杯ノ百九十八
こんな寒々しい洞窟に居ながら、そして、手足は凍りついた様に冷たく、重いと言うのに…静馬の声には、まるで湯上りの様な、心地良い虚脱感が漂っていた。
『私を置き去りにしようなんて、許さない。』…童女はそう声を荒げる様に、眉を吊り上げると、
「私に対する恨みの気持ちは…少しも無いと…。」
語気はあくまでも穏やかに、しかし、乱れる彼女の心は隠しきれない。
静馬は、『何一つ無い』と言った自分の言葉が、真実であると示す様に…真実なのだと信じ込もうとする様に…気の毒そうに、そんな童女を見つめる。
「多分、貴女への恨みなんて、初めから無かったんだと思います…。それにようやく気付いたのは、貴女の喉まで潰した後でしたけど…。だから…仮に、貴女の心臓へ杭を打った事を許して貰えるのだとしても…二度目の、喉へ杭を突き刺した事までは許されないと思っています。むしろ、恨まれるべきなのは自分の方だとも…貴女には、薄情な事を言って居る様に聞こえるかも知れませんが…。」
すでに表情筋に張りも無く、申し訳程度に顔を歪めた静馬の笑み。しかしながら…その、何とも魅力的な事は…。あらゆる束縛から解放され、ちょっとした悪戯心と、好奇心でのみ笑って居られる…そんな今の、静馬の心模様が透けて見えるかの様であった。
益々もって、紫の瞳に羨望の陰りを強くした童女は、
「本当よ…本当、薄情者だわ…。」
と、忌々(いまいま)しげに吐き捨てた。
その様子を見て、静馬はふやけた笑顔から、擦れた声で咳き込む。…最早、血反吐も出ては来ず…よく持った彼の命の火も、間もなく潰えるだろう…。
居並ぶ灯火へと吸い込まれる様な、目眩。その直中で、静馬が口を開いた。
杯ノ百九十八を読んでやって下さり、ありがとうございました(^v^)
今回で、『変更案』が採用できない理由のお話は、最後と成ります。それでは早速…。
【『数話分を1パートに纏めて投稿。目次に表示される絶対量を減らす。』の場合】
最後のこの案は、これまでお話してきた三つの不採用案とは違い、完全に梟小路の心情で否決されました…。
具体的に理由を述べますと、一つは、『後書き』の処遇が問題として持ち上がります。
『後書き』も本文の中に含めてしまう。あるいは、『後書き欄』に3話分纏めて掲載する。それとも、『後書き集』として別パートに…など、色々と考えてはみましたものの…そのどれも選ばず『後書き』を含めないのが、見栄えの良いのは明らか…。
それと、もう一つの理由としまして…きっちり『連日更新』を続けて来た訳ではありませんが…再投稿する事により、『更新日時』の欄の並びが無くなってしまう。それはちょっと、惜しいかなと思いまして(^v^)
さて、これで、『サブタイトル』に手の施し様が無い事をご説明し終えました。
んで、『貴女を…』のシリーズ化に関しても、お伝えすべき事は、お話し終えたかなと思っています。まぁ、次回の『後書き』までに思い付きましたなら、しれっと、『小説管理』のお話の続きとしてこの場を利用しますので、よろしくお願いします。
それでは、また、次回の梟小路の綴る文章でお会いいたしましょう。