106・偽りの仲間、仲間の真実
ルルスの体の入れ墨は呪文・・・・・・来たるべき時に備えた魔力を押さえるための呪文だったのだ。
それが解除去れた時、ルルスの無効化、つまり歌は無敵になり、解放された魔力により星を消し去っていくほどの威力を持っていた。
入れ墨が成長とともに濃くなった理由、それはルルスの魔力が成長を遂げて呪文も濃くならなければ呪文じたいが消えてしまうからだった。
そして光が三人に共通で小さい頃から残した予言・・・・・・それは三人に共通する歌だった。
三つは二つ、二つは一つ、一つは三つ。
飛び去るもの飛び行くもの。
涙が伝う頬は真実を知らず、探しても得る事のできない記憶をさまよい続ける。
一番大切なものを失って人はどうやって生きていくの?
一番大切な何かを作り出して生きていくの?
でも、作り方はまだ不確かで、不真実で・・・・・・。
ああ、蒼い空飛び立つ君はどこへいくの?
ああ、私も風にのり飛び立つの。
三つは二つ、二つは一つ、一つは三つになる。
大切なもの取り戻すために今があると信じて。
今があると信じて・・・・・・。
一見、何かの悲劇を歌っているようにしか聞こえない。
だが、一つ一つに実はわからない予言だった。
未来を急激にかえることは許されない。
だからこそ遠回しすぎるほど遠回しに残されたものだった。
三つは二つ、二つは一つ、一つは三つ。
二つは一つ・・・・・・それはルルスとメイアのことでその二つはミョンハクと出会い、三つのセットになることを表していた。
飛び去るもの飛び行くもの。
飛び去った物はミョンハクの記憶、飛び行くもの・・・・・・つまり、何ものかがわざとそうしむけ、飛び散らせたのはメイアとルルスの記憶だった。
涙が伝う頬は真実を知らず、探しても得る事のできない記憶をさまよい続ける。
一見、三人の関係性のようだが、二人と闇の関係で、今後にもまだ続く予言である。
一番大切なものを失って人はどうやって生きていくの?
一番大切なもの・・・・・・それは仲間。これもまた今後にも関係のある予言である。
一番大切な何かを作り出して生きていくの?
これはただ単にどうしたらいいかと問い掛けている。
でも、作り方はまだ不確かで、不真実で・・・・・・。
作り方とは未来のこと。不真実とはこれからの四人に関係のある予言。
ああ、蒼い空飛び立つ君はどこへいくの?
おそらく歌なので暗くなりすぎないために光の人たちが入れたフレーズだろう。
ああ、私も風にのり飛び立つの。
飛びだった先で前進あるのみ・・・・・・を差している。
三つは二つ、二つは一つ、一つは三つになる。
大切なもの取り戻すために今があると信じて。
そのままの意味。
今があると信じて・・・・・・。
この予言の後にセタと旅することが決まり、この歌にはまだセタはいない。
そして・・・・・・メイアの腹部にある傷は闇により改造された証拠だった。
闇がメイアを監視しやすいように万が一を考え傷を付けたのだ。
呪いの一種で光がメイアを別のものとかえぬように。
変えても呪いの傷はコピーできぬようにつけられたものだった。
呪いだからこそいつまでも生々しく赤いのだ。
そして二人の感情は眠りについた。
互いの体内に感情を分裂させて封印したのだ。
例え感情が起きだして体を元にもどそうとしてもできぬように封じたのだ。
二人の感情が目覚めたときにはすっかり闇に手懐けられていた。
「SMC2995、奴らとたかって追いで。」
「はい。」
メイアはえ?と思った。自分ではない名が呼ばれ、自分の感情関係なしに体が動き、戦ってこいと命じられたのはミョンハクとセタの事だった。
〔ちょっとまって・・・・・・何!?何で!?とまれ!とまれ!止まってよ!〕
「LLS0025、君もだよ。」
「はい。」
ルルスも何の抵抗もなくメイアのようにセタとミョンハクの元へ向かっていく。
〔とまれってば!ルルスちゃん!ルルスちゃん!〕
それにピクリと反応したのは闇だった。
「おや、メイアのお目覚めか。でも、君はもう反抗できないよ。さあ、“元”仲間と戦ってくるといい。」
そして体と意志は別々に動き、セタとミョンハクの前に無表情のルルスとメイアが現れた。
「おまえら、無事だったのか・・・・・・?」
ミョンハクが汗を拭い、セタは決壊を張った。
メイアは激しく首を振ったが、体は動かない。器の名前はSMC2995。性格は杜欄という人のクローンにすぎず、メイアの今の感情ばかりが浮き彫りになる。
そこでルルスの感情も目覚め、混乱した。
なぜ今対立するように仲間の目の前に立っているのか、自分の意志に反して体が動くのか。
だが、少しハッとした。
この光景を一度、夢に見た。
だが、今ではない。
きっと・・・・・・これから始まるのだ。
セタを・・・・・・私が・・・・・・後に・・・・・・殺す・・・・・・?
