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記憶  作者: 半月
108/120

108・痛み

一方でミョンハク、セタが闇に到着する前、LLSは唐突に先見をおこした。

(あるじ)、奴らが・・・・・・来る。」

今まで寝ていたLLSがむくりと起き上がる。

「愚かな、SMC2995とLLS0025には適わぬと学習をしなかったのか?」

「主、奴ら・・・・・・この前より・・・・・・少し強くなってる。」

「業磨きか?悪あがきを・・・・・・」

「主、それ、少し違う。奴ら、業じゃないよ・・・・・・ここが強くなってるんだ。」

SMCがトントンと胸をたたく。

LLSとSMCはもう以前の服は着ていなかった。

闇が服に何かしら微力ながらに闇に反発する魔力がかけられていたことを知り、SMCとLLSは体のラインがよく見えるような服を着ていた。

胸には胸あてがあり、銀のぴったりした感じの厚めのものだった。

SMCはお腹が出ていて、右だけ肩に止めるようになっているうえに、両胸に胸あてがあるタイプで、その下に黒いぴったりくっつくタイプの服ならぬもはや布を着、スカートはウエストから腰に掛けて斜め、更にスカート自体もスリットが入り、以前ルルスが着ていた服のような上下左右で長さの違う最長で膝までしかないスカートと忍者のような肘上まである手袋をし、靴はリボンのような平たい紐で結び付けるタイプのヒールだった。

LLSの服装は胸あては左にしかないような方胸タイプで下は水着のようにぴったりしている・・・・・・さらには左右で大きな丸のような形のパックリと開いたウエストがのぞくような格好に、太ももの三分の一の長さしかないミニスカートと膝上まであるロングブーツをはいていて、LLSの体中に短剣に鎖が就いた武器の鎖がLLSの体中に巻き付いているといった感じだった。

「まあ、どこが強くなっていようと関係あるまい。感情がある男というのは共通する弱点があるというからな・・・・・・。」

ククッと笑い声が漏れるとミョンハクとセタがSMCとLLSの目の前に現われた。

「今度こそっ・・・・・・ブッ!」

何か言い掛けてミョンハクは吹き出し、セタもまた驚き、目を丸くした。

「ルルス?メイア?なんって格好してるんだよおまえら。」

セタは冷静になろうとしていた。

もともと髪の毛があまり長くないメイアはSMCが肌を隠そうとしないことでスタイルがまるわかりになり、ルルスは髪の毛をアップにしていてやわらかなお団子上にしていたため、こちらもスタイルがまるわかりになっていた。

今まで隠れていたスタイルに二人は目を背けながらも盗み見ていた。

「てか、ホントにあんな格好で戦う気あるのか?」

セタがつぶやくとミョンハクが答えた。

「胸あてしてるからな・・・・・・一応あるんじゃねえの?」

すると唐突にSMCが走りだし、ミョンハクに攻撃を仕掛けた。

スカートがあまりのスピードについていけぬとでもいうようにバサバサとはためいた。

ガキィイン!

ギリギリのところでミョンハクは剣を構え、SMCはさらに一回転し、上にとぶと剣を振り下ろした。

ミョンハクはどうしていいかわからず、ただ攻撃を交わしていくしかできなかった。

「ああくそっ!スカートが邪魔だ!」

ヒラヒラ宙を舞うスカートが意識を散乱させる。

一度、SMCと距離をとるが、SMCは突進し、二つの剣は宙を舞った。

ガキィイン!

