杯ノ七十二
不気味だ…とてつもなく不気味な笑顔だ…。
例えるなら、そう…子供が残酷と知りつつ、恐ろしいと思いつつも、生き物を『解剖』する事に興味を抱いてしまった時の様な…少しの後ろめたさと、抑えきれぬ興奮を表われている…そんな、笑み…。
それで一体、青年はこれから、何をしでかす積りなのだろうか。…想像するのもおっかない…。
青年は、ジンーズの裾からポタポタと、飛沫を舞台上に撒き散らしながら棺の前へ。
そして、足元から微かに聞こえる雨垂れの様な音を耳にしながら、棺の中の少女を見下ろして…青年はまず、洗い清めた両手を…ゆっくりと…祈る様に合わせた。
端然と閉じた瞳とはあべこべに、口の端を皮肉っぽく持ち上げたまま、
「あーっ、えっと…今から、レディーに対して甚だ失敬な真似をしようかなと思っています。そう言う訳なんで…もし君が吸血鬼では無くて…ちょっと考え難い事だけど、俺がここに訪れる数時間くらい前に、偶然、何かの都合でここに埋葬された、ごく普通の人間の、金髪美少女の死体だった場合…その場合だと無為に君の身体を…本来は厳粛なもので無ければいけない君の死を、辱めることになるかと思う…。」
と、青年はほんの一時、口元を引き締めて、
「一言くらい、何か言い訳できれば良いだけどさ…ごめんな、俺にはなぁーんも、立派な理由とか、大義名分みたいな物の持ち合わせが無いんだ。それに…この際だからもっと正直な事を言えば、俺がこうして手を合わせてるのも、君の冥福を祈ってるって言うよりは、君が吸血鬼であって欲しいっていう神頼み…の様なものなんだ。もし君が吸血鬼でなかったとしたら、俺は…かけがえない…恨みのやり場を無くす事に成るから…。」
杯ノ七十二をお読み頂き、ありがとうございました(^v^)
朝起きる度、肌寒さにヒィヒィ言うとりましたが…山の麓で農業をしている友人(土地持ちのお坊ちゃん)によると、『自分とこではすでに、朝方は10℃下回る』、んで、『それも、自分は一番冷え込む時間帯から仕事に出ているよ』とのこと…。
実に朗らかに、笑って聞かせるお坊ちゃん君に言いたい…マジで、頭が下がります。私目がただただ軟弱で御座いましたm(__)m
何だったら、ひ弱なもやしっ子の、私の性根も叩き直してくらはい。…あっ、ダイエットが先かな…うん…。
では…ずいぶんと底冷えが辛く成って参りました。皆様も、じっと梟小路の小説をお読みになる際は、お体を冷やさぬ様に温かくして…じっくりと、『貴女を啜る日々』をご堪能下さいませ。




