杯ノ百八十一
それを童女は…死に際の哀れな小僧っ子がとち狂って、あたら短い余命を悪戯に縮め始めたと…一笑に付すか、あるいは、罵られるかも知れない。
だがしかし、それでも良い…否、そうでなくては困る。
自分の眠りを妨げた不埒者の死を、思うさま辱めた童女へ向けて…青年は続けて、更に告げてやりたい事がある。
『俺は、お前が不倫していた男の息子だ。』と…実際に通告する場面では、もっともっと、下卑た言葉を彼は選択するであろうが…ともかく、恋人の息子であったと知らしめて、能弁な童女を閉口させてやろうと目論んでいるのだ。
その為なら今の際に居る自分を、不埒者から、冷酷漢に貶めるのも訳はない。
だが…それにはまず、やるべき事がある…それは…、
(とりあえず…こいつに、俺が親父では無いって事を知らせておかないとな。それも、俺が親父の息子であるとは気付かれない様に…。)
青年は決然と、かつ慎重を期して、無駄に童女の逆鱗を刺激しない様に声を…が、彼の口が開き切るその前に、童女が青年の人差し指を唇から離して…、
「…変ねぇ。貴方の肌ってこんなに若々しかったかしら…。それに、もう少し毛深かった気も…。」
と、唐突に、事態の確信に迫る様な事を口走った。…まっ、自分の血の味の感想を述べられるのと、どっちがマシかは解からないが…。
とにかく、先手を童女に奪われたのは間違いなのだ。青年は一刻も早く彼女に何かを言わないと…しかし、それは難しいか…。
何せ、青年は今、童女の疑問を肯定して良いものか、それとも、否定するべきなのかさえも決めあぐねているのだからな。
そうしている間に、童女はネグリジェを取り上げた。
杯ノ百八十一を読んでやって下さり、ありがとうございました(^v^)
北陸の空はひどい荒れ模様です。
雪や、霰にも困らされますが、特に、今朝は風が強い。執筆している間中、窓際から聞こえる風の唸り声と、ファンヒーターの駆動音の板挟みでした。…冬って感じですねぇ。うぅっ、寒い、寒い(^v^)こういう週末は部屋に籠って、執筆三昧と洒落込むのが良さそうだ。…今週も、麻雀仲間の都合が付かないみたいだし…はぁっ…。
それでは、また、次回の梟小路の綴る文章でお会いいたしましょう。