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杯ノ三十七

 (まっ…そりゃまぁ、馬鹿だよな、俺は…。何せ、親父の事も…母さんの事も…この館も、吸血鬼も…全部、馬鹿馬鹿しい事だと思っていながら…その癖こうして、親父が他所(よそ)の女に送った…それも、自分よりも二百は歳上のババァへの贈り物を、しげしげと眺めているんだからな。)

 人は朝目覚めたならまず、何をするだろうか。その問い明快に答える様に、青年は大口を開けて欠伸をした。すると…、

(んっ、待てよ…。)

と、欠伸をして脳へと景気良く酸素が送り込まれた所為か、思考の上に重く垂れこめていた雲も晴れた様だな。

 青年は滝の側から流れ込む月明かりに任せて、懐中電灯を下ろす。

 「確かに、ババァに送るには掛け軸ってのも悪くは無いかもな。俺の読みが浅はかだったよ、親父。」

 言い終えた後、肺に残った息を楽しげな含み笑いで吐き切ると、青年は再び腹一杯に空気を吸い込む。そうして十分に、月明(げつめい)が頭の天辺へとぶつかるのを堪能して…青年はゆるゆると、口から長い息を吐き出す。

 その息に押されてまた、そして今度は先程よりも大きく、掛け軸が左右に揺れ動き始める。

 (今のは…。)

 その時だった。青年は掛け軸の背後に何かを見止めたのは…。

 慌てて、右手で掛け軸を引っぺがそうと…だが、同時に左手の懐中電灯で正面を照らし出そうとするものだから、どうにも腕がもつれてしまう。

 青年はとりあえず立ち上がると…酷使した(もも)を右手で揉み(ほぐ)しつつ、懐中電灯を握った左手で小器用に、掛紐を金具から摘まみ上げた。

 掛け軸はその指から滑り落ちる様に、自らを蛇腹折りに畳みながら床の間へと落ちていく。

 …青年は、自分の右肩を照らしていた灯りを前に向ける。

 杯ノ三十七を読んでやってくださって、ありがとうございました。

 そうそう、昨晩は、投稿が日付の変わる間際になってしまい、申し訳ありませんでした。

 どうしても、平日は、休日に比べて投稿時刻が遅くなってしまうのは仕方ないことなのですが…だいたい、21~23時までには更新できる様に心掛けたいとは思っています。ちなみに、土曜、日曜は、18時くらいを狙って更新しております(^v^)

 今回は、昨晩が遅くなった分の帳尻を考えて、少し早めに投稿させて頂きました。…度々、投稿のタイミングを変えて…かえって不親切だったかな…。まっ、次からは上記の時間帯を目掛けて更新させていただきますので、これからも『貴女を啜る日々』を、よろしくお願いいたします。

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