紙袋をかぶって
みいちゃんはある日、たけし君から「ブス!」と呼ばれ…
薄々は分かってた。自分が決して美人ではないって。
でも、小さい頃からみんなが褒めてくれた。
「みいちゃんは可愛いね。食べちゃいたいくらいだよ」って。
お父さんも、おじいちゃんも、お母さんも、おばあちゃんも。
それなのに。今日幼稚園でハッキリ言われた。
「こっちを見るんじゃねーよ、このブス!」
最初は何を言われているのか全く分からなかった。
「お前の事だよ、このどブス!」
こう言って睨みつけてるのはたけし君。乱暴者で嫌いな子。
周りのみんなはクスクス笑ってる。仲のいいルナちゃんも咲きち
ゃんもちょっとだけ笑ってる。
そこに先生が来てたけし君を叱った。
「あなた、女の子に向って何をいうの? そんなコトを言ってはい
けません」
「どうして?」
たけし君は平然と言った。
「どうしてって、当たり前でしょ」
「正直にモノを言ってはいけないんですか? 先生はいつも嘘はい
けませんっていうじゃん」
それを聞いて先生は少し戸惑う。
「え? それは…ええと、みいちゃんはブスではありませんよ。と
にかく! 女の子に、いいえ、もちろん男の子にだって、そんなこ
とを言ってはダメなんですよ! いい? わかりましたか?」
「わかりませ~ん」
先生はこう言ったたけし君を別の場所に連れて行った。
それから暫くして、先生がたけし君を伴って私の前に。
むすっとしていかにも不満そうなたけし君。
「みいちゃん、さっきはゴメン。オレが悪かった」
うつむいたままたけし君があやまった。
「はい。もうこれで許してあげましょうね。みいちゃん、いい?」
いいも悪いも無かった。私はその時、人生というものを初めて深
く考えた。
人は生まれながらにして不公平だ。私はやっぱりブスなんだ。
今にして思えば、思い当たる事も多々ある。
七五三の時だって、クリスマス会の時だって、そう、おたのしみ
会の時だって。
そうか、そうだったのか!
私はひとつ、決心をした。明日からは…
次の日から私は紙袋をかぶって幼稚園に行くようになった。
もちろん、家を出てからの事だ。だって、うちでは私はお姫様だ
から。
お友達が私の周りに集まって口々に言う。
「みいちゃん、どうしたの? ふざけてるの?」
もちろんふざけてるわけではない。当たり前だ。私はある決意を
しているのだ。
すぐに先生が走ってきて、私を別の場所に連れて行った。
「みいちゃん、どうしたの? なぜ紙袋なんか…」
「先生、私、気づいたんです。ブスだってことに。だからこれを…」
そうだ。私は考えた。ブスならブスでもいい。それを隠してしま
え!
もし、みんなが同じ顔だったら。うん、でもそれは無理。だった
ら、私が顔を隠せば。
先生は私の前でずっと何かを言っていたけれど、私には分らなか
った。というか、先生の言葉は意味を持たなかった。意味の無い言
葉はただの音なんだ。
そんな私の態度に先生は家に連絡を取ったようだ。
お母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、ごめんなさ
い。
私は…多分、紙袋は禁止されるよね。あたりまえかな。
でも、これから私は紙袋を 心の中でかぶっていくよ。
それならいいでしょ? 私は紙袋をかぶってる。だからブスじゃ
ない。
多分、カワイイ子に私の心は理解できないと思う。それでもいい。
私は今日も明日も 紙袋をかぶって 外に出るんだ!
紙袋をかぶって。
みいちゃんが紙袋を脱ぐ事ができるのは、家族以外の人に愛される時ではないでしょうか…
このシリーズは6まであります。是非!