杯ノ四
…っと、青年ははたと思い出す。自分はまだ、一歩もこの洋館に足を踏み入れては居なかったのだ。
そして、穴倉の前に立ち尽くして居た自分に…父親との思い出に浸って、それだけで目的を達成したような気になった自分に…ここに来たばかりの時は確かに抱えていた、猛烈な腹立たしさがぶり返してくる。
青年は忌々しそうに奥歯を噛み締めると、一歩、また一歩、倒れた扉を踏み固める様に、ぐしょ濡れのスニーカーで洋館の中へと踏み入った。…濃紺のスニーカーに踏みしめられた扉は…こんな山奥にあって奇異なことに…ずいぶんと乾燥していたらしい、青年の重みを受ける度に歯ぎしりする様な音を上げた…。
高そうな絨毯に靴底の泥を擦り付けながら、青年は玄関ホールのほぼ中程まで歩み入る。
懐中電灯の光を、腕を振り、上体を振り、果ては身体全体でゆっくりと回って、洋館の各所に差し向ける青年。
光芒の落ち着き先が中々定まらないのが、青年の居心地の悪さを露わにしている様で、薄気味悪い。…それは確かに、一小市民の著者としても、こんな、どこに出しても恥ずかしくない様なご立派な洋館を訪れたならば、それなりに窮屈な思いをすることだろう。例え、この洋館が化け物の巣で、あるいは、化け物の体内そのものだという圧迫感が無かったとしてもだ…。
しかし、万難を排して、住居侵入罪に問われるかも知れない未来予想図を無視し、ここまでの暴挙にでた青年の態度としてはいささか気忙し過ぎないだろうか。何も、おどろおどろしいオブジェやら、装飾の類が施されているという訳でも無し…。
それに、多少は…いや、かなり埃に塗れているとは言え、家具も、調度にも壊れている物は無い。
本日は、四話目を投稿いたしました。今日も今日とて、七百字ちょうどでの更新…フッ、勝ったな(^v^)
それはさて置き、どうやら三日坊主の峠を越えることは出来たようです。これも一重に、読者様方のお陰だと心得ております。
それで、次の目標は、そうですねぇ…物の本によりますと、『21日間続ける事が出来たなら、それは習慣として定着している』そうなので…とりあえずは三週間。
初投稿から数えて三週間目までは、休まず、連続で更新することにしましょう。
ですが、三週間かぁ…21話目を更新する頃には、『あらすじ』くらいは書ける所まで物語が進んでいると良いなぁ…。




