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異世界任侠伝、魔王がなんぼのもんじゃい!   作者: にゃんこめん
第五章 勇者、そして任侠伝説へ
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第三十六話 異世界任侠伝の始まり、世界の成り立ち

 俺の(ケツ)に打たれたシマ髭の作った特効薬のおかげで、手足の痙攣が止まり、混合されている回復薬や筋肉増強剤の薬効で、全身に活力が漲ってきた。

 そして背中の入墨に描かれていた龍に噛みつく大虎が吠えると、背後に現れて俺の化身(召喚獣)となる。


「どりゃッ!」


 魔物の森の親分ビッグピーは、長ドスの刺突攻撃を腕に装着した丸盾(バックラー)で防ごうとしていたが、それを跳ね上げた俺は、突貫の勢いを殺さず奴の身体を貫いた。

 それと同時に召喚獣の大虎は、魔法防壁の体制が崩れた騎士団を襲う雑魚どもを薙ぎ払う。


「寅吉っ、上からハルピュイアがきてるわ!」


 モリリンの声に天を見上げれば、ハルピュイアで視界が真っ暗になるほどの大群が、俺を目掛けて急降下している。

 俺は女を殴らねえ主義なんだが、ハルピュイアは乳房を晒して女の顔をしているが、あれは雌雄同体の化物だから殺っても問題ねえな。

 長ドスを垂直に立てた俺は、身を屈めて脚に力を込めると、ハルピュイアの群れの真ん中に飛翔する。


「グゲゲゲっ!」

「ぎぃぃぃいっ!」


 ハルピュイアの群れを切っ先で貫いて、奴らの頭の上を取った俺は、そこで長ドスを両手に持ち替えた。


「死んでもらうぜ」


 光の翼を使って滑空する俺は、出会い頭のハルピュイアを斬って斬って斬りまくる。

 地上で俺を見上げていたギルバートやモリリンは、落下する化物の遺体を避けながら、血の大雨に身体を赤く染めていた。

 あとで詫びなきゃならねえな。


「俺の化身大虎よッ、穴に残っている化物を蹴散らしてこいや!」


 俺が具現化した入墨の大虎に、ぽっかり空いた大穴に向かうように指示すると、奴は一際大きな声で吠えてから、縦坑に突っ込んで行きやがった。

 あいつは、支持待ちくんか。

 俺が命じなくても、てめえの頭で考えやがれ。

 空と地上の化物があらかた片付くと、俺も大虎を追いかけて穴に降りる。


「こいつは派手に斬り込んでんな……ああ、俺の殺る分なんて残っているんかね」


 そう言ったのも束の間、大虎の首根っこを大きな手で掴んだ化物が近付いてくる。

 全身が赤く、背中には蝙蝠のような翼、頭に生えた黒黒した大きな角は、無学な俺でも一目見て悪魔(デーモン)ってやつだとわかった。

 赤い悪魔の黒目に浮かぶ白い瞳からは、全く感情が読み取れねえ。

 こんだけ目の前で部下を大勢殺されたと言うのに、こいつにはそもそも感情の欠片もねえのだろう。


「てめえが本当の親分って感じだな。上にいた豚野郎は、てめえと比べたら三下に思えるぜ……そうなんだろう?」


 俺は大虎を背中に引っ込めると、地下迷宮の奥から現れた赤い悪魔に問いかける。

 答えなんて期待しちゃいなかったが、奴は黒く長い爪で顎を掻いて『お前は゛誰だ?』と、質問に質問で返しやがる。

 ふざけた化物だぜ。

 しかし人の言葉を理解する化物とは、おそれ入谷の鬼子母神だ。

 しかし、そうならやることがある。


「お控えなすってッ、お控えなすって! てめえ生国と発しまするは足立区竹ノ塚の生まれ、姓は富田、名は寅吉、人呼んでクレイジータイガーと申します。ケチな勇者でござん――」

「ああ゛貴様が勇者クレイジータイガーなのか゛話は魔王様より聞いている゛じかし勇者は二十年前゛我々のために地上に降臨された魔王様に恐れをなして゛この世界から姿を消したはず」


 仁義を切る俺の口上を邪魔しやがって、これで斬り込んでも文句はねえんだが、その上、俺が魔王を恐れていると因縁つけてやがる。

 俺がいつ魔王を恐れて逃げ出したって?

 そこんとこをはっきりしておかねえと、俺自身が気になって仕方ねえ。


「てめえッ、名前はなんてんだ?」

「俺の悪魔はイフリート゛この国にある魔王様の支配地を治める゛統治者である」

「ほう、やっぱりてめえが親分か。で、イフリートさんよ、俺が魔王を恐れて逃げ出したってのは、何かの間違いじゃねえのか? ケツをまくるつもりなねえが、俺は敵に尻向けてにげたことはねえんだぜ」


 赤い悪魔は高笑いすると、肩をすくめて俺に背を向けた。


「人間たちは゛勇者(おまえ)が誕生すると゛我々異形生命体を魔物(モンスター)と呼んで゛長きに渡り均衡した世界を゛独占しようとして宣戦布告した。この戦争の始まりは゛勇者(おまえ)の力を過信した人間が゛俺たちを世界から排除じたことだ」

「なんだと?」

「ゆえに我々は゛貴様に対抗し得る存在を魔界より召喚じた゛それが魔王様だ゛そうと知った人間たちは゛勇者(おまえ)を別の世界に隠じて゛勇者は殺じたから゛と゛魔王様に一方的に休戦を願いでたのだ」


 まずいな……こいつの言葉は通じちゃいるが、話している内容が理解できねえ。

 適当に頷いておくか。


人間(おまえ)たちは゛勇者と同等の力を持った゛魔王様の登場に臆したのだ゛わかったか?」

「ああ、なんとなく……わかった気がする」


 イフリートは『では゛また会おう』と、拳も交えず迷宮の奥に退散している。

 なんで赤い悪魔は、俺と戦わずに帰っていくのか。

 奴ならば、俺と互角の力があるように見受けられる。


「おい。イフリートさんよ、俺に斬り込んでこないのかい」

「俺が゛勇者と戦う? いや゛それは統治者の役目じゃない゛が゛いずれ機会があれば」

「そうかい……じゃあまたな」


 しかしシマ髭のドーピングも切れて、筋肉痛に襲われていれば、今は見逃してくれたと思うべきだな。

 もう縦坑を登る気力も尽き果てたわ。


「寅吉、迎えにきたよ」


 穴の空いた天井から赤い夕焼けが射し込む頃、手慣れた手付きでローブ降下してきた元自衛官のモリリンは、化物遺体の上で大の字に寝転ぶ俺を抱えあげる。

 彼女の話では、俺が縦坑に突っ込んだ後、地上に残っていた化物を一掃した冒険者と騎士団が、協力して魔法防壁の穴を塞いだらしい。


「夕日が眩しいぜ」


 モリリンに肩を借りた俺が地上に戻れば、池梟と素鴨から物理防壁の建設も始まってやがる。

 多少の誤算はあったものの、俺たちはサンザとババンボの故郷を奪還できた。

 今はそれで良いじゃねえか。

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