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19話

昭和20年7月1日10時過

函館市内

けたたましいサイレンとともに市内中を陸海軍の将兵や、昨年から試験的に採用が始まったWAC(女性陸軍兵)及びWAVE(女性海軍兵)が走り回り、それぞれの配置に就く。

「12時の方角よりツポレフ多数!」

ある陸軍大尉がメガホン越しにそう叫ぶと高射兵たちが40口径12.7㌢高角砲を旋回させ、砲身の仰角を高める。


一方、内浦湾上空では

俺、青田大悟は愛機、紫電改の機内で無線に耳を傾けていた。

そしてその数秒後偵察機から『敵機発見!凄い数だ…………』と通信が入り菅野隊長が『各機我に続け!』と言うと俺は愛機の槽陸を捨てた。同様に海軍の戦闘機が一斉に増槽を捨てて一斉に加速する。

10時半。内浦湾上空において日ソ戦闘機隊が遂に交戦開始。

最初に菅野機が斬り込みをかけるとソ連戦闘機隊は散開し、帝国陸海軍機との空戦に備える。

いずれにしろ両国の航空隊は精鋭中の精鋭だ。我が航空隊は共産軍と戦うべく国民軍支援の為に中国大陸へ派遣された経験がある猛者で、ソ連側は東部戦線を生き抜いた精鋭だ。

勇猛果敢な菅野直大尉は戦闘開始と同時に2機の農労赤軍機を撃墜し、続いて爆撃機に襲いかかる。だがソ連側もこちらの戦闘機を撃墜するなど強力なドイツ第3帝国空軍を相手に善戦しただけあって敢闘していた。


「…………貰った!」

俺はそう言うと機銃発射用のボタンを押し、照準器の中に収まる敵機に機銃を放つ。

すると照準器に収まった敵機が火を噴くが、自動消火装置が稼働しすぐに火が消えた。

「ちっ!自動消火装置だと?」

俺はそう言うと射撃ボタンを押し、機銃は再び火を噴く。

そして再度火を噴いた敵機は内浦湾へとコントロールを失って落下していく。

「敵機撃墜!」

そう俺が言った次の瞬間だった菅野隊長が『青田!お前の後ろに敵がいるぞ!』と言われた次の瞬間、敵機の機銃弾が機体を通り過ぎる。

俺は後ろの敵機を振り切る為に左右に何度も操縦桿を倒して愛機を何度も旋回させるが、胴体に被弾した様な音を聞いた。

(いくら漏洩防止装置があるとは言え、これ以上被弾したらまずい…………)

俺がそう思うと追撃していた敵機が突如、火を噴きながら海面へと落ちていったのである。

「な、何が起きた?」

俺がそう呟くと隣には杉田庄二少尉がをグッドポーズを俺に送っていたのである。

「杉田少尉、感謝します!」

俺が通信でそう言った次の瞬間だった。最悪の報告が入る。

『こちら菅野1番、敵爆撃機が市内へ侵入したそうだ…………くそ!』と菅野隊長が言うと陸海軍両方の操縦士は内浦湾から函館に舞い戻るが、函館市内は既に火の海に包まれていた。

「くそ・・・・・・」

俺はそう呟くとすぐに敵機に翼を翻し、祖国の空を汚すTu-3重爆撃機(B-17もどき)に対して執拗な銃撃を加える。

無論、目標は操縦室だ。ここを潰せば撃墜は確実だ。

戦略爆撃機のパイロットになど慈悲は与えなくてよろしい!!

菅野大尉もそう言っている。いや、そんなの当り前だ!!

俺はそう思いつつソ連軍の爆撃機2機を撃墜したのである。

そして基地へ戻ると愛機が傷だらけになっていた。

”ここまで頑張ってくれたな……”俺はそう思いつつ機体を撫でた。

「整備課のみなさん、頼みますよ!!」

俺がそういうと整備員は皆、笑顔で「ハイっ!!」と言ってくれた。

さて、東北に帰郷して写真の女の人に会ってこようかな……


一方で高射砲隊も奮戦したが、高々度爆撃の前には空しい威嚇射撃を強いられ、援護として到着した岩本徹三・坂井三郎両大尉率いる三沢飛行場の烈風隊が爆撃隊とその護衛に打撃を与えたが、爆撃隊の一部はからくも取り逃がしてしまった。

これを鑑みた山本首相は迎撃用に陸軍の火竜戦闘機と捜索用に海軍の新型レーダー(14号対空電探)の函館配備を命じたのである。


ともかく敵航空部隊の撃退には成功したが、内浦湾上空空戦の勝利の裏には函館への爆撃を許してしまったと言う敗北があった。

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