杯ノ百九十二
静馬の瞳には、童女の姿がそんな風に映った。
人差し指を第二関節の所で折り曲げ、その背を唇で銜えている。そうして置いて童女は、スッと息を吸い込んで…だがどうしても、静馬の妙に淡々とした瞳が気に成ってしまうらしい…。
童女は胸に冷たい空気を溜め込んだままで、しばらく息を止めると、気持ちを誤魔化す様な、おどけた様な笑みを静馬に向ける。
そうして、彼の瞳に疑問の帳が掛っている内に、童女は…また、スッと言う音をさせて…息を吐き出した。
すると突然、カメラのフラッシュが焚かれた様に、鋭い光が静馬の目に突き刺さる。
童女の不可解な行動を、瞼を下方へ引きつつ、睨む様に見詰めていた。その偶然も手伝い、逸早く、反射的に目を閉じる事が出来た静馬であったが…光の影響は強く、右手で顔を覆い蹲る。
出来る事なら彼とて、しばらくはこのまま、瞼越しに弱められた光で徐々に目を慣らしてから、現状を把握する作業に移りたかった事であろう。ところが…気の毒な事に、息を吹き返した右耳の聴力がまた、何か良からぬ事態を察知した様なのだ。
それは、童女の居座る方向から聞こえる物音。ごそごそと…今度は一体、何をやり始めたのやら…。
静馬は仕方なく、眉と右手を動かし、ともすれば落ちそうになる瞼を、指で引っ張り上げた。
(俺の身体がどこまで死に掛けているのか、解かったもんじゃ無かったからな。てっきり、一度開き切った瞳孔は、縮んでくれないんじゃないかと心配したが…どうやら、もう少し位は、目を開けた仏頂面で死に損なって居られるらしい…。)
目を奪う光の眩さに顔をしかめ、それでも、静馬の不敵な笑みに陰りは無い。
杯ノ百九十二を読んでやって下さり、ありがとうございました(^v^)
では、前回の『後書き』にて予告しました通り、今後の、『小説管理』について触れていきたいと思います。
『貴女を…』の連載当初は、『杯ノ百でも、杯ノ千でも、一括りのぶっ通しで続ければいいや。』などと考えて居りました。
しかし、以前に頂戴した感想で、『目次から内容が分からない』、そして、『リンクの色が変わらないと、どこまで読み進めたのか分からない』とのご指摘を頂き、考えを改めました。
『貴女を…』の本編はこのまま、ぶっ通しの『即興小説』で、切れ目なく続けて行きます。
それを大前提とした上で、物語に『一区切りついた』と梟小路が判断しましたら、その話までを『第一編 終ノ杯(仮)』として完結させる。そして、続きとなる次話からを、『第二編 杯ノ一』と改めて再開しようかと考えています。
…今回はこの辺で(^v^)梟小路も、考えが纏まり切ってはいませんもんで…。
それでは、また、次回の梟小路の綴る文章でお会いいたしましょう。