杯ノ百八十六
長い、長い時間を掛けて…こんな姿を、今の童女の様に失意に項垂れる女性の姿を見守ってきた。…いや、見守るしかなかった事を、青年は思い出して居た。
(親父が死んで間もない頃は…俺もガキだったし…悲しむ母さんをただ見ているだけだった。沈み込んだ母さんが、そのまま、どこかへ消えてしまいやしないかと…見続けるしかなかった。今は何もしてやれないけど、俺が大人に成りさえすれば…大人に成ったらきっと、母さんの為に何かをしてやれる。そんな根拠の無い考えを、一縷の望みにして居た事もあったっけな。…結局、そんな子供の夢想は、五年ももたなかった。それに…。)
青年は首を傾げて、黙って俯いている童女を見つめた。
(…母さんが俺に手を上げ始めたのも確か…その頃からだったな…。)
金髪の童女が悲しみを抱きながら、小さな、小さな背中を丸めている。その儚げな姿に自分の母親の面影が重なった時…青年はあまりの息苦しさに、上体を持ち上げ、起こして、石舞台の上に胡坐を掻いていた。
(もっと、ずっと前に…こうして居れば良かったな。)
目眩にも似た倦怠感の最中。何に対しての不満か、欲求なのかも解からないまま、青年は胸中でこんな事を呟いた。
たったそれだけの事で…碌に血液は廻らなくとも…ピンボケした視界がぐるぐる回る有様に、苦笑を漏らす事は出来る…。
「貴方のお名前…聞いてもいいかしら…。」
と、そんな微かな笑気が、彼女の耳には届いていたらしい。青年がゆるりと息を吐き終えた頃合いを見計らう様に、童女が尋ねてきた。
青年は、それはまぁ、驚きはしたが、童女の配慮のお陰で息を詰まらせずに済んだ様だ。
杯ノ百八十六を読んでやって下さり、ありがとうございました(^v^)
紅茶スゲェッ。紅茶、物凄く眠気覚ましに効くわ。
コーヒーが、日本人の体質の所為で眠気覚ましに成らないのは知って居ました。 そんな事もあって、カフェインの量で劣らない抹茶ラテを、朝の執筆のお供にしていたのですが…ちょっと小耳に挟んだ『紅茶が一番眠気覚ましに良い。』という噂話を実践してみたところ…効く、てき面に効きやがるぜ(^v^)
こりゃあもう、抹茶ラテなんてかったるくて飲んでらんねぇ。明日の朝からは、紅茶一択で眠気とはおサラバだ。
…と言う訳で、この後書きは、別れの名残に淹れた抹茶ラテの提供でお送りしております…。
それではまた、次回の、エセ紅茶党と化した梟小路の綴る文章でお会いいたしましょう。