杯ノ二百八
「それもそうねぇ。…うふふっ。」
「よく笑うお婆ちゃんだな…。今度は、何が可笑しいだ。」
「だって…まるで学者様と話しをしているみたいなんですもの…。ううん、からかって居る積りじゃないのよ。ただ、勇雄の息子が、こんなに賢い子に育っているなんて…時が経つのは早い物よねぇ。」
「そりゃあ、十数年を丸々寝て過ごしてれば、早く感じるのも当然だろ。それに、これ位の事は、バライティー番組をアホ面して見てれば、誰でも知っている事なんだよ…。」
「バライティー番組…。あぁ、テレビの事ね。すごいのねぇ、最近のテレビって…私も頑張って、寝過した分を取り戻さなくっちゃ。でも、その前に…ねっ。」
「あぁ、俺も、うんちくを言い終えないと、死んでも死に切れそうにないからさ…。これだけは、あんたの思惑通り、一緒にバライティー番組を見てやれない分も…話して置かないとな…。」
「うん、ぜひ続きが聞きたいわ。さぁ、頑張って…。」
「そうだよな…頑張らないとな…。死ぬ前にまだ、聞いて置きたい事もあるんだ…。次は…太陽の光を浴びるマイナスの面を喋ったから、お次は、プラスの面を言うんだったか…何だけな…。」
「健康に良いって事かしら…それとも…。」
「そうそう、それだ。だから太陽の光は…人間の場合は、ビタミンを体内で作り出すのに必要で…それから、後は…体内時計を…。」
「時計…。時計がどうしたの。ねぇ、静馬君…静馬君たらっ。」
「そんな大声で捲し立てなくても、俺はまだ死なないよ。…けど、どうしても心配なら、俺の頬っぺたでも抓って居れば…ひゃっ、ひゃっぱり、はし。…やっぱり、話し辛いから、この案は無しで頼むわ…。」




