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杯ノ五

 無論、青年が蹴破った、現在は貴重な明かり取りの一つと成っている扉の片方は覗いてだが…。

 それでも、これ程の美観を今の今まで留めていたのだ。全体的に古めかしいとは言え、青年がそれ程に、不気味な何かを感じる理由など…いいや、どうやらこの『整然とした』様子こそが、青年に違和感を与えた張本人だったようだ…。

 青年は、埃の堆積する足元に光の矛先を定めて、しばし黙考する。

 (そう言えば、昔見たテレビ番組で自称霊能力者のおっさんが言ってたな。肝試しで有名な場所…霊に取り憑かれた様な建物にも、ヤバさには段階があるんだって…。普通、肝試しに来た奴らは、怖さを少しでも紛らわそうと躍起になって、そこら辺の窓やら、家具やらを壊して虚勢を張る。そんで、のぼせ上って落書なんかを始める。でも、そういう事が出来るのは、そこが大したことも無いお化け屋敷だから…本当に危険な場所には、落書きどころか、ガキが壊してまた形跡すらも見当たらない。そう言う場所には、人の手が入る事を許さない空気がある。侵入を拒む魔物の意思がある。それから…確か、こんな脅し文句であの番組は締め括られていたっけな…。)

 何度目かの落雷が、更なる雨を、更なる風を運んで来た。

 口の開いた扉から入り込む風が、埃をふわりふわりと奇術の様に浮き上がらせ…それはまるで、無数の魂が青年の横を通り過ぎて行くかの様に見えた。

 そうして、先に立って大階段を上っていく『魂』達に見とれながら、青年は胸中で引っかかっていた言葉を吐く。

 「もし、そんな場所を訪れることが出来るものが居るとすれば、それは…魔物に招き入れられた者だけ…か…。」

 ビニール素材のレインコートは蒸し風呂の様だった。

 最早、完全に意地に成っての七百字ぴたりキープ。勿論、意識しては書いているとは言え…文章の繋がりをぶった切ってまで、七百字での投稿に拘っている訳でもないもんで…我ながら、良く続くもんだと感心しています。

 まっ、この、設定した範囲ギリギリまで活用するっていう意気込みが、連載のモチベーションを保たせてくれている節もあることだし…出来うる限りは、七百字ぴたりの投稿を続けて行こうと思います。

 それではまた、次の梟小路の七百字でお会いしましょう。(^v^)…っと、言ってしまった手前、次回も、七百字ぴたりで決定ですね…。

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