表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
926/1045

杯ノ九百二十六

 「まさか、あんたの口から、こうも痛烈なのが聞けるとは…。あんたをほっぽり出して、逃げ出さなかった甲斐があったな。いやーっ、本当、長生きはしてみるもんだ。」

 馬鹿に上機嫌。…と言うより、『馬鹿な奴』を気取ったニヤケ面。感心している様でいて、冷やかしている様な口振りも、鼻持ちならない。

 奥歯を噛み締めて、睨み目の一つも聞かせてやりたいところ。だがそこは、グッと堪え…肩に乗せた右手も軽く浮かせ…月紫が穏やかに尋ねる。

 「静馬の生き甲斐になるなら、どんな事であれ、嬉しいわ。けれど、私には思い当たる節がなくて…何と言って喜んだら好いのかしら。」

 気付いていない事を誤魔化す為、悩ましげな声色で『気付いていない』振り。そうして惚けた言葉遣いをしていると…段々、腹立たしさが増してきた様だ。表情を変えず、ジワジワと右手を浮かべていく、月紫。

 彼女の気も知らず、静馬はさも面白そうに口の端を吊り上げ、

「『思い当たる節がない』…流石は、血生臭い人魚姫さま。だんまりの決め方も一味違う。それとも、『皮肉』の言葉だけは奪わないでくれた…気が利く『海の魔女』に感謝すべきか。」

 「ひっ、皮肉っ。」

 声が引っくり返ると同時、上に向かっていたはずの月紫の右手が、ゴンッ。天地を失ったかの如く、細い肩へ落ちてきた。…それも、かなりの威力で…。

 当然、彼女の小さな身体は再び、右へ傾いて、

「おいおいっ、題材が題材だから、芝居も劇的になるのは仕方ないが…。もう少し腕力は抑え気味で頼む。あんたの骨格だと、どこが折れたり、外れたりするか分かったもんじゃないし…だいたい、子供の頃の俺がこんな熱演を見せられたら…間違いなく、泣きべそ書いているぞ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