そいつ
目の前は青かった。
ただ大地に寝転がり空を眺めているだけだが、ここがどこで自分が誰なのかすら分からない俺はただそう表現するしかなかった。
ただ覚えているのは目の前にいる半透明の生き物が敵でないこと。
それだけは覚えているし俺の本能もそうつげている。
手を伸ばしふるふる震える『そいつ』に触れてみる。
「冷たいっ」
「…………」
そいつも俺を求めるように吸い付いてくるがやはり敵意は感じられない。やはり味方なのだろう。
吸い付く動きはマッサージをされる感覚がする。
あまり気持ちよくないが。
「…………!」
「あっ、……」
そう思った矢先、やや強引にこいつは腕から離れた。
もしや俺の心を理解しているのか……よくわからない。
「お前、話せるか?」
「…………」
そう問いかけるも応答はない。
見るからに人ではないがこいつは一体何者なのか。
いつまでもこいつと呼ぶのも面倒だし名前を考えなくては………
「…………!」
「あ、おい!」
突然こいつが跳び跳ねる。
何事かと思い後を追うと何やら人のような獣のような生き物を包み込み、そして捕食した。こいつの中で必死に生き物が蠢いているが抵抗虚しく全く出れそうにない。
そんな光景を見て俺は『よし、よくやった』と思った。
何故? それが分かれば記憶が戻ってるさ。