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27話

昭和21年1月21日

釧路沖数十キロ上空

利根搭載星雲偵察機

「遠、近、遠、挟叉!」

『長門了解、今後も弾着確認を頼むぞ』「利根3番了解!」

長門ら戦艦に対して重巡利根の星雲水上偵察機は常に情報を送信し続け、砲戦を優位に進めさせていた。無論、スターリングラードからも観測機が飛び立ち着弾観測を実施しようとしたが空戦能力に優れた強風や瑞雲、零観の妨害に会い、多くが撃墜されてしまい、残った機も根室に撤退していた。

長門や霧島、山城、大雪の砲撃は容赦無くスターリングラードらソ連艦隊所属艦の装甲を引き裂き、乗員を肉片に変え、甲板のあちこちで火災が発生する。

だがスターリングラードやモスクワの必死の反撃で長門に先行した大雪は第1砲塔が破壊されてしまい、艦中央部の射出機(カタパルト) も後部艦橋共々吹き飛ばされていた。

長門と霧島は副砲の破損などがあったが致命傷となりうる被害は受けておらず、若干の浸水程度で済んでいたが、山城は老朽化が進んでいたのもあって、梯形陣で先に進む長門、霧島に置いてかれつつあった。しかし山城の闘志はまったく衰えていなかった。

「撃って撃って撃ちまくれ!」

砲術長がそう叫ぶと山城は浸水のよって全砲塔が火を噴き、敵艦隊へ向け765kgもの砲弾(厚い皮膚を貫く龍の刃)が飛翔する。

だが…………

「左舷より魚雷!」

「取り舵一杯!………間に合わない!総員衝撃に備え!」

山城艦長の味田正吉大佐はそう叫んだ直後に第3砲塔の真横に水柱が上がり、何かに掴まっていなかった多数の水兵たちが床に叩きつけられる。

『第3砲塔弾薬庫にて火災が発生!』応急指揮所から絶望的な報告が入り続いて『こちら左外側機関室。現在、室内浸水中、排水が追い付きません!』と機関室からも報告が入る。

「第3砲塔に注水急げ!右舷水密管への注水もだ!」

艦長はそう命じると左舷外側機関室からの排水もはやめる様に命じたのである。

同じ頃、大雪は第2砲塔被弾により遂に膝を衝いた。山城も艦内各所で浸水が発生し、老朽化が進む船体を痛め付ける。

そして巨大な爆発と共に山城は海底へと没したのである。

味田艦長以下、789名が山城(愛艦)と運命を共にし、895名が長門などに救助された。

巡洋艦どうしの殴り合いも重巡鳥海、摩耶、高雄が大破するも相手側1隻撃沈と2隻大破の戦果を上げたのである。

駆逐艦も第23駆逐隊旗艦雪風が船尾被雷により大破航行不能に陥るも、戦隊を組んでいた初霜と時雨が雪風を損傷させた軽巡チタを魚雷で撃沈するなど日本海海戦さながらの死闘になったのである。

最後の海戦の結果は帝国の勝利であったが、犠牲は山城及び大雪、松風を喪失、多数の艦が損傷し、帝国海軍の戦力の復旧には20年に渡る期間を要するだろうと山本総理は算出したが、幸いだったのは長門と霧島は最低限の損傷修理で済み、陸奥、榛名も修理完了が近いと言うことや、あと2隻の大和級を建造して経済援助と引き換えに米へそれを引き渡す計画もあった。

無論、知米派の山本総理だからこの様な大それた事が出来たのであると後世で評された。


1月27日

瀋陽から北京へ鉄道で向かい、北京駅に到着した鳩島を待っていたのは日本人民党員たちだったが……………

「鳩島万歳!」「帝国解体!新しい人民の国を建国しよう!」

多数の党員が彼の周囲を囲んだ瞬間だった。

「憲兵だ、鳩島史郎!ここで観念しろ!」

そうある憲兵が言うと人民党員がその憲兵を射殺する。

「うるさいぞ!権力の犬が!」

党員の1人が言うともう1人の憲兵がその党員を射殺、他の憲兵が鳩島を押さえつける。

そして党員たちも連行する。


鳩島の逮捕により人民党本部は取締りを受け、全党員のリストを入手。憲兵及び警察は全力を上げて彼らを取り締まった。


昭和21年1月27日暁前

日本海某所

帝国海軍屈指の猛将山口多聞中将は空母琉球の艦上にあった。

「司令、時間です……………」

参謀長の加来止男少将がそう言うと「うむ。第1次攻撃隊発艦開始だ!」と山口は命じる。

すると甲板上の友永丈一少佐率いる雷撃任務の流星と小林道雄中佐の急降下爆撃任務の流星に、護衛の坂井三郎少佐率いる制空隊の烈風戦闘機が次々と飛び立つ。

飛び立つ部隊へ甲板作業員たちは帽子を降りを(帽降れ)し思い思いの応援の言葉を投げ掛け、中には「若き血潮の予科練の~」と予科練の歌を歌うものもあった。それに対し友永少佐ら搭乗員は手を降り返す。

琉球から攻撃部隊が飛び立つとそれと同時に僚艦である飛龍、蒼龍、瑞鶴からも多数の攻撃機が飛び立つ。目標はウラジオストク軍港の施設破壊だ。


帝国海軍の乾坤一擲の最後の作戦の幕が遂に切って落とされたのである。

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