ることしかできん。そして自分の母親を殺し、さらには父親を殺した相手と戦うことになるとは・・・・・・しかもその事実をあの少年は知らないんだったかのう。おっと・・・・・・。」

長老がよろけた。

「父上!」

「お父様!」

リクリアとマココが同時に駆け寄る。

「この老けた外見も潰れた目も・・・・・・すべてヤツの力となっておろうな。」

「そのことは言わない約束です父上。」

そう、長老とリクリアは霊に立ち向かった。

が、その戦力も虚しく、長老はリクリアをかばい、目を失い、霊力とともに寿命を吸い取られ、老けてしまった。

そしてリクリアもかすかに吸い取られたが、長老が守ってくれたために全然なんともなかったのだ。

「おお、そうじゃった。そうじゃった。だがわしは我子をとってよかったと思っておるよ。わしもいずれ滅びる身、多少脆くなるのが早くなっただけじゃ。」

「お父様!それは言わない約束ですー!」

マココが人差し指を口に当てシーっとやった。

「約束が多いのう。」

そういって長老はカラカラと笑った。

一方四人は・・・・・・。

「いやな予感がするぜ。」

ミョンハクが身震いした。

「本当に。」

ルルスが頷く。

「まあ霊が多いからな。」

〔おいで・・・・・・。〕

どこからか聞こえたこえにセタとメイアだけが反応する。

「今・・・・・・。」

「メイアも聞こえたか!?あっちからだよな!」

「何も聞こえませんでしたよ?」

ルルスの言葉にうんうんと頷くミョンハクをよそにセタは走りだした。

「待って!そっちへ行ってはダメ!」

メイアのこえも聞かずに走り続けるセタ。

「すごく・・・・・・いやな予感がするのにっ!」

能力を消し去られてももともと危機察知能力が普通より高かったメイアはセタを止めに走った。

ムダだと知りつつもセタが突進して攻撃をくらうよりは少し落ち着かせるべきだと考えたのだ。

〔おいで・・・・・・。〕

セタやメイアが進めば進むほど声は大きくなるのにルルスやミョンハクには声が聞こえないらしかった。

「なんだ・・・・・・これ。」

ピタリとセタが止まった。

「セタ君っ!」

メイアがセタに追い付くとそこには得体のわからぬものがうごめいていた。

「セタ!メイアちゃん!」

「おまえら、突っ走るなよな!」

続いてルルス、ミョンハクときたが、全員セタと同じく絶句した。

〔待っていた・・・・・・長いこと・・・・・・ずっと・・・・・・フォンス・・・・・・ゼン・・・・・・お前だけを・・・・・・。〕

「何でセタ君のこと・・・・・・知ってるんだろう。」

「・・・・・・フォンス家だからな。フォンスに恨みがあって俺を殺そうとしてるのかもしれない。フォンスは人間界じゃ英雄だが、霊界では相当な恨みを買ってるだろうし・・・・・・悪者になるだろう。」

「え・・・・・・じゃあ私達が戦うのって・・・・・・これ?」

得体が知れないものがだんだん人型に変わっていく。

それはだんだんセタが知っている人に変わっていく。

「な、師匠!?」

「え?師匠ってセタ君のお父さん?」

「ああ。なんでこいつが師匠を知ってるんだ?」

〔セタ・・・・・・いや、フォンス・ゼン。よくきたね。ずっと待っていたよ。〕

「黙れ!お前は師匠じゃない!」

セタは耳を塞ぎはじめた。

〔ゼン、相変わらず推理は苦手なのか?そんなんじゃまだまだ霊刈りにはつれていけないな。〕

セタにとって聞き覚えのあるセリフだった。

「師匠・・・・・・?そんなはずない!師匠は死んだんだ!霊を封じ込めるために俺の目の前で無責任に後は頼んだって言われて!」

〔まだそのことを根に持ってるのか?〕

「ああ!もってるね!その後で俺がどんな目にあったが師匠は知らないんだ!どれだけ俺が辛かったかも!」

セタの心は揺れていた。

何より懐かしい師匠の姿に嬉しくも死んだときの悲しさも思い出し、涙を流していた。

〔さあゼン、こっちにおいで・・・・・・。〕

「師・・・・・・匠。」

それは手を広げ、セタを招く。

セタがフラリと歩きだしたがルルスとミョンハクには何が起こっているのかわからずにいた。

そんな中、セタを止めたのはメイアだった。

「行っちゃダメ!」

「え・・・・・・?」


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