〔い・・・・・・や!メイアちゃん!メイアちゃん!やめてください!やめて!違うんです!私はここにいるんです!ここからだしてください!〕
ルルスの横目に移るメイアは無表情でメイアがそこにいるのかさえわからない。
ルルスははっとした。
夢が・・・・・・予言であることに。
だがこうなってしまってはもう遅い。
そこはひたすらに孤独でルルスの声だけがこだまする。
目の前には見えない壁がある。
誰にも自分の本心は届かない。
いきなり無効化する歌を歌いだすLLS0025といきなり二人に切り掛かるSMC2995。
互いに本心は誰にも届かず、メイアとルルスは叫び続けることしかできない。
ガキィーン!
剣同士がこすれあい、直接攻撃以外はルルスに阻まれてしまう。
セタは両手を拳にすると突き合わせ、何かつぶやきはじめた。
それは成功する確立の低い業。
自分が想像した武器を実態化させる困難で心から人を守るために戦わなくてはならないとき・・・・・・心に偽りがないときにしか出せない。
出せたらどんな敵も強敵ではなくなる強い武器。
だが、セタは心がゆれていた。
敵は仲間・・・・・・だが、今は仲間ではない。
隣ではミョンハクがすごい早さで剣を振りかざすメイアに押されている。
「メイア!?メイア!どうしたんだよ!」
ちがう。メイアやルルスは今、敵なんだ!他のことは考えるな!
・・・・・・ちがう。やつらは仲間なんだ・・・・・・でも・・・・・・仲間だっただけで・・・・・・敵だから・・・・・・敵だから・・・・・・戦わなくちゃならない。
戦え、戦え俺!
セタは戦うことに集中すると手のひらを合わせて叩いた。
開かれていく手の間に銃のようなものが出てきた。
大きくて重く、まるでマシンガンチックだった。
それをルルスに視点をあわせ、向けるが・・・・・・引き金が引けない。
引き金がかたいこともあるが、何よりセタの手が震え、引き金を引くことはおろか、定まっていた視点さえガタガタに揺れていた。
何故こんなに自分が動揺しているのかが分からなかった。
どうせ離れることは決まっていた。
“一線を引かないで”メイアの言葉が頭に巡った。
そうか・・・・・・俺は一線を引かなければルルスを・・・・・・俺はルルスに惹かれてたのかもしれないな、だが、今はそんなの関係ない。
あの頃のルルスはいない。
あの頃のメイアもいない。
いるのはルルスとメイアの体を乗っ取った何かだ。
敵なんだ。
深呼吸を一つしてからルルスに再び銃をむけ、勢い良く引き金を引いた。
ブワンッ!
勢い良くない何かがルルスに向っていき、確実に当たった・・・・・・はずだった。
ギイィイイイン!
光の速さで飛んでいった普通の銃より大きな玉を真っ二つにメイアが剣で切り裂いていた。
「な!?」
銃弾が真っ二つに・・・・・・いや、それ以前に今までミョンハクと戦っていたメイアがルルスの所に一瞬で移動したと言うのにも驚きだ。
ミョンハクさえ驚いている。
再びメイアならぬSMC2995は驚いている二人に切り掛かった。
ミョンハクはSMC2995になかなか本気を出せずにいた。
やるか、やられるかなのに・・・・・・くそっ!
ミョンハクは思い切りSMC2995を跳ねとばした。
メイアの体は宙を舞い、見えない空間の壁に叩きつけられ、強く腕と頭と背中を打つ。
バキイッ!!
妙な音が響き、SMC2995は着地すると片腕をぶら下げながら剣を振り回しにかかった。
ガキンガキンガキンガキン!
連打される業にミョンハクもついていくのがやっとのようにSMCを攻撃せずにいた。
「メイア!お前、腕、大丈夫なのか!?」
SMCは答えない。
本当は剣攻撃ばかり仕掛けてくるSMCの腹部を蹴り飛ばしてしまえばいくらでも倒すチャンスはあったのだ。
くそっ本当に敵なのかよ?俺はいままで敵を仲間だと思ってたってことなのかよ!?
ちがうあの頃は本当に仲間だったんだ。
たとえ今、その中身が変わってしまったとしてもこいつはメイアであいつはルルスなんだ!
そしてSMCは剣を放り投げるとミョンハクに向かって魔法をつかった。
強力な光魔法だった。
夢渡の存在を初めて知った国で使った一瞬にしてものが灰になり、消えた魔法だった。
その攻撃を受け、ミョンハクは吹っ飛んだ。
と、同時にメイアの声を聞いた。
〔やめてぇえええっ!!〕
「メイ・・・・・・ア?」