14話
10月3日14時過ぎ
戦艦大和以下戦艦5、重巡3、軽巡2、駆逐艦10からなる連合艦隊第1邀撃部隊はソ連北海艦隊の頭を抑え、T字を描いて一斉に射撃を開始する。だがソ連艦隊は既にこちらへ砲撃を加えていたので、やや弾着精度が上がってきているのがわかる。
そして暫くすると大和から見て1時の方角に巨大な水柱が形成され、しばらくして崩れ去る。
続いて10時の方角にも水柱が形成され、大和へ敵弾が少しづつ迫ってくる。
やがて大和の数m手前に巨大な水柱が形成され、崩れ去った水柱が大和の甲板を濡らす。
無論、大和も一方的に敵に撃たれ続けはしない。
狙いを精密に定めた大和の主砲が火を噴くと、その弾はソビエッキー・ソユーズの2時の方角に遠弾として水柱を形成し、武蔵や信濃に紀伊、尾張の砲弾もソビエツカ・ルシア、ベラルシア・ウクライナに対し遠弾を与えつつも着弾場所を近める。
戦艦同士の撃ち合いの最中、ソ連の軽巡と駆逐艦が大和らに対して迫っているのを軽巡神通座乗の伊崎少将が気付き、夕立以下駆逐艦を率いてそれらに対する牽制行動を始めたのである。
神通は主砲、長10cmで軽巡モロトフに対して射撃を加え、速力を上げて突撃する。
無論、モロトフは3連装18㌢砲で容赦無く神通に砲撃を加え、瞬く間に神通は炎上した。かの様に思われたが、神通は炎上そつつも8本の酸素魚雷を放ち、艦橋が炎上しているとは言え、主砲は全て動いていた。
モロトフは回避行動に移り、何とか魚雷をかわしたかと思いきや断末魔の神通が発射した第2射目の魚雷が推進機を破壊し、更に駆逐艦夕立の放った魚雷が船腹を切り裂かれ、機関室浸水により航行不能に陥ったのである。とは言え駆逐艦曙は軽巡マキシム・ゴルキイによって撃ちすくめられて轟沈し、荒潮も雷撃で2つに船体を引き裂かれ轟沈していた。他にも天津風は船首喪失故に、潮は砲塔を2基とも損傷し、台東海軍基地へ撤収を開始するなどこちらもそれなりの被害を受けていた。
そして距離25㌔、大和の砲弾がソビエッキー・ソユーズの船体に直撃した次の瞬間、ソ連戦艦の放った砲弾が紀伊に直撃、同艦左舷高角砲4基が一斉に吹き飛ばされたのである。
大和艦橋
戦闘中なので、俺、浜村清次郎は艦長として当然の如く艦橋にあった。
「紀伊被弾!」
通信士官がそう言うと伊藤整一大将は落ち着いて「で、紀伊はまだ戦えるか?」と聞く。
「紀伊より入電。”我、被弾ス、ナレド戦闘・航行共二支障ナシ”との事です!」
うん、紀伊もさすが大和級だ。艦長の俺や伊藤長官も大和級の装甲を信じている。だからこそ進んで敵の懐へ切り込もうとする。
さぁ、地獄の宴はこれからだ!
帝都に手出しすると言う意味を奴らに教えてやろう!!
地獄の宴が始まろうとしていたころ、森下艦隊は台湾海峡の北側でソ連艦隊が通過するであろう地点で多数の島に隠れて敵のレーダーを阻害しつつ待機していた。
そして我が戦力は以下の通りである。
第2遊撃艦隊
第3戦隊
旗艦(司令 森下中将)
戦艦 長門
森下司令直率
戦艦 山城、金剛、霧島
付属艦隊
重巡洋艦 愛宕、鳥海
駆逐艦 初霜、時雨、雪風、電、雷、漣
第4戦隊
旗艦(司令 志摩少将)
戦艦 陸奥
志摩少将直率
戦艦 比叡、扶桑、榛名
付属艦隊
重巡洋艦 高雄、摩耶
駆逐艦 若葉、浜風、舞風、暁、響、曙
空母部隊
旗艦(司令 角田少将)
空母 瑞鶴
角田少将直率
空母 翔鶴、蒼龍、飛龍
護衛部隊(司令 松田少将)
旗艦
航空戦艦日向
松田少将直率
航空戦艦 伊勢
航空巡洋艦 利根、筑摩、最上、三隈
軽巡洋艦 能代、矢矧、秋月型駆逐艦6隻
であった。
この帝国海軍第2遊撃艦隊とソ連艦隊艦砲射撃部隊はこの日の夕刻、遂に砲火を交えるのである。