杯ノ五十一
壁面に密着した懐中電灯から伸びる、光源と言う有るか無しかの寄る辺。青年はそれすら睨み付けながら、洞窟を更に奥へと進んで行く。
青年が一歩進む度に、つっかえ棒となった右腕の先にある懐中電灯が、コツンッ、コツンッ、岩壁を叩いた。その音が洞窟内を反響するのを耳にしながら、青年は視覚では無く、聴覚でこの洞窟の全体像を把握し始める。
(少しずつ、洞窟の天井が高くなっているな。扉から入ってすぐは、顔を上げると頭がぶつかりそうだったって言うのに…いつの間にか、上から返ってくる物音が遠くなった様にも感じる。それとどうやら…この洞窟、左に向かって湾曲しながら奥へと続いているみたいだ…この感じだと、俺が辿り着くのは…。)
と、青年の右足のつま先が、岩壁から突き出した出っ張りを蹴りつけた。
その藪から棒な痛みに、青年は瞬きも無く顔を強張らせながら…しかしながら、こう狭い場所では地団太を踏むことも出来ない…。
青年は、足首を揺す振られる様な痺れを、面の皮をヒク付かせて堪えると、憎っき出っ張りに足を掛けた。
左へと曲がって進む洞窟の構造に逆らわぬ様に、懐中電灯を携えた右腕はピンと伸びたつっかえ棒としたまま…その代わりに、リュックサックを肩に担いだ左腕を、通路の狭さに応じて、万力の様にググッと折りたたむ。
それは岩壁の出っ張りを乗り越えた、ちょうどその時だった。洞窟の狭さが左肘を限界まで曲げさせ、青年の頭が左耳を潰す様に肩に押し付けられたのは…。
リュックサックのアーム部分の感触を頬に感じながら、洞窟の闇をさわさわと流れてくる懐中電灯の光から瞳を閉ざす。…すると、青年の頭の中へと聞きなれた…懐かしい音が入り込んで来た…。
杯ノ五十一をお読み頂き、ありがとうございました(^v^)
きょ、今日は…朝からごたごたした所為で、普段通りの早朝執筆が出来ませんでした…。
まぁ、それでも、予定通りに本日分の投稿をこなせたのは…勿論、夜に書き上げてから、即更新したからなんですけども…これはキツイ、このペースは塩梅が悪過ぎる。
やはり、七百字ぴたりでの更新を続けるためには、本文は朝の内に書き上げてしまうという流れが必須ですな(^v^)
では、また…七百字未満で投稿すれば良いという安直な回答を直視できずに、あえて茨の道へと迷走する、次回の梟小路の文章でお会いいたしましょう。…はぁ、今日に限っては、疲れた…。




