名前
「ジョーンズ」
「…………」
「スミス」
「…………」
「ウォーレン」
「…………」
「全部駄目なのか」
今晩の宿に向かう合間にこいつの名前を決めている。
だが乙女心はなんとやら次々と名前を出すものの、こいつはうんともすんとも言わず首を横に振るばかり。雌雄どちらかも分からないし首もないが。
そうこうしてるうちに宿屋に付いた。
小さな村相応のーー悪意は無いが言い方が悪い。だが小綺麗な宿屋だ。
取り合えず入ってみるか。
木製の扉を開ける。
中にはカウンターに男性、。
後ろには酒が多く取り揃えてある。
察するにここは酒場も兼ねている場所みたいだ。
まあ泊まる客なんて滅多にいなそうだしな。
「いらっしゃい、」
「二人部屋を一つ」
「二人…………ああ。それなら銅貨70枚だ。食事は夜と朝の分込みでこの値段だ。後払いでも先払いでもいいがどうする」
「じゃあ先払いで」
そう言ってお金を渡す。
それと同時に鍵を渡された。
綺麗に管理されているようだが年代物なのかすこし曇った鉛色。
「突き当たりの右の部屋があんたらの部屋だ。食事はここに来たら作る。まあなるべく早めに来てくれるとありがたい」
「わかりました」
そう言うと一礼し、自室へ向かう。
中は簡素なベットが二つ。
それだけしかないがそれだけあれば問題はない。
一先ず足の疲れを癒すためベットに腰を掛ける。
「…………」
「ん? ああ、名前ね」
忘れてかけていたがこいつの名前を考えなくてはいけない。
まだ自分の名前も思い出せていないのに。
…………いっそ自分で考えるか。
「……あ、イーターってのはどうだ、何でも食べるし。格好いいだろ。どう気に入ったか」
「…………」
「駄目か。じゃあイレイサーは?」
「…………!」
この反応は気に入ってる様子。
しばらくすると体を大きくバウンドさせ、喜んでいるように見える。そうか、気に入ったか。それはよかった。
俺の名前にしようと思っていたんだがな、はあ
「じゃあよろしくなイレイサー」
「…………」
「俺の名前? …………本当にどうしようか」