とりにいくより格闘のほうが早いと判断したSMCはミョンハクを拳で殴る殴る。だがミョンハクも両腕をクロスさせ、攻撃をかわし、宙を二、三回飛んで着地をすると低姿勢になったが、同時にSMCも低姿勢になり、互いに激しくぶつかり合うことになった。

お互いは吹っ飛び、感情と痛みを感じないSMCは何事もなかったように立ち上がり、ミョンハクは何故メイアの攻撃がここまで威力があるのかがわからなかった。

自分より弱そうで軽そうな体のどこにぶっ飛ばす威力を発揮する場所があるのだろうか。

それはSMCが戦闘にあわせ体重を変化させているからだと、ミョンハクは知らない。

ミョンハクも勢い良く飛び起きると訓練してきたすべてのことを振り返り、集中した。

一方で、セタとLLSはセタが押されていた。

LLSは鎖で短剣を何不自由なく操り、セタは短剣を避け続けることしかできなかった。

「・・・・・・どうした?攻撃しないと、勝てない。主、言ってた。」

LLSが攻撃しながらいった。

「主って誰だよ。」

初めて聞いたLLSの声だったが、その声に感情はなく、ルルスのものとは異なり、棒読みの言葉だけが無数に広がっていくのをセタは感じた。

「主は主。お前たちの最も近くにいる、そして最も強い存在だ。」

「お前の格好、戦う気あるのかよ。」

スカートが舞い上がり、それを気にせずにLLSもSMCも戦い続ける。

「主、この格好、お前達のような男には最も効率がいいといった。」

そーゆーことかとたまたま話を耳にしたミョンハクもセタと同時に納得した。

セタは決壊をはり、目をつぶると武器を作り出すことに専念した。

守りたいものがある。

ルルスやメイアをここから解放してやりたいから。

俺に力を貸してくれ!

強く、強く念じた。

前回と同じ方法だったはずなのに手にはさらに強化された銃が握られていた。

・・・・・・不思議だ。

前のは持つだけで重くて、ただただ威力が強いだけだったのに、今のは違う。

自分の一部みたいだ。

使い方が勝手に頭に流れ込んでくる。

・・・・・・それでも・・・・・・あいつ(LLS0025)は殺さなきゃ・・・・・・いけないのか。

ルルスも同時に死ぬかもしれないのに・・・・・・。

いや、もうルルスは死んでるのかもしれない。

違う。そんなことない。

決壊を解き、銃の先をLLSに向ける。

「強化された・・・・・・感情の・・・・・・結晶か・・・・・・。」

LLSがつぶやくとセタはLLSを撃った。

ズドォオオンッ!!

何発か連続して撃ったため、かなり大きな音がする。

「当たった・・・・・・か?」

すると煙の中から鎖つきの短剣がセタの心臓を狙い、二つあるうちのもう一つは頭を狙い飛んできた。

さらに高速のSMCまで。

「また・・・・・・おまえがあいつを守ったのかよ!」

セタがギリギリでルルスの攻撃をかわし、ミョンハクは宙へ飛ぶと真っすぐにメイアを狙って足を振り下ろした。

SMCは瞬時に避け、ミョンハクの足にパンチを一発、腹部に蹴を二発。

目にもとまらぬ早さで攻撃するとミョンハクが吹っ飛んだ。

「グッ!ハッ!」

ミョンハクの口から唾なのかよくわかぬ液が飛び出し、ミョンハクはそれがただ、胃液や血ではないようにと思いながら口を拭い、起き上がった。

その瞬間、SMCがミョンハクの真横に現れ、ガッという音とともにミョンハクの首が捕まれて押し倒された。

「グハッ!」

喉をすごい強さで押しつけられ、ミョンハクは“審判者”と戦ったあの時のことを思い出した。

ただ、皮肉にも今、敵がメイアであることを除いてあとは同じだと思った。

「悪あがきはしないほうがいい。みんな消える。みんな主のものになる。なら、楽に死んだほうが得だ。」

SMCがギリギリとミョンハクの喉をつぶしていく。

「ッカハッ!ざ・・・・・・けんな!」

ミョンハクは出来る限りの力でSMCを蹴り飛ばした。

バキバキ!

