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42話

1967年9月30日

半年前から俺、ジム・タケベ少佐は母艦である空母サラトガからハイフォンへ向け、幾度もの強行偵察を実施、ミ重巡ボストン、同軽巡リトルロックなどが艦砲射撃し易くするために情報を提供し、周辺海域で臨検中の日本海軍(JDN)や作戦行動中の豪海軍にも情報を提供して、友軍である陸軍特殊部隊への戦域サポートも実施した。


同年10月12日

フエ市上空

いつも通りレーダー手のリックと共に上空支援部隊の護衛を担当する戦闘機隊の指揮官としてF-4E(ファントム)の機内にあった。

「レーダー反応はどうか?」

俺がそう聞くとリックは「は、レーダーに反応は…………反応あり!」と続き俺は「各機、空中戦用意!」と命じる。

そしてすぐに「フラグ1フォックス2!」と俺は叫ぶとボタンを押してスパローを放つ。


来る日も来る日もフエ市に対する偵察任務ばっかりだったから、久しぶりの戦闘任務に少し焦っていた。

そしてミサイルは敵に命中したが、しばらくすると格闘戦となり大混戦となり、火を噴きながら銀一色のMiG-21()も一緒に空母から飛び立った僚機である緑と茶色の二色迷彩のF-4E(ファントム)も次々に深緑色のジャングルのへと落下していく。


墜落する機体には敵も味方も関係ない。激しい空中戦の末に、墜落した機体は空に高くどす黒い煙を上げ、ジャングルの周囲を巻き込んで炎上する。

撃墜されたF-4に乗るパイロットの中にはA-6部隊時代からの長い付き合いをしているジャック・ウォーカー大尉や、そのレーダーマンであるトム・ウォール中尉など歴戦の強者も含まれていた。

彼らの戦死は正式に確認こそされなかったが、ジャングルのど真ん中へ墜落したので確実に戦死しただろう。撃墜される直前にコックピットから射出される座席とパラシュートが見えなかった。それに墜落した時には人間を殺すには充分過ぎるくらいの衝撃が加わる。


戦死だろうとわかっている、でもあいつらなら生きているはずだと自分に俺は言い聞かせる。

無論それは撃墜された二人とも優秀な空の戦士(ファイターパイロット)だったのではなく、戦場で共に長きに渡って戦った戦友であり、心の通じ合った親友でもあったからだ。その友人を失う。そのことに対する自らの感情であった。


結局、この日の空戦で9機のMiG-21撃墜と引き換えに攻撃機7機と2機のF-4を失い五分五分の空戦となったが、機体は取り戻せるが、優秀な操縦士は取り戻せない。

そして祖国(彼らの生まれた町)に待つ家族へどう説明するか、俺はその事を考えてサラトガへ帰還したのである。


そして俺は睡眠をとろうとするが、自分のベッドで遺族に対する謝罪、いや2人に対する賞賛の文章を考えていたが、何故か自然に涙が出て来た。


明日死ぬのは俺かもしれない。生まれたばかりの双子の息子の為にも俺は死ぬ訳にはいかないが、戦死は避けて通れない道である。それが兵士だからだ。

※JDN=Japanese Defence Navy

日本国防海軍、北海道戦役後の1947年に大日本帝国海軍の名を改名したもの

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