表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
957/1045

杯ノ九百五十七

 「実は…ねっ。私も自信はあったりするんだ。あっ、貴方たちが褒めてくれた…勇雄(いさお)と、静馬(しずま)が褒めてくれた瞳ほどじゃないのよ。けれど…ねぇっ。この国の言い習わしにもあるでしょう。『命の様なもの』って…。」

 くすぐったそうに目を細め、少しだけ肩を(すく)める。含み笑いも、身体も、小さく纏めて、『気持ち』の一(しずく)も零さぬ様に…。彼女の浮き立つ心持ちが、見て取れる。

 目下にそんな『不発弾』を抱えた静馬は、困惑と、背筋を()う生ぬるさを隠して、

「そう…だろうな。」

 笑い返したのはともかく、『安堵の吐息』は芝居っ気が過ぎたな。まぁ、『彼女に余計な熱を加えたくない』と、『出来る事なら頬の中の熱を逃がして欲しい』と思うあまりの、過剰反応だろう。

 静馬の慎重さを欠いた態度に、月紫は…紫色の瞳を見開き、瞳孔を縮め…ニンマリッ。さも楽しそうに微笑む。

 「やっぱり、静馬もそう思う。…本当かしら。私を茶化す気も起きなくて、ぞんざいに、当たり障りのないこと、言っただけじゃないでしょうね。」

「いや、滅相もない。」

 「その割には…怪しいわねぇ。まっ、信じさせてもらう…そういう事にしておくわ。」

 あっさり、『信じるか、疑うか』、『Yesか、Noか』を選ぶほど初心(うぶ)な娘とは思えない。思えないが…クスクスッと屈託のない笑い声を漏らす度、細い肩が揺れる。こうした姿を見れば、ご機嫌は麗しいままの様だ。…一先ずは命拾いしたか。

 しかしこの『不発弾』、感情の沸点が低いのやら、高いのやら、解らないところもある。依然として、予断を許さない状況に変わりない。

 まぁ、基本的には、取り扱いを間違いさえしなければ…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