おちないネコ
ネコ達はおとされないように必死に頑張っていました。
ぼくは多分猫である。名前はまだない。
ぼくが兄弟たちとモフモフとしていると、ある時大きい人間に持ち上げられて崖の上に乗せられた。
ぼくは必死に捕まって耐えているけれどその崖の端で掴まって耐えるのに精いっぱいで登る事はできそうにもない。
そうしていると髪を二つに結んだ人間の娘がぼくを引っ張って落とそうとした。
なんて酷いことをするんだろう。危うく落ちる所だった。
そうやって一息ついたのも束の間。
その年代にしてはスラッと痩せた少女がやってきて再びぼくを崖下に落とそうとした。
ぼくは必死に耐えて何とか落ちなかった。
今度こそ安心して惰眠を貪ろうとしたぼくはまたしても崖の下に落とされそうになった。
白い幅広の帽子と同じ色のワンピースを着た女の子がぼくを落とそうとしていたのだ。
ぼくは兄弟たちを見る。
ぼく、このまま落ちても大丈夫かな。
兄弟たちは口々に言った。
きっとこの女の子ならぼくを大切にしてくれると。
再び崖に落とされそうになったぼくは女の子を見た。
これが最後のチャンスだと、スレンダーで髪を二つ結びにして白い帽子と服を着た女の子は必死にぼくを見つめている。
きっと最後の1枚を使ったのだろう。
うん、この子なら大丈夫かもしれない。
もう一度兄弟たちを見る。じゃあ、お先にね。
ぼくは崖に掴まっていた手の力を放した。
100円を入れるコイン入れの横にある景品取口の下には薄いけれどもマットが敷いてあり、
ぼくはその上にふにょんとお尻から落ちた。
――そう、ぼくはクレーンゲームの景品のぬいぐるみなのだ。
「とれたー。」
その少女はぼくを抱きしめると彼女によく似た母親の所へ駈け出した。
よかったね。