表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
900/1045

杯ノ九百

 割合、本心から高い評価を得たと…いや、正当に査定されたぞと内心、はしゃいでいるみたいだな。

 深々と頭を垂れて頷く、静馬。直角に下がった視線から胸元を隠すかの様に、月紫は右手でシャツの首を摘み上げた。

 「()き付けたのは私だけれど、でも…ちょっと、簡単すぎないかしら。人魚なんて…あーっ、暑い、暑い。」

 この岩肌のただ中で、暑いはずがないだろう。…と言う台詞は、静馬が飲み込んだのだ…読者諸賢に置かれても、どうぞ、勘弁してやって欲しい。

 彼に見せているのか、隠しているのか。シャツをパタパタッして喉元を仰ぐ。月紫のその照れた顔は、実際、熱っぽく上気して見える。しかも感心に、両脚とも膝は伸ばしたまま。

 静馬はきめ細かな首筋を、彼女が仰ぐ度に血で染まっていくシャツを見つめ…思う。

 (親父はよく、こんな…やっかいな女と付き合って居られたもんだ。これはこれで、家族を選ぶ決断をしたのとはまた別に、男として尊敬できる一面…として、良いのやら、悪いのやら…。あるいは、悪いからこそ、尊敬できるのか…うーんっ…。)

 心中での唸り声が、覗き込む様な眼差しとなって顔に表れる。それは、見方によって厳しくもあり、スケベにも見える目付き。

 月紫は微笑みで、一層、口の端を引っ張り上げる。そして、とても人魚姫とは思えない、牙と言う片鱗を垣間見せながら、

「確かに、はぐらかされてあげるとは言ったわよ。」

 嬉しさと、物足りなさを交互に弄ぶ様に、首を右へ、左へ、傾げ出した。

 視界の中を、金髪がゆさゆさとやり始めたので…静馬の意識も揺り起こされたらしい。

 「んっ、あぁっ。」

 彼のそんな生返事でさえ、紫色の瞳には気恥ずかしさの裏返しとしか映らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