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異世界任侠伝、魔王がなんぼのもんじゃい!   作者: にゃんこめん
第三章 異世界で集いし勇者の仲間
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第十七話 渡世と色と老人街、混沌の素鴨

 オークとゴブリンの混成パーティーを倒した俺とタクミは、都心に向かって進路を変更したが、到着した村は素鴨の一つ先にある駒米(こまこめ)の村だった。

 駒米は小さな村だったが、隣接する畑端(ばたはだ)西月暮里(にしげっぽり)の三村を街道で結んで、都市部への化物の侵入を防いでいた。


「寅吉さん、このまま先に進んでも構わないと思うけど、素鴨に引き返してサブたちを探しますか」

「いや、また村の外で迷ったら面倒だ。化物は怖かないが、飯が食えねえのは問題だからな」

「道に迷う心配はないと思いますよ」


 タクミは駒米の南側通用門から、すぐ目と鼻の先にある素鴨の街を指さした。

 なんでも素鴨と駒米の距離は、最後の砦と呼ばれる村と街の中で、最も近くに配置されているらしい。

 その理由(わけ)を聞いた俺は、素鴨って街に俄然興味が湧いた。


「素鴨は忌避地で老人街なんて呼ぼれてますが、違法賭博(裏カジノ)や風俗店も多いんですよ。駒米が防魔対策で協力を呼びかけても、地元の連中が反対しているんです」

「異世界にも、ヤクザがおるんか?」

「違法賭博や風俗の店主たちが、化物退治に雇った愚連隊でしょうね……でも非合法な依頼(クエスト)を受ける組織(ギルド)もあるから、ヤクザがいないわけでもないのかな」

「素鴨には、その組織があるのか?」

「隣の池梟に半年暮らしてましたが、そんな話は聞いてませんね。あるとすれば騎士団(この国の警察)が目の届かない最後の砦より外側、魔王軍の支配地にある組織じゃないですかね」

「そいつは、面白れことを聞いたぜ。つまり魔王のタマ取るために旅に出れば、異世界のヤクザ連中と出会えるってことだ」


 俺みたいな一介の極道が世界を支配する大物を倒せると、なんでキャバクラに現れた少女(メスガキ)が考えたのか。

 切った張ったが渡世の義理なら、俺みたいな半端者に世界を託した少女に恨みはねえ。

 無法者の俺を雁字搦めに縛られた世界から、匕首(ドス)一本で成り上がれる異世界に転生してくれたこと、今となっては感謝してくれえだ。

 しかし五人の身内を参集しても、世界中の化物と戦って、そいつら束ねている魔王(大親分)のタマ取る手段が思いつかなかった。

 ついさっきまでな。


「タクミ、俺は()()()と戦争する方法を見つけたぜ」

「え、魔王組と戦争ですか」

「てめえの言いたいことはわかるぜ。俺たちを拉致った少女(メスガキ)の願いなんざ、無視して生きりゃ良いじゃねえと言いてえんだろう?」

「いいえ、引っかかったのは『()()()』なんですが……まあ俺に銃を向けた女の願いは聞く必要ないですね」

「殺すつもりで撃ったんじゃねえんなら、こまけえことは水に流してやんなよ。あの女も故郷(ふるさと)のために、()ったことじゃねえか」


 タクミは『そんなことより』と、魔王と戦う算段があると言った俺を急かす。

 まったくインテリアのくせに、学のない俺が思いついた作戦がわからねえとは情けないぜ。


「俺たちは、全国に散らばるギルド(ヤクザ)を訪ね歩いて、ギルマス(組織の親分さん)に魔王組との抗争を呼びかけるんだよ。一本独鈷(いっぽんどっこ)の勇者組だけじゃ勝ち目はねえが、全国の親分衆(ギルマス)が賛同してくれたら魔王組にも勝てるんじゃねえか?」

「ギルド=ヤクザの図式なのが、俺には理解できないけど、確かに六人が集まっても、孤軍奮闘では魔王軍とやり合うのは難しいですね」

「お嬢ちゃんも、それが狙いで俺たちを転生したに違いねえ」

「ええ……そうかもしれませんね」


 タクミは『んなわけねえよ』と、小声で吐き捨てていた。

 学のない俺に転生した理由を言い当てられて、インテリア様が拗ねてやがる。


「寅吉さん、それで素鴨には引き返しますか」

「ああ。渡世(バクチ)(オンナ)の街なら良い(サケ)もあるだろうし、行ってみようじゃねえか」

「はい」


 俺たちが池梟の村を出てから四日目、目的地だった素鴨に到着した。

 素鴨の通用門には、明らかにカタギじゃない目つきの門番が立っており、俺の白い装備(スーツ)を物珍しそうに眺めている。

 門番が街に持ち込む武器を見せろと言うから、匕首(ドス)をテーブルに置いた。


「なんだあ、この派手な白い装備はよ。それに帯刀してるのは、ちんまい短剣だけか」

「ああ、それだけだ」

「どうせ素鴨には、博打か女を買いにきたんだろう?」

「いや、旅の途中で逸れちまった仲間を探している。ええと……タクミ、サブたちなんて言ったかな」


 タクミは『はいはい、ちょっとごめんなさいね』と、険悪な気配を漂わせた俺と門番に割って入る。


「門番の旦那、ここらで医者、銃士、踊り子、商人がつるんでなかったかい?」


 タクミが門番の前に手を翳すと、まるで魔法にかかったみたいに不機嫌だった門番がニヤリとした。


「冒険者パーティーなら、ずいぶんと異色な組み合わせだな……でも探しているのが冒険者なら、酒場『パアナ』で聞くと良いだろう」

「そこは、依頼が受けられる冒険者の酒場ってやつ?」

「そうだ」


 タクミは『あざっす!』と手をあげると、そそくさと俺のドスをテーブルから取って街中に進んだ。


「あの門番、てめえに変わってから愛想良くなったが、もしかして魔法を使ったのか?」

「某スター・ウォーズのマスターじゃないですけど、まあ魔法ちゃ魔法を使いましたよ」


 タクミが指の間に金貨を挟んで、俺の前に手を翳した。

 こいつは揉め事を避けるために、門番に魔法(賄賂)を使ったわけか。


「素鴨は村と違って街なので、人探しには骨が折れそうですね」

「タクミ、まずは美味い酒を飲もうぜ」

「はい!」


 素鴨の街は、色とりどりの提灯が並ぶ夜の街だった。

 ネオンが輝く日本の繁華街を思い出して、少しだけ里心がついちまった。

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