SMCの肋骨が何本か折れた音がする。

「お前はそれでいいのかよ!俺達と出会ったことも忘れて、おまえは誰だろうとメイアって人格を築いて!なのに全部なくなるんだぞ!なあ!それでいいのかよ!」

「人間・・・・・・うるさい。」

SMCは拳でまたミョンハクを狙いうつ。

それをクロスで交わすミョンハク。

さっきよりスピードが増している。

「あたしの中に入る奴もうるさい。」

「メイア!?メイアか!?」

「主、言った。メイアとかいうの、いない。あたし、SMC2995だ。メイアとかいうの、玖波已って世界からきた杜欄って奴の性格だ。だから、メイア、いない。」

「うるせえ!俺たちと過ごしたメイアとルルスは誰がなんだろうと作られもんでもメイアって人間とルルスって人間なんだ!」

「いない・・・・・・はずなのに、あたしの中、うるさい。」

そういって一発、自分の胸を拳でなぐった。

メキメキっという音がする。

「な!」

「気絶した。」

そう・・・・・・感情や心のすべてであるメイアやルルスは“痛み”を感じる。

SMC2995やLLS0025が感じない感情を二人は感じる。

傷つけば傷ついた分だけ痛みを伴い、二人が気絶している間は闇の真の駒となる。

「体・・・・・・ぐちゃぐちゃだ。」

すると“審判者”が数人現われた。

SMCはひとっ飛びし、ミョンハクは構えると、SMCは元審判者の首にかじりついた。

ガブリッ!バキバキ!ボキッ!

とんでもない音がし、SMCはミョンハクの前で審判者の血を飲み干していく。

「なっ!!」

ミョンハクはその光景を見て固まってしまった。

さらには次々と元審判者達の首が食い千切(ちぎ)られ、血が飲み干されると消えた。

出てきた元審判者達は何の抵抗もなくSMCに血を飲み干されると異体にならず、闇に消えた。

まるでそこには何もなかったかのように。

「邪魔なもの、消えた。あとは主の敵とお前たちだけだ。」

すっかり傷が治ったSMCは血を頬につけ、指に付いたものも舐めていた。

審判者が存在した“証”はそこにしかない。

「何・・・・・・してんだよっ!」

「傷を治した。何故怒っている。」

そういってすごい早さで蹴を二発、ミョンハクは見切ることもできずにまともにくらい、倒れこむ。

「ゴホッゲホッ!」

お腹を押さえ、少しうずくまるミョンハク。

「お前、もう終わったな。」

SMCは手の平をミョンハクに向けると、何の躊躇もなく光を放った。

「そうだ。SMC2995、よくやった。光があり続けるかぎり、光はものを産む。光は破壊をもたらす。闇が破壊など恐れているものもいるようだが、それこそ愚かなものよ。さあ、つぶしあうがいい!」

「主。こいつ、死んでない。」

すると本が光りだした。

いつからミョンハクの前にあったのかはわからない。

だが、本から声が聞こえた。

「その通りです。彼は死んではいませんよ。先程のSMC2995さんの魔法はすべて吸収させていただきました。強烈な光り魔法ですね。おかげでまたここから彼に通信することができます。」

ミョンハクがフラッと立ち上がる。

「主、あいつ、もう立ってることが精一杯だ。もうあいつ、敵じゃない。なのに、(ひかり)、何故まだあいつにすがるんだ?」

「これは彼の意志です。あなたにも荒々しく眠らせた意志が、そこにあるように。」

SMC2995は見えない何かに胸のうえ辺りを触られた感じを覚えると、少し心臓が跳ねた。

〔ミョンハク君!ミョンハク君!生きてる・・・・・・の?よ、かった・・・・・・。〕

「また、お前、起きたのか。」

〔私の・・・・・・体でしょ!〕

「お前のカラダ?そんなもの最初からない。お前は生まれるはずのなかった存在。生まれてはならなかった存在だ。」

メイアの声は周りには聞こえないため、SMCの会話だけ聞いているとかなり変だ。

「ええい、うるさい。」

今度は腹部を殴った。

メイアは咳き込んだ。

実体があればうなり、転がり回っていたかもしれない。

その間にミョンハクの顔つきが変わり、剣を両手に持っていた。

一本は以前から使っていた剣、もう一本はよくセタに貸していたアイテムとしてついていた剣だ。

SMCのアイテムは闇により改造が施され、SMCの意志によって形が変わるようになっていたが、形も色もまがまがしいものが多かった。

ミョンハクはじっと次にくる攻撃に備えていた。

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