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9話

5月5日午後3時27分

ソ連軍の最前線基地となった札幌の空襲は失敗に終わるが苫小牧南部の制圧は完了した。

木村少将と艦長の渋谷大佐は作戦完了と同時に栗林大将直々に司令部参謀として召集、青森経由で弘前市へ向かう。

それと同時に釧路奪還部隊司令に指名された阪匡身少将が扶桑へ移乗、艦長にはに前武蔵副長の加藤憲吉大佐が就任。

午後5時

奥尻島奪還作戦の為に構成された1・2号輸送船からなる上陸船団が重巡羽黒及び軽巡湧別と多数の駆逐艦を護衛に伴い航行していた。

駆逐艦満潮艦橋

羽黒(旗艦)より入電、先程レーダーに不審な小型物体が反射し、水中聴音機にも変な音が録音されている模様です」そう通信兵が満潮の艦長で中佐の俺、小宮春兵に対して伝えてきたので俺は「そうか…………レーダー及びソナーの見張を厳重にしろ!」と命じた矢先だった、駆逐艦山雲に魚雷が命中して同艦の船体が一瞬で真二つに裂かれて海面へと没したのである。

「艦長、ソナーに反応!…………推進音は我が国の潜水艦のものではなくソ連製のものです!」

ソナー員もそう報告するので俺はすぐに対潜命令を下す。

すると爆雷投下軌条とK砲(三式爆雷投射機)要員が操作を船尾に向かい作業を始める。

それと同時に主砲である12.7㌢連装砲を潜水艦のいるであろう方角に指向する。

数秒後、三式水中探信装置(ソナー)乙がピンガー(発振音)を放ち、敵潜水艦の場所を改めて捉えると遂に俺は「右舷爆雷投射!」と叫び、爆雷は圧搾空気によって投射されたのである。

そして1分近くたつと巨大な水柱が立つと数秒後に潜水艦の残骸が浮かんできたのである。


だが、一方で新鋭の夕雲型駆逐艦山雲も全ての乗員と共に海中へと没していったのである。

そして5時半過ぎ、遂に奥尻島上陸奪還作戦の火蓋が切って落とされたのである。

幸運にも奥尻島は小さく、欧州の大平原(独ソ戦)や北海道で破壊の限りを尽くしたT-34戦車が大きさの関係故に配備出来ないのに対して帝国陸軍の1式中戦車(チヘ)は小柄なので1号輸送船に乗せられて上陸する事が出来たのである

だがソ連軍の85㍉の高射砲や野砲が1式中戦車(チヘ)に対して大きな戦果を上げ、更に携帯対戦車火器によって輸送船の一部が擱座する被害を受け、第1次奥尻島制圧は失敗に終わったのである。

が、沿岸部のソ連兵の多くは羽黒の艦砲射撃によって挽き肉に変わり果て、沿岸部の陣地は大なり小なり被害を受けていた。

もっとも、苫小牧のソ連陣地に破壊の限りを尽くした扶桑ほどの破壊力は無かったが。

そして俺の乗る満潮以下5隻は擱座した輸送船の介錯を行ったあと、函館へ離脱した。


一方、扶桑は襟元岬南方を回って釧路へ向かっていた。

6日午前7時、釧路奪還部隊は釧路まであ数㌔と迫っていたのであった。この日の天候は北海道東部特有の濃霧であったが、扶桑のレーダーは多数の高速艇を捉えたのである。

「高速艇…………魚雷艇です!」

そう見張りが報告すると加藤艦長が「副、高角砲射撃用意!」と命じると15㌢副砲及び12.7㌢高角砲が仰角を上げて照準を高速艇に合わせる。

「副砲及び高角砲への測距儀、射撃盤、電探、高射装置との連動を確認にしました!」

そうレーダー員が報告すると艦橋最上部の見張台からも『敵高速艇、複数接近中!』と砲術長から報告が入った。

「……………よし撃ち方始め!」

加藤艦長がそう命じると林立した多数の左舷副砲と2基の高角砲が数㌔まで迫った高速艇に対して一斉に火を噴く。

扶桑の斜め前、10時の方角を航行していた駆逐艦白雪と8時の方角の響も主砲射撃を開始。

この弾幕で3艘が沈没、2艘が大破炎上したが、残り22艘が魚雷発射可能位置に到着。

一斉に魚雷を放ったのである。

扶桑ら日本艦隊は一斉に回避行動に移り、何とか最初の魚雷を波によって過敏な信管を早爆させて回避したが、回避出来なかった扶桑は艦橋の真横に直撃する。

阪少将ら扶桑に乗っていたものは皆、その衝撃を受け、一部は床に倒れる。

そして駆逐艦白雪にも命中する。同艦は船体中央部で真っ二つに折れて轟沈。駆逐艦欅も航行不能となったのである。

が、扶桑は若干の浸水が生じた以外の被害は無く、魚雷艇を撃退し、欅の生存者を収容し、釧路へ向けて航行を続けた。

そして釧路港まで20㌔地点に到着すると附属の空母部隊の空襲に先駆け、艦砲射撃を開始。

同日正午、カムチャスカから南に500㌔に展開している第1航空戦隊は旗艦の空母琉球を始めとした各艦から軍港襲撃部隊を発艦させつつあった。

琉球艦橋

「第1次攻撃隊発艦完了!」

そう通信士官が1航戦司令の山口多聞中将に報告すると「御苦労、第2次攻撃隊も急げ!」と山口は呟いた。参謀長は加来止男少将、山口とは前2航戦の旗艦である飛龍時代から親しい関係を持ち、山口と同じ猛将だ。

琉球攻撃隊は淵田美津夫大佐が率いる流星攻撃・爆撃機36を中心に、護衛の烈風戦闘機24と事前偵察及び誘導の彩雲と彗星偵察機に、目標指示用の電探を装備する天山各3の偵察部隊で構成されていた。

目標はペトロパブロフスクの軍港エリアだ。

先の室蘭湾海戦の被害を受け、命辛々ウラジオストクに逃げ込めた新鋭戦艦以下12隻を除く9隻がこの港に停泊していた。

この前の戦闘で大活躍した損傷軽微な戦艦ガングードが港の外側に停泊していた。

「よし、目標を見つけた…………吉田少尉、準備は良いな?」と俺、岩村和也大尉が言うと吉田慎三少尉は「はい!」と言う。

因みに俺と吉田は雲龍型空母剣の流星攻撃機の搭乗員で、去年からの付き合いだ。

俺は機体をしばらく上昇させるとふたたび機体を下方へ向けたのである。つまり急降下爆撃の準備に入ったのである。

苛烈な対空機銃の射撃を縫って俺は敵戦艦に狙いを定める。

同時に敵対空機銃を牽制すべく主翼の20㍉及び13㍉機銃のトリガーを推した直後に「用意っ!ってぇええー」と叫ぶと500kg徹甲爆弾を敵艦に向けて投下する。

爆弾を投下した機体はふわりと浮き上がり、俺は操縦桿を手前に引いて水平に戻した。すると少し速度が上がった気がした。

やがて機体が水平に戻ると物凄い衝撃が後方から感じられた。

しばらくして吉田が「敵艦炎上中です!」と報告してきた。

どうやらさっき投下したヤツは敵艦の艦橋で炸裂した。だが、それ以外の被害は無く、やはり航空攻撃では戦艦の撃沈は困難であるとわかったのである。


が、それでも大きく戦闘能力を削ぐことは出来ると証明されたのである。

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