FAお礼短編「幼女になれなかったフェフ」to うろこ雲さん
FAをくれた"うろこ雲"さんへ捧ぐ。
自作「僕の妹はバケモノです」の夢衣ちゃんを描いてくれたお礼を込めて心より。
「ううう、すいません。本当にすいません、うろこ雲さん」
「そんな、フェフさん……幼女って言ったじゃないですか」
その日、鹿角フェフは一人の人物の前で土下座していた。
その人物の名前は"うろこ雲"という。
ツイッターで彼に「僕の妹はバケモノです」のヒロイン、夢衣ちゃんのファンアートを描いてくれた人物だ。
本来鹿角フェフは神々と誓約せし古き盟約にしたがい、ファンアートを貰ったら幼女となってその人物とデートしなければならない。
だがその本体がクソきったないおっさんとバレてしまった鹿角フェフは、まるで12時を過ぎたシンデレラの様に魔法が解けて現実に引き戻されていた。
「幼女力が無くなったんです。もう、僕は幼女になれないんです……」
涙ながらに語る鹿角フェフ。
本当なら幼女になりたかった。幼女になってぷにぷにほっぺとふわふわお洋服でこの世全ての人々を魅了したかった。
ツイッターで「ふぇぇ、幼女だよぉ☆」とか無駄に呟いてファボとリツイートを稼いで悦に浸りたかった。
だが、それももはや夢幻の類。とある事件によって力を失った彼には、幼女になる術が存在していなかったのだ……。
「幼女じゃないフェフさんに価値なんてないじゃないですか……」
「うう、すいません。すいませんうろこ雲さん」
今の鹿角フェフには謝罪を繰り返すことしか出来ない。
うろこ雲氏は幼女鹿角フェフを楽しみにしていたのだ。その期待に応えられなかった不甲斐なさと無力感が、鹿角フェフの心をこれでもかと責めさいなむ。
だがある種において問題はなかった。
ダメな人間の搾りかすを凝縮して作り上げたような鹿角フェフとは違い、うろこ雲氏は人格者で知られている人物だ。
この程度のことで腹をたてるほど狭量な人ではなかった。
「まぁ仕方ないですよね。次に期待していますよフェフさん」
「ありがとうございます! うろこ雲さん!」
ぱぁっと気持ち悪い笑みを浮かべて喜びの声をあげる鹿角フェフ。
無事今回の短編も終わるかと思われたその時、異変は突然やってきた。
「ぐっ! これは……!? しまっ、こんなタイミングで!?」
「ど、どうしたんですかフェフさん!」
何が起こったのか、急に胸を抑えて苦しみだす鹿角フェフ。
突然の事態だ。うろこ雲氏も慌てて彼の身を案じる。
だがしかし、鹿角フェフは手のひらを突き出し彼を制す。そして、
「に、逃げてください、うろこ雲さん! これは不味い、これは――」
「Win◯ows10のアップデートです!」
恐ろしい事実を告げたのだ!
「なっ、なんだって!?」
「Windo◯s10が僕をアップデートしようとしている!! こ、このままでは、このままではアップデートされてしまう! 許可してないのに、アップデートされてしまうぅぅぅ!!」
うろこ雲氏の瞳が驚愕に揺れる。
なんというタイミングだ! まさか、こんな時にWi◯dows10のアップデートが始まるなんて!
思いもよらなかった緊急事態にうろこ雲氏は慌てる。だが無力にも苦しむ鹿角フェフを助けることはできない。
「しっかりして下さい! フェフさん! 気を確かに……うわぁ!!」
一瞬の出来事だった。
「ふぅ……」
強烈な光の後に現れたのは、鹿角フェフ――いや、アップデートされた鹿角フェフだった。
賢者モードかと思われるほどに真顔の彼は、何故かシャキッと姿勢を正しながら、ゆったりと面を上げる。
「フェフさん! フェフさん!!! ま、まさか!」
「ようこそ――Windo◯ws10へ……」
「そんな……フェフさんがWindows10◯になってしまった!!」
もはやあの頃の面影は今の鹿角フェフには無い。
残念なことに、彼はアップデートされてしまったのだ!!
「手始めに、『何もしてないのにパソコンが壊れた』とか言い出すユーザーを全員アップデート(意味深)してしまいましょうか……」
それはまさに全人類への宣戦布告!
このままでは、このままではwindows10に◯なった鹿角フェフによって世界が滅ぼされてしまう!
だが、うろこ雲氏にそれを止める術はない。唯の一般人なのだ。
焦りの為、うっすらと冷や汗をかくうろこ雲氏。鹿角フェフが破滅への一歩を踏み出す!!
それだけで、世界が揺れた気がした!
「な、なんて凶暴なんだ! 人類はどうなってしまうんだ!?」
「くっくっく。もう誰も私を止められないのです。それではいきま――」
「…………?」
だが不思議な事が起こった。なぜか突然停止した鹿角フェフ。
はて? いったいどうしたというのだろうか?
うろこ雲氏は首を傾げた。
「フェフさん? おーい、フェフさーん?」
うろこ雲氏は恐る恐る語りかける。
だが不思議なことに鹿角フェフより返答はない。
何が起こったのだろうか? いや、まさか……。
とある事実に思い至ったうろこ雲氏は、茫然自失とした表情でポツリと呟いた。
「フ、フリーズしてる……」
なんと鹿角フェフは不具合でフリーズしていた。
やっぱり最新物はいろいろデリケートだなぁ。
そんな感じだったのだ。
こうして世界は救われた!!!!!!!!!!
めでたし、めでたし!!!!!!!!!!!!