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杯ノ二十三

 流れ落ちる水に削り出された複雑な岩の形が、ざぁざぁとノイズの様な大音響を奏で…その音色もやがては、静寂に溶けて耳鳴りの如く小さくなりながら、水蒸気となって上っていく。どうやらこれが、さっきまで、青年が階段の上で聞いていた『雨音』と、『耳鳴り』の正体のようだ…。

 次に青年は、左肘が板張りの床に擦れるのも気にせずに、反らした喉を濡らす水滴を左手で拭った。

 そして、否応もなく飛び掛る水滴に顔をしかめ、瞬きを繰り返しながらも、青年は眼下に広がる情景を覗き込んだ。

 そこには足場と言えそうなものは存在せず…25メートルプール程の容積は優に有りそう滝壺が、大きく喉の奥を見せつける様に待ち構えていた…。

 青年は生唾を飲み込んで、身を起こす。その拍子に、ガタンッと、(すぼ)めたリュックサックの口から飛び出した、例の…円柱形の滑らかな木の棒が、左隣の板戸を小突いた。…どうやらさっきも、こうしてこの木の棒が板戸に引っ掛かり…その偶然が、青年を滝壺への滑落(かつらく)という憂き目から救ったようなのだ…。

 青年は立ち上がると、板戸を、一枚、一枚、動かし始めた。板戸が戸袋にしまわれる度、カツン、カツンッと鹿威(ししおど)しの様な音が月夜に響く。

 そして青年が全ての板戸を片付け終えたころには、魔除けの音に切り取られた月光が、青年の居る部屋の隅々にまで行き渡っているのであった。

 青年はぶり返してきた背中の痛みに空咳きを吐きつつ、部屋の中央に…。それから、取り上げた懐中電灯のスイッチを切ると、板戸の取り払われた月夜へと振り返った。

 月明かりに顧みれば露わになる。この部屋は青年が思った通り、十二畳ほどの広々とした間取りの和室。

 『貴女を啜る日々 杯ノ二十三』をお読み頂き、ありがとうございました(^v^)…いつかこういう日が来るとは思っていましたが…本日分の文章作成は…眠かった…。誤字脱字が無いと良いんですがね。

 まっ、それはそれとして…この小説、吸血鬼は出ないのに、埃ばっかり出てきますなぁ。描写に力を入れた結果とは言え、我ながらもうちょっと捻りが欲しい所っスね。埃塗れの物語から、血塗れの吸血鬼譚にグレードアップする日を目指して、精進するといたしましょう。

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